第13話(終)共闘
はぁい、こんにちは。名残惜しいけど、今回でこの物語は最後を迎える事になるわ。
アニマのエネルギーを全て失ったエリストリールは、完全体となったアニムスのギシリトールにどう立ち向かうのか。では、始めましょう。冒険者達の物語を。
大剣ズウォードを構え立ち上がるエリストリールに対し、ギシリトールは猛獣の様に両方の手から鉤爪を伸ばし、エリストリールに襲い掛かる。
「まずは、クリシュナを返してもらうゾ。あれは俺のモノダ。」
「あの武器は危険過ぎる。ボクが責任を持って預からせてもらうよ。」
「ほざケ!」
ギシリトールの連撃がエリストリールの左右から攻め立てるも、エリストリールは巧みな剣捌きで、鉤爪を受け止める。
「今度はこっちの番だ!」
一転して今度はエリストリールからギシリトールを攻め立てる。反撃を入れるギシリトールの先を読むかの如き動きで、ギシリトールの攻撃を封じていく。
「何故ダ、何故動きが読まれル?」
狼狽し、逆転を狙って大振りとなったギシリトールの攻撃を見逃すエリストリールでは無かった。
「その右腕、もらった!」
エリストリールは鉤爪が当たる直前で腰を落とし、ギシリトールの右腕を狙い、弧を描く様に大剣を振り切る。鈍い金属音と共にギシリトールの右腕は戦地から遠くへと飛ばされていった。
「ガあああっ!」
「君とボクとの違い、それは最後まで自分の力を温存したかどうか、だ。ボクは今日の戦い、可能な限り力を温存して戦ってきた。果たして、君はどうだったかな?」
「とりすたン、俺を助けロ。・・・俺は今から“星の生命”を喰らウ!」
ギシリトールは、残った左腕を、地面に突き立てる。
「その瞬間を待っていた、君が“星の生命”を奪い取る瞬間を。『雷神の一撃(サンダースピア)』!」
エリストリールの右手から放たれた、雷の槍。しかし、その攻撃は一体のオベリスクによって阻まれてしまう。
「サンダースピアを、止めた?」
「強いのね、アナタ。ディザがアナタに執着した理由が分かる気がするわ。」
「・・・誰ですか。」
「アタシの名はトリスタン=ラジャン。元帝国軍の高官よ。」
「トリスタン・・・貴方の目的は何ですか。今、ギシリトールをこのまま放置したなら、この大地の“星の生命”はヤツに奪われてしまう。この世界を失ってまでして、一体何を得ようというつもりなんです!」
「この星が消えても、アルマダは残るわ。ギシリトールの蓄えた力があれば、アタシは食糧の不安も無く、魔力の恩恵のみで星の旅を楽しむ事が出来る。アニムスの知的生命体を感知する能力は絶大、恐らくアタシが生きている間に新たな人類と出会う事になるはずよ。」
「つまり、アナタは自己の欲求の為に、この世界に住む全ての人々を犠牲にする、と。」
「そうよ。人間が文明を発展させたのは、自己の欲求を満たす為。」
「それは、違う!」
エリストリールが大剣を手に、ジアゼパムに斬りかかる。しかし、その太刀をジアゼパムは難なく躱してみせる。
「速い!?」
「アナタの戦いは、じっくり後方で見学させてもらったわ。だから、こういう事も出来る。」
ジアゼパムは剣を構えると、エリストリールと同じ様に分身してみせる。
「分身!?」
「その通り。でもアナタにまだ魔力は残っているかしら?」
「やってくれる。これは飛んだ黒幕だ。」
吐き出す言葉とは裏腹に、クロードは笑みを称えてエリストリールを駆る。ジアゼパムは左右から挟み込むようにエリストリールに斬りかかる。片方の攻撃は大剣で弾き返すも、もう片方からの攻撃が着実にエリストリールの装甲にダメージを与えつつあった。
「どういう事だ、魔力の消費が異常に大きい。」
クロードの呟きにズウォードが答える。
「クロードよ、相手の剣じゃ。あの剣がお前の魔力を吸い取っておる。」
「よし、なら二手に分かれて・・・。」
「ならん。ヤツの狙いは完全に無防備になったお前を狙い撃つ事じゃ。ここはワシの『気』で耐えて見せよう。その間に策を練よ!」
「この状態で無茶を言うよ、ボクの師匠は。」
最小限の被弾に食い止め続けるエリストリールの様子を見て、トリスタンもまた次の一手を練る。
「ディザ、“星の生命”の方はどう?」
「・・・あア、喰らいつくしたゼ。」
「なら、一度アルマダに戻りなさい。エリストリールの狙いはあくまでもアナタ。今の状態じゃ話にならないわよ。」
「わ、わかっタ。アルマダに戻ル。」
戦闘を重ねるエリストリールとジアゼパムの間隙を縫って、片腕のギシリトールがアルマダに向かって飛び立つ。
「ズウォード、ギシリトールを止めてくれ!」
クロードは持てる魔力を振り絞り、エリストリールを分身させてギシリトールの撤退阻止を行う。
「そっちが実体ね、クロード君。・・・我は汝で無く、汝も汝で無し。忘却の彼方へ消えなさい、『精神破壊(マインドブレイク)』!」
ジアゼパムが放った精神破壊の魔法がエリストリールに直撃する。すると、まるで光線銃で撃ち抜かれたかのような反動でエリストリールは後方へと吹き飛んでいった。それと同時にギシリトールを追っていたエリストリールの幻体も、空に溶け込んでいくかのように姿を消していった。
「もう少し遊んであげたかったけど。ゴメンなさいね、クロード君。」
ジアゼパムはエリストリールに一礼すると、ギシリトールを追ってアルマダに帰還していった。
ディザは、最後の気力を振り絞り、ギシリトールをアルマダに無事着艦させる。しかしここで気力が尽き、操縦桿を握りしめたままディザは気を失う。間入れず、トリスタンのジアゼパムがアルマダに着艦する。
「トパーズ、ディザの様子は?」
「気を失っているようです。今、モモニ族に搭乗口の強制解除をさせています。」
「そう、なら予定通りにギシリトールの解体作業に入らせて。その後、アニムスが持つエネルギー全てをアルマダに置換させる。それが終わったら、この星とはお別れよ。」
「トリスタン様、ではやはり他の皆は・・・。」
「戦死したわ。フレイのアカシックレコードも発動しない。」
「丁寧にありがとうございます。至急、モモニ族にギシリトール解体作業を命じます。」
ギシリトールの搭乗口が開き、憔悴したディザが救出される。ストレッチャーに乗せられ処置室へ運ばれるディザを見やり、トリスタンは呟く。
「ディザ、アナタは最後まで優秀な道化だったわ。この時間だけはゆっくりしなさい。」
クロードは、深い闇の中に居た。
「・・-ド君。立ちたまえ、クロード君。」
クロードが目を開けると、闇の中に立つ一人の人物が居た。淡く光る輪郭から、それは何者かのゴーストのように感じられた。
「誰ですか、ボクを呼ぶのは。」
「これまで、君と共に戦ってきた者だ。エリストリール、という名と共に。」
「!?」
「君はまだ敗れていない。敵の放った精神破壊魔法は、確かに君を虚無の世界に叩きつけた。
しかし、君の着る戦闘服を通じて私と君を繋ぐ絆が、君が眠る場所を探し当てた。見たまえ。」
エリストリールが見せた光景。それは、地震によって地が裂け、さらに巨大湖の水が津波となって街を呑み込む姿だった。
「これは“星の生命”が奪われたからか・・・。」
「私に出来る事は、ここまでだ。“大剣のクロード”よ、未来を、取り戻せ。」
そう言い残すと、人影は強烈な光を放ち姿を消した。
クロードが再び目を開ける。そこには、エリストリールの操縦席で操縦桿を握ったままの自分が座っていた。
「もうエリストリールの波長は感じない。ズウォードも召喚に応じるまでの『気』しか感じられない。まずは、武器を・・・!」
クロードが見た先にあったモノ、それは、エリストリールが切り取ったギシリトールの右腕だった。
「これだ!」
クロードはエリストリールの右腕を大剣で切り落とす。そしてギシリトールの右腕を、その切り口にくっつける。
「ギシリトール、お前の右腕なら呼び出して見せろ、クリシュナを!」
ギシリトールの右腕がエリストリールの傷口を瞬く間に回復し融合していく。そしてその右手には再びクリシュナが宿る。
「後はアルマダに追いつくだけ。でもグロリアーナじゃ馬力に差があり過ぎる。・・・さすがに詰んだかな。」
必死に何か策は無いか考えるクロード。そして、“星の生命”崩壊の前兆でもあるかのように、巨大な地震が一帯を襲う。
「こんな場所で落ちたら、助けてもらった意味が無いぞ!」
クロードは自身を鼓舞しながら、地割れを避けていく。
そして現れる、一体の怪物。眉間に剣の傷跡を持つ、巨大な、漆黒の龍であった。
「乗レ。“大剣のケイン”ヨ。力ヲカソウ。」
「ど、ドラゴン?!」
一方、戦艦アルマダでは、手足を拘束されたディザが柱に縛り付けられていた。
「トリスタン、これは何の真似だ?」
「アルマダは無事ギシリトールから“星の生命”を回収したわ。これでアルマダにある全ての武器が使用可能になった。」
トリスタンの前に立つ、トパーズ始めモモニ族10名が光線銃らしき武器を構える。
「俺が死んだらギシリトールを動かせる操縦者は居なくなるぞ。」
「必要ないわ、既に解体したもの。」
「最初から、アニムスの力そのものが目的だった訳か。」
「全ては、このアルマダを手に入れる為。アナタがアニムスを乗っ取った事には本当に感謝しているわ。でもアナタは部下を大勢死なせた。その責任は取らないと、ね。」
「どいつもこいつも、最後まで俺を道具扱いかよ!」
「少なくとも、ルビーはアナタを見直していたわよ。トパーズ、始めなさい。」
トパーズは銃を構えると、声を震わせながら最後の別れを告げる。
「ディザ大佐、私は貴方が皆を生きて帰らせてくれると願っていました。もし、そうであったなら、私はトリスタン大将軍に助命を嘆願したでしょう。でもそうはならなかった。ルビー達に死んで詫びて下さい。」
「今更、命乞いなんざしねぇよ、さっさと撃ちやがれ!」
それが、ディザの最期の叫びとなった。
11本の光線に貫かれ、ディザ=クルーウェルは処刑、という形でその短い生涯に幕を閉じたのであった。
「亡骸は、元の世界に戻してあげなさい。」
「元の世界、ですか?」
「そう、もうここは宇宙。アタシが夢見た、闇夜の大海原よ。」
「宇宙・・・。」
宇宙葬の準備を始めるモモニ族を横目に、トパーズは艦橋へ戻る。
「うわぁ・・・」
艦橋の窓からは、今まで見た事の無い、星の世界が彼女の瞳を捉えていた。
再び、視点をクロードの方に戻す。
並大抵の状況では平常心を崩さない事に自信のあるクロードも、この龍の出現には思わず肝を冷やす。何故なら、自分の知識で描く限り、この龍はただ一つの存在にしか結びつかないからである。25年前、“大剣のケイン”によって眉間に大きな傷を受け、地中深くへと消えていったと聞かされた、忌まわしき存在。名を『厄災龍(カラミティ・ドラゴン)』。
「何故、ボクに力を貸す?」
「我モマタ、“星ノ生命”ニ繋ガル存在。コノ世界ニ残ル“星ノ生命”ガ潰エタナラバ、我モ同ジク消エ去ル運命ナリ。故ニ我ハ目覚メタリ。」
「は、ははっ。」
クロードの頬に一筋の涙が伝う。勝機を掴んだと確信した、喜びの涙だった。クロードの手によってエリストリールは大きく飛び上がると、厄災龍の背に乗る。
「短い時間だけどよろしく頼むよ、相棒。あと、ボクの名は“大剣のクロード”。同じ剣を持っているけど、君を痛めつけた“大剣のケイン”は、ボクの父さんの名さ。」
「ヨカロウ、ナラバ振リ落トサレルナ、クロードトヤラ。」
大地が揺れ、マグマが地表へと姿を見せ始める中、厄災龍はひと際大きな咆哮を上げると、上空へ向かって飛び上がる。
「この加速は・・・これなら、アルマダを捉える事が出来る!」
時はしばし巻き戻り、戦艦グロリアーナからオベリスクで出撃したセラとソニアは、ステビアのアグリコーンとガーネットのデマントイドが墜落した現場に到着する。
「姉、『生体感知』魔法を。私はこの瓦礫の撤去作業を優先する。」
「わかりましたわ。」
墜落現場は、落下の衝撃に加え、周辺の岩場からの崩落により岩山と化していた。
「勝手な真似をしおって。姉、まだ感知は出来ないか。」
「・・・!見えました、あの瓦礫の下です!」
二機のオベリスクで瓦礫の除去を続けていくと、やがて『く』の字に倒れたアグリコーンの胴体から下半身部分を発見する。
「セラちゃん、ステビアさんに生体反応有りです!」
「しかしこの状態では下手に引きずり出すと、今度は私達も崩落に巻き込まれかねない・・・。」
思案に暮れるセラに対し、ソニアが上空を指差す。
「セラちゃん、あれはライルさんのオベリスクでは?」
「何と、これは僥倖!」
セラはライルのアゼルファームに対し、テレパスを試みる。
『ライル殿、聞こえるか。セラだ。』
『セラ殿、何故オベリスクに?』
『話は後だ。アグリコーンが敵機に突撃墜落しており、ステビア殿に命の危険が迫っている。救出に力を貸して欲しい。』
『ステビアが?こちらは今、怪我人を抱えている。グロリアーナに収容次第、そちらへ向かう。』
『怪我人?例のフレイという人か。』
『ああ、君達のお陰で奇跡を起こす事が出来た。ありがとう。』
『私は何もしていない。例なら姉かクロードに言ってくれ。』
セラはテレパスを解除すると、ソニアに指示を出す。
「姉、ライルは想い人を連れ帰った。しかし怪我をしている、いう事なので、至急グロリアーナに帰艦しその看護を。瓦礫の撤去はライル殿に依頼した。」
「わかったわ。それまでここをお願いね。」
ソニアのオベリスクはアゼルファームの背中を追う様にグロリアーナへと向かう。
グロリアーナのドックでは、アゼルファームが着艦し、手の中で眠るフレイをそっと降ろす。
「誰かストレッチャーを!右腹部に裂傷がある。止血は行ったが、応急処置として行ったに過ぎない。ソニア殿はどこか?」
「至急、医務室に運びます。ソニア殿は現在セラ艦長と共に、ステビア殿の救出活動中であります。」
救護班のモモニ族からの回答を受け、フレイを彼らに委託した後、ライルは再びアゼルファームに乗り込む。その間に、ソニアの乗るオベリスクがドックに滑り込むように着艦する。
搭乗口が開くと、オベリスクからソニアは急ぎ降り立つ。彼女はアゼルファームに乗り込むライルを見つけると、笑顔で手を振りながら一言、声を掛ける。
「ライルさん、奇跡起きましたね。」
「・・・はい!」
こうして、入れ替わる形で今度はアゼルファームが、ステビアの墜落現場へと向かう。
救援に駆け付けたアゼルファームが繰り出す闇魔法の力で瓦礫は瞬く間に一掃されていった。
「セラ艦長、俺を待ってくれて感謝します。」
「何の事です?」
「貴女ほどの魔力の持ち主なら、破壊魔法で瓦礫の撤去も考えたはず。しかしオベリスクは、魔法に対する増幅器としての一面を持っています。もし貴女がステビアの発見時に魔法の行使を決断していたら、周辺一帯を廃墟にしたかも知れません。」
「改めて、怖い甲冑兵なのだな。」
「ええ、今の世界にはあってはならない兵器だと思います。」
二機のオベリスクは、ステビアのアグリコーンを救出すると、急ぎグロリアーナへ戻る。
二機がグロリアーナに着艦したその時、大地が大きく揺れた。
「何が起きた、艦長代理!」
「グロリアーナに攻撃は受けてねぇ。ただ、クロードが戦っている辺りで地震があったみたいだ。」
「地震?」
セラの疑問にライルが答える。
「アニマ嬢の言っていた“星の生命”に関わりがあるのかも知れない。セラさん、俺達のすべき事は、第一にステビアの蘇生だ。彼女は自身の強化魔法で生命の危機は乗り越える事が出来たが意識が戻っていない。俺はクロード君を信じ、今は彼女の側に居る事を選ぶ。」
「フレイさんでは無く?」
「フレイの意識は回復しない。この剣で彼女の魂を吸った。」
「なぜその様な事を。」
「彼女は俺との記憶を消されていた。その方法が見つからない以上、戦場で彼女を止める方法はこの方法しか俺には思いつかなかった。」
「わかった。私は艦橋に戻る。第二波があれば、グロリアーナにも衝撃波が襲う危険が高い。姉には、フレイさんの処置が終わり次第、ステビアさんの方へ向かわせる。くれぐれも気を付けて。」
「ありがとう。君は立派な艦長だな。」
「単純にまだ死にたくないだけだ。」
そういうと、セラは急ぎ艦橋へと向かう。
セラの予感通り、彼女が艦長席に戻ってから程無くして、大気をも揺るがす地割れを伴う大地震が、大陸全土を襲う。
「何で空中に浮いているグロリアーナが揺れるんだよ!」
「そんな事私も知るか!」
イズの悲鳴にも似た叫びに対し、セラは怒号でイズを諫める。
「それより、帝国や王国の民間人はこのまま助けないつもりか、セラ。」
ミレイはスクリーンに映し出される帝国の惨状を見つめてセラに問う。
「助けない。私の役目はクロードの帰還までこのグロリアーナの状態を維持する事。今、難民を救うのは国家の役目であって、部外者の私達では無い。」
一切、表情を変えず冷徹に答えるセラを見やり、ミレイは大きく頷く。
「それが正解だ。アタシもセラと同じように、このままクロードの帰還を信じる。」
「おい、何かが空に昇っていくぞ。誰か拡大をしてくれ。」
イズが東の空を指差して叫ぶ。スクリーンに映し出された浮上する物体の正体は、『漆黒の龍』、そして背に乗るエリストリールの姿があった。
「黒いドラゴン・・・?それにエリストリールも!」
想像のつかない組み合わせに、イズとミレイは思わず同様の声を上げる。
ただ、セラだけは、祈る気持ちでスクリーンに映るエリストリールの姿を見つめていた。
「”豊穣の女神“よ、”戦の神“よ、どうかクロードに勝利の加護を。」
一方の宇宙では。既に勝利を確信したトリスタンは、艦長室にて秘蔵のワインを開封し、勝利の美酒に酔いしれていた。夢心地に酔いしれる中、艦橋からの警告音が艦長室に響き渡る。
「何事、トパーズ?」
「アルマダを追尾する飛行物体有り、至急艦橋までお願いします。」
「・・・一体どういう事なの?」
軍服に着替え、トリスタンは急ぎ艦橋へと上る。艦橋のスクリーンには、拡大された飛行物体が映し出されており、その姿に流石のトリスタンも驚愕する。
「エリストリール?!ありえない、ありえないわ。」
「トリスタン様、どちらへ?」
「トパーズは予定通りアルマダを航行させてちょうだい。私はあのゴミを破壊してくるわ。」
「あれはゴミですか?」
「そうよ、ただの宇宙ゴミ。」
余裕の言葉とは反対に、トリスタンは駆け足でドックへと向かう。
「“トリアゾラム”を出すわ。カタパルトの準備を。」
トリスタンの指示にモモニ族は急いでS級オベリスク、“トリアゾラム”の起動シークエンスを開始する。
「もっと早く!エリストリールを始末しなければ、アナタ達も宇宙のチリになるのよ!」
トリアゾラムが起動シークエンスを終えると、アルマダに搭載されていたビームライフルを手に、トリアゾラムはカタパルトに足を乗せる。
「トリスタン=ラジャン、トリアゾラム、出るわよ!」
カタパルトから射出された青碧のオベリスクは、標的である白いオベリスクに向かって一直線に向かっていった。
そして同時刻、クロード達は、遂にアルマダを射程圏内に入れる。
「厄災龍、君も力を貸してくれ。」
「当然ダ。コノ一撃デ我ノ力、取リ戻ス。」
厄災龍はその口を最大限に開けて、力を蓄える。
「エリストリール、そしてギシリトールに滅ぼされた“星の生命”よ。今こそ、このクリシュナの咆哮と化し、敵を撃ち抜かん!『クリシュナ、マキシマムパワー』!!」
エリストリールの手から最大出力で放たれたクリシュナの光。
「ヴオォォォォォ!!」
それと同時に厄災龍が最大出力のドラゴンブレスを吐き出す。二本の光線は一直線に戦艦アルマダまで伸びて行き、そして輝く光の球となった。
「・・・力が、みなぎってくる。」
「滅ボサレタ“星ノ生命”ハ、新タナ“星ノ生命”トナリ世界ヲ作ル。ソノ力ハ、彼ラカラノ謝礼ダ。受ケ取ルガイイ。」
「・・・厄災龍、どうやら取りこぼしがいたみたいだ。決着をつけてくるよ。」
「好キニスルガイイ。我ハ、スデニ目的ヲ果タシタ。再ビ眠ル前ノ余興ニ、貴様ノ戦イ、見届ケテヤルトシヨウ。」
「君が痺れを切らせて帰るまでには、終わるはずだよ(笑)。」
エリストリールは厄災龍の背中を離れ、迫りくる敵機体に向かって飛び上がる。そして、クロードは一体のオベリスクと遭遇する。
「やってくれたわね、クロード君。」
「ボクも出来過ぎとは思っています。しかし、結果としてアナタは逃げ損なった。」
「そうね。だから、アナタだけでも始末させてもらうわ。」
「ええ、ボクもアナタという存在は、絶対に放っておいてはいけない人だと感じています。」
「なら始めましょうか。有史以来初となる、宇宙での決闘を!」
先にトリアゾラムがビームライフルをエリストリールに放つ。しかし、エリストリールの反応は光線よりも早い動きでこれを躱す。
「残念ですが、地上の時とは違い、今のボク達の魔力は十分にあるんです。見せますよ、エリストリールの本当の力を。」
クロードの言葉に呼応し、エリストリールの縁取りが血の様に赤く発光し始める。
「その様な小細工でアタシが驚くとでも?」
トリアゾラムは、立て続けに銃を連射する。が、エリストリールの超反応は悉く躱し続ける。
「これ以上のビームライフル使用はアタシの魔力が持たないわ。こうなれば、アナタの魔力を再び頂くまで!」
トリアゾラムは、武器をソウルスティーラーに切り替え、エリストリールに接近戦を挑む。
「来い、ズウォード!」
「応!」
エリストリールもまた、大剣を持ちトリアゾラムに挑む。宇宙空間という未知の空間であるにも関わらず、彼らの剣技は地上での戦いと謙遜の無い、文字通りの鍔迫り合いとなった。
「凄い人だ。不慣れな機体でこの速さに順応出来ている。」
「何故、あの時止めを差さなかったのかしらね。ホント、人生で最大の選択ミス。」
「そうですね。その意味では、ボクはアナタに命を拾われました。」
エリストリールは、一旦間を取ると、大剣を青眼に構える。
「その返礼として、次の一太刀で仕留めて見せます。」
「アタシはまだまだ戦えるわよ。やれるものなら、やってみなさい。」
次の瞬間、エリストリールは、トリスタンの視界から完全に消えた。この時点でエリストリールの動きは人の目で追える速度を超越していた。そしてエリストリールの右からの薙ぎ払いがトリアゾラムの搭乗部を直撃する。
「うおぉぉぉぉっ!!!」
クロードは加速の衝撃を全身で受け止め、そして操縦桿を押し切る。
「これが、エリストリールの神速だ。」
クロードの呟きは、果たして誰への言葉だったか。両断されたトリアゾラムは爆散し、黒幕だったトリスタンもまた宇宙の塵となって消えていった。
「終ワッタカ。」
「ああ。これで君もゆっくり眠れるよ。」
「デハ、我ノ世界ニ戻ルゾ。背中ニ乗レ、“大剣ノクロード”ヨ。」
こうして“星の生命”を取り戻したクロードと厄災龍は、彼らの世界へと戻っていった。
“星の生命”がアルマダの撃沈によって解放された事により、大地震は静まり、大地は元の姿へと戻っていった。厄災龍は、自らが出現した場所までエリストリールを届けると、再び地中深くの住処へと戻る。
「デハ、サラバダ。今度ノ眠リハ、永イ眠リトナルダロウ。」
「そうあって欲しいね(笑)。良い夢を、『厄災龍』。」
厄災龍の姿が消えるまで見送った後、クロードはグロリアーナへの帰還を果たす為、エリストリールを浮上させる。上空から見下ろす、帝国領内での想像以上の惨状に、クロードは息を呑む。
「思った以上に酷い状況だ。全てに決着がついた、と言ってもこの惨状はすぐに修復出来るものじゃない。イズが、難民救済に動いていないといいけど。」
果たして、クロードの心配は杞憂に終わった。艦長セラは、クロードの想像以上に大人の対応を果たしてくれていたからだった。
かくして、帰還を果たしたクロードは、仲間からの手荒い祝福の元、迎えられる事になる。
幸い、ステビアは意識を取り戻し、最悪の事態は回避する事が出来た。
「セラ、改めて皇都へ進路を進めて欲しい。ライル、ステビアさんも同行を。」
クロードの言葉に三人は頷く。こうして、グロリアーナは帝国領皇都へ向かって進行する。
皇都の皇宮上空で待機するグロリアーナから、エリストリール、アゼルファーム、セラが乗っていたオベリスクの三機が地上に降り立つ。
「セヴェルス帝国皇帝ガリウス=ヴァルザックにお目通りをお願いしたい。」
エリストリールの機内からクロードが声を発する。しばらくの後、何人かの将官を引き連れたガリウスが姿を見せる。
「私がガリウスだ。君は何者だ。」
「ボクの名はクロード。東にある障壁の先にある統一王国の冒険者です。目的は統一王国ヴァネッサ女王より友好の書簡をお渡しする事でした。しかし、ある事からボク達はトリスタンと名乗る帝国高官と戦う事になりました。」
「トリスタン、奴はどうなった?」
「ボクが倒しました。それより、この様な惨状となった国にボクは書簡を渡す事は出来ません。皇帝陛下、貴方には若い士官の多くが心酔していた。帝国の内情はライル殿からお伺いしています。その若い士官を内乱で死なせた責任は、貴方自身の手で償わなければならない。
トリスタンのような、悪意ある有能な人材を生み出さない為にも。」
「私は最善を尽くした。その結果がこの惨状なのだ。」
「ガリウス殿。先皇帝は、まだ生きておられますか?」
「・・・まだ監獄に収監しておる。」
「では、その身柄をお譲りください。そして、皇帝陛下は退位を宣言なさってください。」
「貴様、何を考えておる?」
「ボクの参謀からの進言です。セヴェルス王国国王ナルキスは、退位して宰相となり、内政を担当する。兄ガラーガは大将軍として、治安維持を担当する。復興が進めば有力な諸侯が再び現れます。諸侯を諫める矛として大将軍、諸侯を宥める飴としての宰相、その両輪を使う車として、ガリウス殿が新たに王朝を建てればよい。参謀に言わせれば「連合共和国家」
という話、だそうですが、実のところ、ボクには難しくてよくわかりません(笑)。
「『国王は君臨すれども統治せず』、という事か。そうだな、確かに私に統治能力は無かった。
ただいたずらに、私を慕う若者達を死に追いやってしまった。私が自死したところで、救われる命は一つも無い。君の言う通り、ガラーガを引き渡そう。」
「ありがとうございます。きっと時代が違えば、貴方は名君と呼ばれたでしょう。」
ガリウスの命令により、至急ガラーガがクロード達の元へ引き出される。以前の面影は消え、子犬の様に怯えるガラーガを、獄吏によってアゼルファームの手に乗せられる。
「ライル!」
ガリウスが、ライルに呼びかける。
「どうか、私の元に戻って来てはくれぬか。フレイにした行いに対して、決してお前は許さないだろう。だが、今を苦しむ民の為、どうか私を助けて欲しい。」
ガラーガを手に乗せ、跪くアゼルファームの前でガリウスは土下座をして涙ぐむ。
「俺は国を捨てた身です。残りの人生はフレイと共に生きます。」
「フ、フレイは生きているのか?!」
「ええ、このソウルスティーラーに俺が封じました。」
「!?」
「では、これにて。ガリウス殿。」
立ち上がれぬままのガリウスを尻目に、三機はグロリアーナに帰艦する。
大地震は、帝国領域を中心に起きた為、王国での被害は軽微なもので済んでいた。あれほどまでに弟ナルキスを憎んでいたガラーガも、自身のやせ衰えた姿に本心から泣いて労わる弟の言葉に涙をこぼし、王宮内で泣いて抱き合う。
「やっぱり兄弟ってこういうモノだよな?」
イズのボヤきに対し、キャサリンが顔を覗きこむ。
「あら、イズにも兄弟がいたのではなくて?」
「王族の兄弟は、実際政敵と同じだからな。何とか和解させたかったのが実を結んで嬉しいよ。」
「でも、これで皆さんとはお別れなのですね。」
「いや、もうちょっと残るぜ。オベリスクで、大河に橋を何本か造る予定を立ててる。」
「あの大河に橋が?!」
「ああ、そうなれば、物流が一気に加速する。荒廃した旧帝国の復興に原動力になるはずさ。」
イズの言葉通り、合計6箇所に大河を横断する橋の建設が始まった。流れが速く、渡航も困難とされた大河も、オベリスクの巨体を流せるほどの力は無く、程無くして無事完成の日の目を見る。
「結局、戦っていた時間より、橋造りの方が圧倒的にエリストリールに乗ってた気がするよ。」
最後の角材をグロリアーナの資材倉庫へ回収し終えた後、休憩室でクロードは苦笑交じりでライルに呟く。
「俺も同じだ。オベリスクも本来の役目は運搬作業が目的で作られたのかも知れないな。
それより、本当にいいのか?」
「ああ、このグロリアーナも、エリストリールを始めとしたオベリスクも、今の世界にとっては、危険な兵器でしかない。なら、全部を君に丸投げするよ(笑)。」
「・・・感謝しかない。君と出会えた事、君を最後まで裏切らなかった事は俺にとっての幸運だった。」
「でもここから先、ボクはいない。君自身の手で奇跡を掴むしか無い。」
「掴むさ、必ず。」
最後にクロードは右手を差し出す。ライルはその手を取り、固い握手を交わすのであった。
クロードは、シャルロッテと日に数度顔を見せる様、心掛けていた。この数ヶ月の間に彼女の体力も回復し、炊き出しの手伝いに参加できるほどにまで会話も上達していた。
「シャルロッテ、君にだけは先に伝えておきたい。ボク達はグロリアーナと全てのオベリスクをライルに託す。君はこの星の人間では無い。だからグロリアーナに乗る権利がある。でも、もしこの世界が気に入ってくれたのなら、ボクは君を全力で守る。」
「クロードは、この先にある世界の人だと聞きました。私に故郷はもうありません。でも、今まで共に戦い、私を取り戻してくれた貴方の故郷を見たい、と心から思っています。」
「正直、君にこの話を伝える事に、ボクは震えていた。君に嫌われる、と思っていた。」
「でも、決めた事は曲げないのでしょう?」
「読まれてたか(笑)。じゃあ、決まりだ。ようこそ、ボクらのパーティーに。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。“大剣のクロード”さん。」
その言葉は突然だった。
『グロリアーナとオベリスクの全てをライルに譲る?!』
「ああ、皆も知っての通り、フレイはシャルロッテが使っていた冷凍睡眠装置で眠っている。
そして、一度失った記憶を復活させる呪文は、ボク達の統一王国にも存在しない。そしてその秘密を知っていたトリスタンも、今は宇宙のチリだ。ライルは考えた末、外宇宙にその可能性を賭けたい、とボクに申し出て来た。ボクとしても、グロリアーナ一式この世界から一掃出来るし『渡りに船』だった。」
ライルは皆の前で一礼し、感謝の言葉を述べる。
「最後まで俺の我儘を通す形になって済まない、と正直思っている。しかし、ソニア嬢、クロード君の言葉があって、俺はまだフレイを助けられる場所に立っている。どうか、何も言わず見送って欲しい。」
「私もクロードの意見に賛成だ。今の世界に、この戦艦は危険だと思う。」
セラは、表情を崩さず同意を示す。
「私もセラちゃんと同じです。ライルさんに奇跡が起きます様、願ってますわ。」
ソニアもセラ同様、こちらは笑顔で同意を示す。
「オレもそれでいいぜ。姐さんも構わないよな?」
「アタシの意見って、そもそも何も分からない機械だし持って行ってくれて大助かりだよ。」
「となると、最後はステビアさんか。」
クロードがステビアに意見を求める。
「私もクロードさんの意見に賛成です。ですが私は同行しません、一人で行ってください。」
「・・・分かった。」
「ガリウス様のライルを呼び止める言葉を聞いて、はっきりと自覚しました。私は帝国軍人なのだな、と。私の一生は帝国に捧げます。なので、ライル、貴方とはお別れです。」
「それを聞いて安心した。ガリウス殿を支えてくれ。元特務隊の名に恥じない働きを。」
「了解であります。お元気で、ライル=オルトロス特務中佐。」
かくして別れの日、エリストリール含め全てのオベリスクを収納した戦艦グロリアーナは、新たな艦長ライルの指揮の元、皆に見送られながら宇宙へ旅立っていった。
ステビアもまた、皇都に戻る為、一行と別れ旅立っていった。
そして、いよいよクロード達一行も、統一王国へ帰る時がやってきた。
「シュロスの兄貴は一緒に戻らないんで?」
「ああ、オレにはこっちの方が空気が合ってるんでな。」
「やっぱりアタシもこっちに残ろうかしら?」
「姐さんは戻って!分け前減るじゃん。」
「そういえばイズ、キャサリンに挨拶しなくていいのか?」
「ああ、いい。」
「思いっきり後ろ髪引かれてるぞ未練がましい。」
「うっせーな、セラ。本人が一番分かってますよ、ええ!で、何でいつの間にクロードに彼女が出来てるんですかね?世の中、不平等過ぎじゃね?」
「イズ、説明はしただろう。彼女はボク達の世界が見たいって事で一緒に行動する事になった、って。」
こうして少数の知人との挨拶だけを済ませ、一行はテレポーターを雇い、再び密林地帯の障壁入口までたどり着く。
「やっぱあっちいな、ここ。」
「グロリアーナの主砲で焼き払っておくべきだった・・・。」
「セラちゃん、そんな物騒な事いうモノではありません、折角艦長として成長した、と思っていたのに、お姉ちゃん悲しいですぅ。」
「ん?どうした、クロード。」
ミレイが棒立ちになったクロードに問いかける。
「やっば、忘れてた・・・。」
「何を忘れたのさ。」
「爺様への土産の“すいーつ”・・・。」
「それくらい、別にいいのでは?」
「口約束ですけど、障壁を解除する為の“交換条件”になっているんです。こっちから差し出さない限り、爺様の事ですから絶対解除しません。」
「つまり、もう一度セヴェルス王国へ戻れ、と。」
イズが怒り顔で、クロードに詰め寄る。」
「多分、一番詳しいキャサリン嬢も会う必要あるかなぁ・・・。」
「てめぇ、コッソリ出て来たのが全部台無しじゃねぇか!」
「ゴメン、皆悪いけどもう少しだけ“依頼”に付き合って!」
我先に、と駆け足で元来た道をクロードは走り出す。
「待てぇ、やっぱり一発入れさせろぉ!」
同じ様に、クロードの後をイズは追いかける。
「二人共、先に行ってしまいましたけど、どうされます?」
心配げなシャルロッテを他所に、セラは淡々と説明する。
「四人ならテレポートで確実に飛ばせる。飛んだ先で宿を取ってそこで泊まる。」
「ここからだと、走っても街まで数日かかりますものねぇ。」
セラが即座に瞬間移動(テレポート)を唱える。彼女ら四人は、その日早々に安全な宿を確保する。
「待てやぁ、クロード!」
「だから謝ってるだろぉ?」
密林を抜け、日の明かりがクロードを照らす。その顔は、以前と変わらない日常の風景に戻った証明となる、晴れやかな笑顔だった。
さて、今回を持ってこの物語は終了となります。楽しんでいただけたかしら?
語り部は、≪アンノウン≫こと、フレイ=オルトロスがお送りしました。
それでは、アナタにも、奇跡が起こりますように。バイバイ☆
≪アンノウン≫冒険者達の選択 Season 2 ものえの @bono_63
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