第40話 科学オタク_攻撃する

 東国のエアタリアへ向けて、ワイは戦闘ヘリコプターで飛んで行く。

 眼下には、海が広がっている。

 そして……、漂流している敗残兵が漂っているな。


「一応、大型輸送船を作っておいたから、彼等は回収されるだろう。後少し、頑張って漂流してくれ」


 東国に戻られると面倒なので、引きつけたいのもある。中央国の海岸の方が近いので、戻ることはないだろう。

 ワイは、捕虜を交渉に使おうと思う。

 まあ、交渉カードの一枚だな。とっても大きな。


 全ての船が沈んでいることを確認して、その場を後にした。



 進んで行くと、東国の海岸線が見えた。

 まあ、戦闘ヘリコプターなら短時間のフライトで済む。

 海岸線を一瞬で後にし、王都を目指した。対空防御がないのは、確認済みだ。

 地図はある。レーダーもある。

 ワイの準備に、怠りはない。


「大将とかと違って、何の準備もなく戦場に向かえる勇気がないだけだけどね」


 臆病が、ワイの武器でもある。

 だから準備は、完璧だった。


 ここで、レーダーがなにかを捉えた。


「……飛行物体?」


 ディスプレイに映る光学映像を、拡大する……。


「ワイバーン部隊? 南国だけじゃないかったのか?」


 事前情報と違うな……。貴重なんだろう? 実戦投入するの?

 まあ、もう関係ないけど。


 ――ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


「マルチオートロック完了……。発射!」


 レールガンから、陽電子砲が連続発射される。

 秒でレーダーから、飛翔物体が消えた。

 もう、自由の名のもとにだよね。


 城下町を進んで行く。

 ミサイル一発で、彼等の生活も変わるんだろうけど、ワイは快楽殺人者じゃない。

 被害は、最小限に抑えようと思う。


 考えていると、王城に着いた。


「丘の上に建てられているけど、航空部隊に攻められると無防備なんだよね。それと、砲撃にも弱そうだ」


 考えていると、魔法が飛んで来た。

 自動回避システムが、作動する。かすりもしない。ワイの作った戦闘ヘリコプターは、それだけ優秀だった。

 本当は、人型ロボットが作りたかったが、技術的課題が山積みで諦めた。完成には、多大な時間がかかりそうだ。


「……まあ当たっても、ダメージはなさそうだな」


 稲葉は、海に炎魔法を撃って、水蒸気爆発を起こしていた。水という緩衝材がなければ、自身の最大魔力も測定できないんだろう。それに比べれば、あの魔法は、線香花火もいいとこだ。


「恨まないでくれよ」


 ワイは、ミサイルを発射した。

 王城が一瞬で破壊されて、爆炎が上がる。ちなみにミサイルは、MIM-104 パトリオットを模したモノにした。(げふん、げふん)

 BGM-71 TOWでも良かったかもしれない。(げふん、げふん)

 オーバーキルとしか言えない惨状が、目の前に広がっている。

 本当は、もっと火力のある武装をいっぱい積んでいるんだけど、使い道がなさそうだ。完全武装にし過ぎたか。


「頭を潰したんで、この国も終わるだろう」


 ワイは……、3人とは違う。首狩り戦術を基本としたい。

 それが一番、命を救うからだ。捕虜の兵士も、できれば生きて返してあげたい。彼等にも家族がいるはずだ。

 他人を否定する気はない。だけど、戦場で引き金を引くのなら自分の考えを貫きたい。


「これで、ワイも大量殺人者か……」


 まあ、今更だ。西国の兵士もミサイルで屠っているし。

 異世界召喚時に絡まれて、数人殺しているのは、内緒だ。稲葉なんか、第一将軍を群衆の目の前で消し炭にしたらしいしね。

 コロシアムから上がった火柱は、ワイも確認していた。


「……白旗は、上がらないか」


 流石に混乱の極みだろう。

 これ以上の攻撃も無意味だ。

 先ほどの、魔導部隊も止まっている。呆けていそうだ。もう、考えらんないんだろうな。後々を考えると、殲滅してもいいかもしれないが、末端の兵士を倒しても無意味とも感じる。


 城下町は、大混乱だな。

 続々と建物に入っている。

 地下室があるのであれば、正解だけど……。


「これ以上、ワイがいても混乱させるだけか」


 ワイは、帰路に着いた。

 来た空路をそのまま往復する。


 途中で、漂流者を見つけた。

 大型輸送船も見えるけど、かなり離れているな。波にさらわれて、流されていたか。時間あるし、助けよう。

 ロープを垂らすと、掴んでくれた。

 そのまま、大型輸送船へ輸送する。


「……今更だけど、人命救助するか」


 小舟も多く出ているけど、一時間程度の漂流で限界に近い人もいそうだ。

 冬の海だったら、多数が低体温症で死亡していそうだ。

 この世界に四季があるのか、まだ分からないけどね。緯度とかあるのだろうか?


 無駄な考察を終えて、人命救助して行く。

 ロープをもっと積んでおけば良かったな。

 二本しかないロープに、6人とかぶら下げる。それでも、戦闘ヘリコプターは、平然と動く。ワイの魔力で動いているけど、動力機構は、優秀みたいだ。

 オーバースペックとも言える。


「武装をパージすれば、もっと速く動けるけど、ロープがないので無意味だよな……」


 その日は、日暮れまで人命救助を行った。

 レーダーを、『生命活動サーチ』に換えるけど、もう魚以外の補足はなかった。

 大型輸送船も帰路に着いた。


「ここまでかな……」


 ワイは、戦闘ヘリコプターを王都に向けて発進させた。

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