第36話 将軍_快進撃で敵国の砦を落とす
◆ガイウス将軍視点
「将軍……。また勝ちました。損害もさほどではありません。死者0人です」
どうなっているんだ? 連戦連勝なんだが……?
鈴木殿にトレーニングメニューを組んで貰い、その通りに軍を運用しているだけで、敵軍が撤退して行く。
「将軍! 輜重が届きました」
「う……む」
後方支援も問題ない。
十分過ぎる物資が送られて来ている。
「医療品が、多過ぎますな。鈴木殿に連絡しておきます」
輸送隊の隊長が、物資の確認をしてくれる。
正直、仕事がないんだけど?
「う……む。頼んだ」
輜重部隊は、帰って行った。往復10日の道のりを、今や1日だ。
数日前を思い出す。
西国のウミタリアの国境に近づいたら、平地戦となった。
鈴木殿が作った武器は、正直射程が違い過ぎる。弓矢の倍の距離から攻撃できた。
ワンサイドゲームで、平地戦が終わってしまう。
その後、砦の攻防戦となる。
アームストロング砲とかいう、大きな銃を撃ったら、門が吹き飛んで砦への侵入が可能になった。
砦へ侵入すると、白兵戦となるが、これまた武器が違う。鎧をバターのように切り裂いた。一時間の戦闘の後に、敵兵は逃げた。
その後、砦を制圧する。
長年、難攻不落だった砦を落とした瞬間だった。勝鬨を上げたが、正直罪悪感がある。
それからは、連日の猛攻撃を受ける。いかに訓練された兵士といえど、丸一日は戦えない。
睡眠や休息、補給は必要になる。
私が恐れたのは、長期戦だった。
だが、鈴木殿の武器はそれすらも覆した。
いや、鈴木殿の仲間である、異世界召喚者の力なのかもしれない。
「一本飲むと、三日間戦え続けられる、『栄養ドリンク』とはなんなのだ?」
神話級の薬品だ。
ケシの実よりも効果があった。
一錠飲むと、一時間で十分な睡眠効果を得られる『睡眠導入剤』も恐ろしい……。
寿命を縮めていないといいのだが。
そして……、三日間で、ウミタリアの兵士の大半を倒してしまったらしい。
ウミタリアとしても、この砦を失うと、もう王都まで関所もない。
長年、不落の砦だっただけに、取り返しに躍起になっているが、兵士の死傷者数が取り返しのつかないことになっていないか?
「この砦の重要性を考えれば、全軍投入でも不思議じゃないんだけど、それを撃退してしまったのか?」
味方に、怪我人もいない。
怪我をしても、瞬時に回復する『ポーション』なるものが――怖い。
神話級の代物が、山のように積み上がっている。
恐怖しかない。
暗殺者も来た。
だが、剣を当てるだけで真っ二つだ。
いや、"焼き切っている"が正しい表現だな。ラ○トセイバーとは、なんなのだ? 炎の剣? (げふん、げふん)
瞬時に人を灰にする火力……。神話の霊獣の力が、込められているのかもしれない。
正直、恐ろしい。今すぐにでも逃げ出したい。
だが、指揮権は私が持っている。
敗戦や撤退は、許されない。
敵軍が来なくなったら、こちらから侵攻だ。いや、侵攻に見せかけた偵察を行う。何時でも攻め込めると思わせておかないといけない。
100人単位で、偵察を行うが、戦闘に陥っても必ず勝って帰って来る。
『原動機付き自転車』なるものが、機動力を確保している。
騎兵よりも優位に立っているんだ。
「火力、防御力、機動力、射程……、負ける要素が見つからない。あえて言うのであれば兵力だが、王都制圧の命令は受けていない。あくまで命令は、侵攻して来る敵の防衛だったんだけど……。間違って砦を落としてしまった――で、許して貰えるのだろうか? 命令違反を問われそうだ……」
王家に対して、追加の軍を要求しているのだけど、返事がない。
もしかしたらだが、苦戦していると思われているのかもしれない。
そうでなければ、こんな好機を見逃すとも思えないし……。
「現状を理解してるのは、鈴木殿に近い者だけなんだろうな……」
私も、報告書の作成に苦労している。
理解できないモノを説明するのに、一番の労力を割いている。
伝わっているといいのだが……。
「将軍。斥候部隊が、戻って来ました」
「分かった。城門を開けて迎え入れてやれ」
『原動機付き自転車』の一団が帰って来た。
隊列を維持しているので、100台が欠けることもなく戻って来たのが、目視だけで分かる。
「今日は、迎撃と斥候の2連勝だな……。ウミタリアの残りの戦力がどれくらいか……。兵士数さえいれば、国を落とせるんだけどな」
部下が1000人しかいないのが、悔やまれる。
だが、鈴木殿の武器もそれだけしかない。
……絶好の機会なんだけど、援軍は来るんだろうか?
空を見上げる。
「思い通りに進まないのは、もどかしいな……」
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