第32話 科学オタク_探る

 ワイは、王都に帰って来た。


「お疲れ様です。鈴木教授! 大分長いフライトでしたが、どちらまで行かれたのですか?」


「ちょっと、北と南にな……。戦場を見て来た。それと、ミサイルを一発ずつ使ったので、装填を頼む」


「はっ!」


 核爆弾は作らなかった。ウランもプルトニウムも作り出せるが、ワイたちがいなくなった、後を考えたい。まあ、設計図だけは作っておこうか。材料を生み出せるのは、ワイけだし。必要に迫られるほどの敵が現れないことを祈ろう。

 ワイは、ラボに向かった。


 椅子に座る。


「う~ん。異世界召喚者のワイたちだけで、戦争を終わらせてしまっていいんだろうか……」


 今なら、4人が組めば、大陸を焦土にもできるだろう。

 逆に、物資の溢れたフロンティアに変えることも可能だ。

 異世界召喚時に女王のババアに言われたのは、『国宝』を集めることだった。それは、ワイたちの最終目的でもある。


「ちょっと、探りを入れるか」


 ワイは、ネズミ型の盗聴・盗撮ロボットを作成した。

 それを、女王の周辺にばら撒く。

 それからは、情報収集に注力した。



 3日後、女王の親戚が集まった。兄とか弟、従弟だな。

 重臣というか、地方領主が一堂に会したみたいだ。

 聞き耳を立てる……。


「どうするのですか、女王様? 魔王クラスを20人も呼んでしまったみたいですぞ!?」


「慌てるでない。こちらの思惑が読まれない限りは、味方じゃ」


「ですが、敵に回った時点で、国が終わりかと」


「そうです。元の世界に帰せないと知られたら、どんな行動に出るか……」


「……懐柔できているのは、何人じゃ?」


「2~3人程度かと。とにかく貞操観念が高く、女好きは少なかったです。女性陣に関しては、同じ異世界召喚者で楽しんでいる模様です」


 女王が、爪を噛む。

 こいつは、王様を傀儡にして、国を牛耳っているんだよな。陰の支配者ってとこか。

 まあ、太后が国を牛耳ることは良くある。


「最低でも、料理人は懐柔せよ。他は殺しても構わぬ」


 おいおい。国が亡ぶぞ?

 最悪でも、この大陸を統一してからにしようぜ?

 女王も錯乱しているな。

 まあ、あの3人の活躍と、国民・兵士の支持率を考えれば、自分の地位を不安視するのも頷ける。


 その後、言い合いが始まった。

 生産系スキル持ちは、残したいのだとか。

 技術を吸い上げてから、始末したいらしい。


「アホとしか言いようがないな。スキルで行っているんだ。技術を盗めるわけもないだろうに」


 女王がリストを作って行く。

 殺害の順番らしい。

 一位が、稲葉なのは意外だ。いや、分かっていないな。

 稲葉がいなくなったら、他国に反撃を食らうよ?

 ちなみにワイは、中間より下だった。危険視はされていない……らしい。頑張ってんだけどな~。まあ、生産職だ。


「後は、毒殺のタイミングですな。北と東西の三国を平定させた直後がよろしいかと。南の一国は、異世界召喚者でない者が落としたという実績が必要です」


「……勇者の選任か。任せる」


 そうか……、毒を使うのか。

 更に話を聞くと、マンドラゴラを使用した毒を使い、一ヶ月かけて殺害するらしい。遅効性の毒か……。

 錬金術の2人に解毒剤を頼んでおくか。


「それと……、『元の世界に帰れない』と伝えるタイミングですな」


「あ奴らは、『国宝』がなんなのか聞いて来ないのであろう? 稲葉と申す者も、都を落としても聞いて来ない。もう少し、時間をかけようぞ」


 稲葉は、国宝をワイに相談して来ているんだよ。そして、そんなモノはないと結論づけている。

 それに、現地で登用した大臣に話も聞いている。もう、大分前だ。

 異世界召喚なんて、拉致する奴等の思考なんて読めてんだよ。

 自分たちの悪だくみがバレていないと思っている可哀相な人たち。まあ、同情はしないけどね。


「後は、傀儡になっている王様か……。馬鹿っぽく装っているけど、料理を食べに来ている時に、意思の確認を行っている。女王の一族の追放だな。権力はないが、人望は持っていた」


 あの女王の一族は、もう自分たちは終わっていると考えていないんだろうな。

 ワイたちは、最初期から疑っていたんだよ。

 一ヶ月も準備期間を設けたのは、何にも考えていないんだろうな。


 その後、大した打ち合わせもなく、解散になったみたいだ。


「正直、低レベルだな。今すぐ証拠を揃えて処刑台に送ってもいいけど、もう少し踊って貰おうか」


 それよりも……だ。

 ワイは、目の前の装置を見た。


「元の世界に帰る装置……。次元転送……。まだまだ、時間がかかりそうだ」


 一人一人、設定しなければならない。


「集団転移にしろと言いたいよ。時代も場所も違うって、どんだけ無駄なエネルギーを使ってんだか。特性のある人物を、各個召喚って効率悪いんじゃね?」


 異世界召喚者に外国人が含まれていたので、時代と場所を聞いていた。

 前世に戻るための触媒となる、前の世界から持ち込んだモノも確保済みだ。触媒がないのは、大将だけだけど、一番心配の必要のない人でもある。


 異世界召喚は、結構簡単にできた。後は、送還だけだ。基礎理論は、出来上がっているんだし、実験を繰り返せば、実現出来んだろう。トライアンドエラーだよな。


「戦争は、もう負けはないし、ワイはこの装置の完成を目指すか……。たく、ミリタリーマニアの仕事じゃないよな」


 ワイは、エンジニアじゃないんだよな~。

 武器を眺めて写真を撮るのが好きなだけなんだけど。サバゲーもBB弾じゃないと、燃えないし。

 それでもワイにしかできないとも思う。


「それに3人は、結果を出している。負けてらんねぇな。頑張んねぇと……」


 ワイは、実験に取りかかった。

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