第31話 科学オタク_開発する
◆鈴木(金属魔法使い)の視点
「ふう~。とりあえず、火薬の精製工場も作成できた。弾丸の製造も量産ラインに乗ったな」
クリーンルームを求められた時は、困ったモノだ。金属魔法で空気の清浄化ってどうすればいいか分からなかったからだ。
だけど、『空気浄化装置』を思い出せたら、そうでもなかった。イオン化が肝だったな。イオンを放出して、異物を吸着する。ただ、それだけだった。
生産スキル組の希望を叶えるのも、楽じゃなかった。
だけど、手足を生やすポーションとか恐ろしいぜ。
それに、食糧の増産と前世と変わらない食事だ。
若槻に任せたけど、どんだけ発展させてんだって話だ。
ワイは、生産スキル組の要望と共に依頼を熟していた。
鍛冶スキルとか恐ろしいな。『折れない』日本刀とか、最強過ぎないか? 刃こぼれも、魔力で修復できるのだとか……。
「大将に持たせたら、どんだけの成果を出すか……」
一応、試作品の日本刀だったけど、大将に送った。
そうすると、敵の一軍を全滅させたと連絡が来た。
ワイも、負けていられない。
だけど戦場には、出る勇気がない。
人殺しは躊躇いがあるけど、人を殺す武器を量産するワイも狂っているんだろうな。
ワイの成果物だが、始めは原チャだった。だけど、今はトラック100台の生産を終わらせた。
もうこの国は、末端まで物資が行き届いている。
若槻のアイディアだ。
「あいつも、一ヶ月で国を乗っ取っているんだよな……」
王族貴族は、もう若槻の傀儡だ。
だけど、若槻は権力に興味はないみたいだ。大将と稲葉の支援を第一に考えている。
まあ、ワイもだけど。
「それと、
異世界定番らしいけど、踏破したらしい。冒険者ギルドも若槻の傘下なんだとか。
情報は正確ではないが、裏の住人も若槻と手を組んだと話を聞いた。
マフィアとかヤクザと対等に渡り合えるのが、怖すぎる。どんなコミュ力だよ。
「魔王って言うなら、若槻だったのかもしれないな」
人心掌握術……、恐ろしい以外の言葉が出ない。
「ワイだけ取り残される訳にはいかない。負けてらんねぇな」
ワイは、飛行場に向かった。
戦闘ヘリコプターを起動させる。
「モデルは、AH-1Z ヴァイパーだ。(げふん、げふん)」
ワイがこの異世界の地形を勘案して、選出した機体になる。火力は、申し分ない。空対地戦闘だけじゃないく、空対空戦闘も想定している。サイドワインダーやスティンガーといった……。いや、止めよう。(げふん、げふん)
AH-1Zは、魔力がある一定以上ないと、飛ばすことも出来ない。エネルギー源が魔力だからね。担い手を選ぶけど、一機だけでも十分だと思っている。
――キュンキュンキュン……バラバラバラ……
エンジンがかかり、戦闘ヘリコプターが浮き上がった。
武装も完璧だ。機関銃やロケット弾のほか、対戦車ミサイルの搭載も行っている。
街一つくらいは、灰に出来ると思う。
だけど、稲葉がいると不要とも思えるな。
「一般兵、3人くらいに運用させるのが、妥当なのかもしれないな」
だけど、これだけの装備なんだ。同じ異世界召喚者に使って貰いたいのもある。
そう言えば、3人死亡したと連絡があったな。
チートを貰ったけど、死なないわけじゃないんだ。残された人達は、いっそう引き締まったのを感じた。
「全員で前世に帰る目標は、達成できなくなったかもしれないけど、大陸の統一はもう目前だ。物資と兵装、制圧兵も揃っている」
このまま、戦場に向かって、敵軍を蹂躙して来てもいい。
だけど、大将も稲葉も、『まだ待機』なんだという……。
ワイも、戦史は好きなんだ。相手が弱るまで待つべきだとは思う。
大将は、ワイの10円ハゲを治してくれた。これで、短髪にできる。
長年のコンプレックスが解消されて、感謝しかなかった。
そして、大将のスキルの凄さを理解できる仲間……。あいつらは、異常だと思う。ワイは、可愛い方だ。
ワイは、戦闘ヘリコプターで大陸を一周した。
他国の領土に入っても、攻めては来ない。
「画像記録装置もあるので、後で、正確な地図でも作るか……」
稲葉が占領している、元他国の王都上空に来た。
上空から俯瞰すれば、分かる。
「どんだけの威力を放っているんだよ……。地形が変わってんじゃん」
クレーターが複数見える。どう考えても稲葉だ。
あれじゃあ、戦争にならないな。
それと、上空からでも分かる。占領した北の王都は、破壊しなかったらしい。
民衆が、活発に動いているな。こちらは、大丈夫だろう。
稲葉が、ただの快楽殺人者でなくて良かったと思う。魔法の使い方を考えて、破壊を最小限に抑えているんだろうな。
次にワイは、大将の方向に向かった。
先頭ヘリコプターなら、一時間もかからない。大陸の端から端までなら二時間程度だ。
大将の立て籠る砦の上空に着いた。方角的に南だ。
「ワイの送った、ライフル銃が見えるな。防衛には十分だろうな」
後は、弾薬が切れないように輸送を続けるだけだ。若槻に任せれば、大丈夫だろう。
「それよりも……」
遠くに軍旗が見える。砦から一山先の谷に集結しているみたいだ。
方角は西だな。大将の立て籠る砦に攻撃を仕掛けるつもりなんだろう。
まだ、反抗する勢力が残っていたのか。
大将は、一対一なら、無類の強さを誇ると思う。だけど、戦争となると暗殺者になるしかない。複数方向から攻められると、時間がかかってしまう可能性もある。
「首狩り戦術……。十分怖いけどな。ワイも手を汚しておくか」
ワイは、敵陣地に向かった。
「恨まないでくれよ……」
スイッチを押す。ロケット砲が発射された。サイドワインダーとスティンガーだ。(げふん、げふん)
――ドカン
敵陣地が、吹き飛んだ。一面の火の海だ。
これで、大将の手を煩わせることもないだろう。
ワイは、帰路に着いた。
「ステータス」
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名前:スズキ(鈴木)
職業:異世界のミリタリーマニア(オタク)
レベル:1
HP:100
MP:1200
STR(筋力):500
DEX(器用さ):1200
VIT(防御力):600
AGI(速度):500
INT(知力):1500
スキル:想像物生成、自動翻訳
ユニークスキル:検索
魔法:金属魔法(生成・操作)
称号:異世界転移者、オーパーツを創る者
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