第30話 ラノベオタク_国勢を変える
一ヶ月が過ぎた。
大将と稲葉の状況は、変わらないのだとか。防衛戦に徹しているらしい。
たまに攻め込んで来るけど、迎撃しているらしい。
まあ、安心して任せられる。
物資は僕が運んでいるので、不足することはないしね。
戦争は、小康状態になったみたいだ。
稲葉が、他国の王都を落としているし、今の兵士数と食料では、これ以上制圧地を広げないという方針らしい。
僕は、街を見た。
「大分活気が、出て来たよな」
貧民街もなくなった。王都には、仕事が溢れており、他国からの移住者を受け入れている。
一番大きかったのは、川の浄化だったかな?
スライムを解き放ったら、綺麗な水に変えてくれた。『なんでも食べるスライム』――本当にいると、便利だな。
ラノベ定番だけど、便利生物だ。便利魔物?
他の13人も活躍している。
武器防具なんて、他国の何世代も先じている。ニトログリセリンの開発は、大きいよね。錬金術師って呼んでるけど、あの人はサイエンティストかな?
魔力のない人でも戦力になるんだし、火薬は正義だ。
それよりも、魔剣よりも切れる日本刀もどきだ。岩をバターみたいに切り裂く。それが、一般の兵士に配られている。
僕も短剣を貰ったけど、鞘まで切りそうで怖いよ。
鈴木は、前世以上のモノを作ってくれた。
そして、大将専用の日本刀……。怖すぎる性能だ。
最後に、航空戦力だ。零戦みたいなプロペラ機とヘリコプターが一機ずつある。
鈴木曰く、「これで十分」なんだそうだ。
「これで、準備は整ったかな? 後は、タイミング次第なんだけどな……」
まあ任せるか。
僕は、食糧庫に向かった。
「おお、若槻殿。倉庫がいっぱいで、増築になりましたぞ!」
食料長官が嬉しそうに話している。
ちょっと、食料を増産させ過ぎてしまったかもしれない。でも、他国は飢えていそうだ。
統一国家樹立直後は、大量消費するはずだ。
これでもまだ足りないと思う。まだまだ、増産して貰おう。
合成窒素肥料が大きかったな。知識を持っている人がいて良かった。
麦、芋、米、トウモロコシの種が手に入ったのも大きい。
まあ、僕が盗んで来たんだけどね。
「今は、アルコールの増産を行っています。葡萄の栽培ですね」
ワインにしたんだ?
腐らない水……。土地によっては、重要だよね。
航海の必需品だ。
「火事には注意してくださいね」
僕なら、ここを狙うけど、警備を厳重にして貰った。
今の警戒態勢なら、問題ないはずだ。
「次は、川に行こうか」
川の上流から下流へ向かう。
下水は、別途水路を作って集める様にした。もちろん、スライムが下水に生息しているので、環境悪化を招くこともない。
なので、清流が戻って来た。
スライムも改良を重ねて、人間に危害を与えない魔物に変化させた。
下流にまで歩いて行くけど、特に問題はなかった。
「ゴミを川に捨てる文化……。その問題点に気付かせたのが大きかったな」
製塩も上手くいっている。海が汚れなくなったので、良質な塩が取れるようになった。
「あ、若槻さん!」
呼ばれたと思ったら、アンリだった。旧貧民街で炊き出しを行っていた人だ。
彼女には、新しい教会を建てたので、シスターになって貰っている。
孤児や怪我人を保護して、養っているらしい。
炊き出しは、必要なくなったみたいだけど、僕は援助を続けていた。
元貧民街の住民には、労働者になって貰っている。
それは、畑仕事だったり、家畜の世話だったりした。
たまに、頭のいい人がいて、管理業務を頼んでいる。
それと、やっぱり料理だよね。
料理人の2人が、食文化を変えてくれた。もうね、一時期、王都の飲食店が閉店するほどのインパクトを与えたよ。
今は、レシピを公開して、美味しい料理が街中に溢れている。
食材を集めた、僕の功績でもある。砂糖が特に大きかったな。
アンリも、シスターというよりも、料理で孤児たちを餌付けしている。
「問題は、起きていませんよね?」
「はい、孤児院の経営も上手くいっています!」
協会への寄付も増えたらしい。
会話していると、子供たちがイチャイチャしてると言って来たので、あんまり会話できずに、移動することにした。
アンリは、残念な顔をしていたな。
最後にマフィアの
「おう! 若葉殿! 準備は出来ているぞ!」
何の準備だよと言いたいけど、彼等は治安維持に協力して貰っている。
街の衛兵そのモノだ。ちょっと見た目が怖いけど、悪事を働く人たちじゃなかった。
納税もしているしね。
「物資と人材は揃ったかな。後は……、他国の情勢が悪くなる時を狙えれば短期間で制圧出来ると思います」
「儂らは、その後だな。牙を研いでおくよ」
「お願いしますね」
握手を交わす。
僕の準備は終わった。後は、3人に任せよう。
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