第24話 ラノベオタク_他の異世界召喚者を観察する1
王城に帰って来た。
王様に会いに行くけど、忙しいみたいで面会は出来なかった。
それならば、同じ異世界召喚者の状況を見に行かないとな。
まず、農業関係からだな。第一次産業が壊滅していては、どんな国も生存なんてできない。
他の国に取って代わられるのが、落ちだ。
国営の農地へ〈転移〉する。
「おー……。見事な棚田ですね~」
3日前まで、山の斜面だった場所が、畑に変わっていた。
川の流れも変えたんだな。
「あ、若槻さん! 来てくれたんですね」
僕を見つけてくれたみたいだ。同じ異世界召喚者の女性が寄って来た。
「凄いですね。壮観です。記念写真を撮りたいぐらいですよ。それと、なんでか、畑から芽が出ているし」
話を聞くと、土魔法、水魔法、pH(ピーエイチ)魔法、植物操作魔法、動物意思疎通魔法なんだそうだ。
pH(ピーエイチ)魔法は、怖いかもしれない。
水素を自在に操れるってことでしょう? 酸や塩基を自在に操れる水魔法になると思う。
でも、黙っていれば、悪用を考える時間を与えないで済むか。
それと、植物操作だな。強制的に発芽させたのか……。僕なら、悪用方法がいくらでも思いつく。
動物意思疎通魔法は、〈魅了〉系だよね。
怖いスキル持ちが、集まったもんだ。
『ここで、彼等に自分の価値を教えてしまうと、後々面倒になるな』
それと、家畜を見に行った。
凄い量の雑草だな……。
それを、家畜が食んでいる。
牛・豚・山羊・羊・鳥もか……。見慣れないのもいるな。カピパラ? カピパラって草食だっけ?
現地人の方たちには、急遽飼育小屋を建てて貰っているらしい。
その後、元の農地を見に行く。
「こちらは、終わっていたんですね」
「昨日終わらせました。収穫は、一週間後になりそうです」
皆、満足そうだな。異世界でスキルを思う存分発揮できれば、ストレスも発散されるか。
しかし、かなり大型の重機とか導入しないといけない面積だぞ?
このペースで収穫できるとすれば……、どれだけの収穫量になるか。
「植物の病気には、気を付けてくださいね」
「うむ。その辺は、話し合っている。次は芋を植えて、その次は野菜の予定だ」
大丈夫そうだ。僕より知識がありそうだね。
ここは、任せていいだろう。
◇
次に僕は、海に来た。
この国も一応は海岸を持っている。だけど、狭いな。
対岸に半島が見える。
東京湾みたいな地形だ。
もしくは、朝鮮半島? スカンディナビア半島? イタリア半島?
大陸側が、僕の住む国だ。地図を見せて貰ったことがあったけど、大陸が『の』の字になっている。コテリヌイ島が近いかな?
「しっかし、汚いな~」
海岸が、ゴミで溢れているよ。
漁船も釣り人も見えない。
海を汚してしまって、魚が寄り付かないのかな?
それと、製塩施設は見えた。
正直、あんな油まみれの塩を口に入れたくないな。これは、改善が必須だ。
「川の浄化……。いや、正常な使用方法の徹底か。意識改革からだね」
僕は、〈収納〉を使い、海岸のゴミを清掃した。
陽が暮れる前に王城へ帰って来れた。
これから、ミーティングを兼ねた夕食だ。
全員の意見を聞かないとね。
だけど、戦闘系スキル持ちの3人は、帰って来なかった。
どうしようか……。まず、数日は状況確認からだったんだけど。
「多分、外で食事をしていますよ。昨日そんな話をしていましたし」
女性を見る。
せめて、一言欲しかったな。20人分の活動資金も返して貰っていないし。
「娼館に行きたいと言っていましたね」
う~ん。捕まえて来るか?
街の何処かの宿に泊まっていそうだ。
「明日、若槻さんが会いに行けばいいんじゃないですか? 冒険者ギルドがあるんだし、待っていれば出会えるでしょう」
ラノベ知識、もしくは異世界知識のある人も含まれているんだな。
「考えていると、料理が運ばれて来た」
「今日は、自信作だ。さあ、食べてくれ!」
料理人の2人が、大量の料理を運んで来た。
これでは、バイキング方式だな。
でも、いいのか。この方が、廃棄が少ないかもしれないし、グループとしての消費量も分かる。
皆、大皿を持って奪い合って行く。
正直、初日の料理は酷かった。
塩味しかしなかったし。
でも、2日目から料理人の2人に任せたら、大幅に改善された。
僕は、パスタを貰った。大皿に取り分けて行く。
「美味しい!」「美味い!」「最高!」「結婚して!」etc
変な感想が混じっていたけど、今は無視しよう。
僕も食べてみる。
「美味しいな……。塩だけで、こんなにも違うんだ……」
「その塩だけど、不純物が多くてね。どうにか、使えるまでに改良したよ」
ふむ……。あの製塩はやっぱりダメだったか。
その後、匂いに釣られて、王族貴族まで来た。王様もだ。
追加で料理を持って来て貰った。
「餌付けは、完璧だな。それと、戦闘系スキル持ちの3人だ。この料理よりも食べたい料理があるんだ?」
食べながら考える。
昨日、食事はしたんだ。それでも、戻って来なかった。
もしかするとトラブルかな?
戻れない状態に陥っている可能性……。
――ごくん
僕は、料理を飲み込んだ。
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