第25話 ラノベオタク_他の異世界召喚者を観察する2

 次の日の朝に、僕は冒険者ギルドへ向かった。

 戦闘系スキル持ちの3人を探すためだ。


「朝に依頼が貼られて、それを奪い合って行くらしいけど、来ないんだ?」


 受付嬢に確認する。


「見慣れない3人ですか~。ちょっと待ってくださいね。……登録日から考えて、パーティー名が、『鉄拳旅団』の3人でしょうね。昨日、荒稼ぎして、大量の魔物の素材を卸してくれました。その後……、迷宮ダンジョンに向かわれたみたいです」


 なんだ? 鉄拳旅団?

 なんで、旅団なんだ? 僕らも含まれるってことか?

 それは置いておいて……。


「その迷宮ダンジョンって、近くにありますか?」


「ありますけど、冒険者ランクを持たないと入れませんよ?」


 面倒な人たちだ。でも、放ってもおけないな。監督責任問題になる。



 どうしようもないので、王城へ戻ることにした。

 昨日見学できなかった、鍛冶スキルを含めた生産系スキルの5人の活動状況を知りたい。


 一人は、鉄を叩いていた。

 槍ですか? 槍の穂先?


「おう、若槻さん! 見学かい?」


「状況の確認に来ましたけど、問題なさそうですね」


 鉄を叩いているよ。あれは、日本刀の作り方だ。

 それに、魔力が込められている。どんなモノが出来上がるのか……。

 話を聞くと、生産系スキルは、鍛冶・彫金・木工が一人ずつと、錬金術が二人なんだとか。

 木工の人は、槍の柄を作っていた。


「6メートルの槍ですか」


「織田信長を真似ています。白兵戦ならば、この方がいいだろうと意見が出まして」


 稲葉なら、率いることが出来そうだな。

 いや、稲葉の発想って考えるのがいいのかな? 何時連絡を取ったんだ?

 まあ、戦争は任せよう。


 彫金の人は、アクセサリーを作っていた。

 魔導具になるんだとか。これも、有用そうだな。


 最後に、錬金術か……。

 金を作っているのかな?

 案内して貰った。



「なんだここ?」


 前世のクリーンルームが、作られているんだけど……。3日で作ったの?


「温湿度調整完備。クリーン度の――クラス(清浄度)は、クラス1ですと、お伝えくださいとのことです」


 最高ランクじゃないですか。

 凄い設備ですね……。


「それで、なにを作成しているのですか?」


「ポーションとエリクサーがいいだろうと……。現物を見たら、複製に入りました。現物はダンジョン産なのですが、古い文献に記された材料を集めたら、本当に作ってしまって……。それも最高品質のモノを大量生産したいと……」


 彼等が一番大丈夫かな?

 3日で、どんだけ成果出しているんだって話だ。


「ポーションって見せて貰えますか?」


「それでは、兵士の詰め所に行きましょう」



 そう言われて、連れて来られたのは、病床人が寝かされている部屋だった。


「戦地から帰って来られた者たちです」


 酷い敗戦だったみたいだな。

 一番重傷と思われる人に、ポーションが使われる。もう、ミイラと言いたくなるほど、包帯だらけだ。そして、呼吸が弱い。ギリギリ生きている感じだ。


 体が光ったと思ったら、立ち上がったんだけど?

 失った手足が再生してんだけど?

 包帯が解かれると、怪我などないイケメンが現れた。その後、食事をし始めた。


「凄い技術ですね。こんな技術は、僕の前世にもありませんでした」


「いえ……、こんな品質は、数十年に一本出るかどうかですよ」


 そんなのを、量産してんだ?

 頼もしいな。頼もしい以外の言葉が出ないよ。

 これで、戦争には勝てそうかな?


「そうなると、迷宮ダンジョンに向かった3人だよな~」


 僕は、王様の元へ向かった。



「うん? 迷宮ダンジョンに入りたいの?」


 今日は、王様が会ってくれた。

 僕たちの影響力を理解し始めたんだな。


「3人戻って来ていないので、僕が探しに行きたいんです」


 王様が指示をすると、金属の板が僕の目の前に運ばれた。

 血を垂らして、個人の登録を行うらしい。冒険者カードってやつだな。異世界の定番だ。


「とりあえず、B級ね。それ以上にすると、冒険者ギルドから苦情が来るから、実績をお願いね」


 話を聞くと、S・A・B・C・D・E級なのだとか。中間より上かな?

 この辺は、ナーロッパと変わらないから分かりやすい。


「ありがとうございます」


「お礼を言うのは、こちらだ。まとめ役、がんばってね。それと、夕食は呼んでね」


 王様も忙しいみたいだし、長居は無用だな。

 僕は、王城を後にした。


「さて、次は迷宮ダンジョンか……」


 面倒ごとが、増えて行くな……。

 まあ、この世界を知れると考えれば、無駄でもないか。


 僕は、迷宮ダンジョンに向かった。



 迷宮ダンジョンは、街中にあった。

 いいの? 魔物とか出て来ない?

 まあ、歴史があって今の状況なんだろうし、今は突っ込まない。


 入り口で、冒険者カードを渡す。


「えっ? B級?」


 入り口の衛兵に、カードを見せると驚かれた。

 なんか変なのかな? 王様に貰ったんだけど?


 衛兵がヒソヒソと話し始めたけど、数分で通してくれた。


「さて……迷宮ダンジョンか……。探索って、僕に向くのかな?」


 一抹の不安を感じながら、僕は一歩を踏み込んだ。

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