第22話 ラノベオタク_炊き出しを手伝う1

 食料を奪って王都に帰る途中だった。

 火災現場が見える。でも、山の中腹で?


「ちょっと、寄って行くか」


 遠目で確認できる距離まで近づいて、確認だ。


「うん? 盗賊っぽいな……。食料を焼かれたのか?」


 慌てて消そうとしているけど、あれはもう炭だね。手遅れだ。

 一瞬で燃え上がらせたんだろう。油かな?


「稲葉か大将か……。距離的に大将かな?」


 それと、食料不足が起きていると判断できた。

 彼等も、まともに働ける環境さえあれば、盗賊にならずに済んだんだろうな。

 思考を巡らせる。


「やっぱり、食糧の増産と料理だよね。異世界定番だ。そうなると、胡椒を探すのが、王道かな?」


 僕たちは、飢えている国民を抱える国に、異世界召喚されたのか。

 これからしなければならないことを、教えて貰った気がする。

 流石大将と言ったとこかな。僅かに動いただけで、僕に多大な情報を与えてくれる。

 砦の防衛は、任せよう。もう、勝ちが決まっているしね。


「僕も負けてられないな。他の3人に置いて行かれたら、恥ずかしい」


 僕は決意を新たに、〈転移〉した。





 王都に戻って来た。

 だけど王城に戻る前に、街の確認だな。

 市場調査を行うことにした。


「う~ん。ここが、メインストリートなんだよな……」


 露店が並んでいるけど、壺とか刃物が並んでいる。食料が見当たらない……。

 街の人たちは、かなり痩せているし。


「政治は、なにしてんのかな……」


 兵士だけに食べさせている?

 国民を飢えさせている時点で、アウトだと思うけどな……。


 少しウロウロしていると、教会みたいなところを見つけた。

 列を作って並んでいる……。

 もう少し近づこうと思ったら、囲まれた?


「ここは、そんな綺麗な服を着ている者が来る所じゃない。一回だけ見逃してやる。失せろ」


 ふむふむ。これが、貧困街なのかな?

 彼等の服装を見る。厚手の生地で穴が空いた服を着ている。それと、匂う……。

 僕は、高校の制服のままなんだよな。


「う~ん。疫病が発生したら終わりの環境だな……」


 僕が呟くと、殴って来た。

 空気を〈固定〉して、盾にする。


 ――ガン


 痛がっているな。空気が原料でも、強度を高めに設定出来るのか。つうか、魔法で作ったモノって破壊出来るのかな?


「この野郎!」


 3人が殴りかかって来る。あ……、1人は斧を振りかざして来た。

 ちょっと、痛い目にあって貰うか。

 僕は、〈転移〉で彼等の背後に移動した。彼等の背中を、ポンポンポンと触れてマーキング終了だ。


「ちょっと、捩じるね」


「「「ぐあああぁ!?」」」


 〈スキル:空間湾曲〉を発動する。

 どれくらい持つかな? 10度、15度……。30度。


「待ってください!」


 背後より、制止を受けた。

 振り返ると……、同い年くらいの美少女がいた。身なりが悪いのと、ボサボサの髪だけど、美少女だな。

 着飾ったら、アイドル級の容姿になるだろう。


「ここでの、争いごとは罪に問われません! どうか、帰ってください!」


 その後、更に囲まれる。

 そうか……、この人がこの地域のリーダーなんだな。

 手にお玉を持っているので、食事を配っていた人なのかもしれない。


「僕は、異世界召喚者です。3日前にこの世界に来ました。今は、情報を集めています」


「ここは、外界から見捨てられた人たちの集まりなんです! 情報などありません! 帰ってください!」


 取り付く島もない……な。

 食料をちょっと出すか。

 麦を10袋と、乾燥野菜、燻製肉を出す。〈収納〉って便利だよね。


「なんのつもりですか?」


「情報が欲しいんです。協力してくれませんか?」


「全て持ち帰ってください! 即刻、ここから退去願います!」


 ……僕が間違っていたようだ。

 こんな環境でも、誇りを持って生きている人なんだな。


 拘束してた、3人を解放する。


「失礼しました。若槻といいます。非礼をお詫びします」


 頭を下げる。この世界の礼儀作法は、まだ分からない。


「……騎士ではないのですか? 貴族にも見えますけど?」


 貴族? 服装から? 高校の制服だよ?

 でも、彼等かするとそう見えるのか……。


「全然違いますね。元の世界に帰るために、この世界で活動を開始しました。僕は、内政の担当です。王様に訪ねて貰えれば、分かると思いますよ?」


 美少女が、訝しんでる。


「それで……、この食糧の対価に、なにを?」


「明日か、明後日かに仕事を頼みたいですね」


「アンリ……。神のお恵みかもしれない。それに、もう限界は間近かだったんだ。縋ってみようじゃないか」


 一人の老婆が出て来た。

 アンリと呼ばれた、美少女が諦めて、頭を下げてくれた。


「ありがたくいただきます」


 彼女がそう言うと、周囲の全員が僕に頭を下げた。

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