第22話 ラノベオタク_炊き出しを手伝う1
食料を奪って王都に帰る途中だった。
火災現場が見える。でも、山の中腹で?
「ちょっと、寄って行くか」
遠目で確認できる距離まで近づいて、確認だ。
「うん? 盗賊っぽいな……。食料を焼かれたのか?」
慌てて消そうとしているけど、あれはもう炭だね。手遅れだ。
一瞬で燃え上がらせたんだろう。油かな?
「稲葉か大将か……。距離的に大将かな?」
それと、食料不足が起きていると判断できた。
彼等も、まともに働ける環境さえあれば、盗賊にならずに済んだんだろうな。
思考を巡らせる。
「やっぱり、食糧の増産と料理だよね。異世界定番だ。そうなると、胡椒を探すのが、王道かな?」
僕たちは、飢えている国民を抱える国に、異世界召喚されたのか。
これからしなければならないことを、教えて貰った気がする。
流石大将と言ったとこかな。僅かに動いただけで、僕に多大な情報を与えてくれる。
砦の防衛は、任せよう。もう、勝ちが決まっているしね。
「僕も負けてられないな。他の3人に置いて行かれたら、恥ずかしい」
僕は決意を新たに、〈転移〉した。
◇
王都に戻って来た。
だけど王城に戻る前に、街の確認だな。
市場調査を行うことにした。
「う~ん。ここが、メインストリートなんだよな……」
露店が並んでいるけど、壺とか刃物が並んでいる。食料が見当たらない……。
街の人たちは、かなり痩せているし。
「政治は、なにしてんのかな……」
兵士だけに食べさせている?
国民を飢えさせている時点で、アウトだと思うけどな……。
少しウロウロしていると、教会みたいなところを見つけた。
列を作って並んでいる……。
もう少し近づこうと思ったら、囲まれた?
「ここは、そんな綺麗な服を着ている者が来る所じゃない。一回だけ見逃してやる。失せろ」
ふむふむ。これが、貧困街なのかな?
彼等の服装を見る。厚手の生地で穴が空いた服を着ている。それと、匂う……。
僕は、高校の制服のままなんだよな。
「う~ん。疫病が発生したら終わりの環境だな……」
僕が呟くと、殴って来た。
空気を〈固定〉して、盾にする。
――ガン
痛がっているな。空気が原料でも、強度を高めに設定出来るのか。つうか、魔法で作ったモノって破壊出来るのかな?
「この野郎!」
3人が殴りかかって来る。あ……、1人は斧を振りかざして来た。
ちょっと、痛い目にあって貰うか。
僕は、〈転移〉で彼等の背後に移動した。彼等の背中を、ポンポンポンと触れてマーキング終了だ。
「ちょっと、捩じるね」
「「「ぐあああぁ!?」」」
〈スキル:空間湾曲〉を発動する。
どれくらい持つかな? 10度、15度……。30度。
「待ってください!」
背後より、制止を受けた。
振り返ると……、同い年くらいの美少女がいた。身なりが悪いのと、ボサボサの髪だけど、美少女だな。
着飾ったら、アイドル級の容姿になるだろう。
「ここでの、争いごとは罪に問われません! どうか、帰ってください!」
その後、更に囲まれる。
そうか……、この人がこの地域のリーダーなんだな。
手にお玉を持っているので、食事を配っていた人なのかもしれない。
「僕は、異世界召喚者です。3日前にこの世界に来ました。今は、情報を集めています」
「ここは、外界から見捨てられた人たちの集まりなんです! 情報などありません! 帰ってください!」
取り付く島もない……な。
食料をちょっと出すか。
麦を10袋と、乾燥野菜、燻製肉を出す。〈収納〉って便利だよね。
「なんのつもりですか?」
「情報が欲しいんです。協力してくれませんか?」
「全て持ち帰ってください! 即刻、ここから退去願います!」
……僕が間違っていたようだ。
こんな環境でも、誇りを持って生きている人なんだな。
拘束してた、3人を解放する。
「失礼しました。若槻といいます。非礼をお詫びします」
頭を下げる。この世界の礼儀作法は、まだ分からない。
「……騎士ではないのですか? 貴族にも見えますけど?」
貴族? 服装から? 高校の制服だよ?
でも、彼等かするとそう見えるのか……。
「全然違いますね。元の世界に帰るために、この世界で活動を開始しました。僕は、内政の担当です。王様に訪ねて貰えれば、分かると思いますよ?」
美少女が、訝しんでる。
「それで……、この食糧の対価に、なにを?」
「明日か、明後日かに仕事を頼みたいですね」
「アンリ……。神のお恵みかもしれない。それに、もう限界は間近かだったんだ。縋ってみようじゃないか」
一人の老婆が出て来た。
アンリと呼ばれた、美少女が諦めて、頭を下げてくれた。
「ありがたくいただきます」
彼女がそう言うと、周囲の全員が僕に頭を下げた。
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