第21話 ラノベオタク_物資を調達する
◆若槻(空間魔法使い)の視点
時間が少し遡る。
池上(知識オタク)が、戦場に旅立った後……。
「さて、皆さんの仕事を割り振りましょうか。働かざる者食うべからずです」
「だから、拉致だろう。俺は、仕事を持っていたんだ!」
「私は、学校があったのよ! インターハイに向けて準備していたのに!」
「受験の歳なんですけど……。もう、戻れないんですか?」
ふう~。まあ、当然の反応だよね。
「う~ん。最短なら一ヶ月程度で帰れるでしょう。他の3人の邪魔をしなければですけど」
「「「そんな保証が、何処にあるんだ!」」」
ダメだな。少し脅すか。
石畳の地面を歪ませる……。
――グシャ……ガガガ
地面が陥没して、柱状に組み上がった。
それを見た全員が、後退った。
「皆さんも、スキルを持っていますよね? 他の3人は僕より強いですよ? 最短というなら、信じて待つ以外にないと思います。それとも、レベル1で戦場に行く勇気を持っていますか? 大将は行きました。勇気がある人ですよね」
ここで、前日にボコられたヤンキーさんが出て来た。
服装もボロボロだな。
支給されていないのか。
「……ステータスを教えてくれ」
「知力が、1200かな? 他は、1000前後ってとこです」
「……分かった。従うよ。それと、あの炎魔法使いより、お前の方が強いんじゃないか?」
分かってないな~。
ステータス値が、そのまま異世界での『強さ』になるわけじゃないのに。
追放モノとか、読んでないのか? 最強系のスキルが、ステータス差を覆すこともあるんだよ。
僕は、彼とは話しできないな……。でも我慢だ。
「攻撃力特化の人と比べられてもね。まあ、レベル上げすると言っているから、そのうち分かりますよ」
ここで、訓練場の方から火柱が上がった。
うん、いいタイミングだ。ナイス、稲葉!
「僕にはあれと……、真正面から戦う勇気はないかな~」
全員が絶句している。
「戦闘系のスキル持ちがいるのであれば、稲葉の特訓に付き合ってもいいですよ」
全員がザワザワする。
その後、丸焦げの怪我人が運ばれて来た。どうやら、稲葉は10人前後と試合をしたらしい。
あれは……、殺しも厭わない人種だな。どこぞの戦闘民族なのか。
本当に、同じ日本人なのかも疑わしい。
そう言えば、服装から同じ時代からの転生だと思ったけど、前世の西暦くらいは聞いておくべきだったな。誕生日が妥当かな?
不注意だったかもしれない。
稲葉は、漫画好きと言ってたけど、僕から見て、未来で戦争に巻き込まれた人でないとは限らない。そう……。稲葉は僕よりも未来の人で、戦争中の時代に生きた人であった場合……。
「お前は、あれと戦えるのか?」
考えていると、質問された。
「負けることはないでしょう。逃げられるので。勝てるかどうかは、情報次第ですかね。彼がビートダウン系なら、僕は妨害系なので」
――シーン
その後、16人は僕に従ってくれるようになった。
農業関係のスキル持ちは、農地へ送る。
鍛冶スキルは、貴重だな。場合によって、鈴木と組ませよう。
生産系スキル持ちもいるのか。こちらは、王家に任せる。薬品生成がいいだろう。
調理スキル持ちが2人いたのは、大きかった。重宝されるだろう。料理人として、王城でレシピ開発を行って貰う。
問題は、戦闘系スキル持ちが、3人いたことだった。
「とりあえず、君たち3人は肉体労働だね。雇ってくれる商屋を探そうか」
「待ってくれ。異世界なんだから冒険者じゃねぇのか?」
その選択肢もあるか。
まあ、意見を尊重しよう。
王都は、調べ終わっている。僕は、冒険者ギルドに〈転移〉した。
◇
「登録は終わったね。そんじゃ、頑張ってね」
「待ってくれ。武器防具もなしかよ? 支度金くらいくれないのか?」
援助する必要もないんだけどな……。
王家から貰っていた、20人分の活動資金を渡した。
「貸すだけだからね? 20人分の資金なんだ。必ず返してね」
「助かるよ」
この3人とは、ここで分かれた。
「さて……、大将の手伝いと行くか」
僕は、大将の向かった砦に移動を開始した。
「〈転移〉って言っても、見える範囲だけなんだな。壁に埋まりたくないし、今は慎重に行こう」
〈転移〉を繰り返して行く。
大将は、僕の身長を10センチメートル伸ばしてくれたけど、ふくらはぎが少し突っ張る程度だった。一ヶ月くらい歩けなくなる覚悟を持っていたけど、走れている。スキル〈変身〉は、凄い以外の言葉が出ないよ。
僕のコンプレックスを解消してくれた、大将のスキル。正直、凄すぎると思う。
途中で、大将の一団を追い抜いた。熊を解体しているみたいだ。
挨拶は、不要だろう。
そのまま進む。
道沿いに進むと、攻められている砦が見えた。
「僕は、絶対防御とかないからね。不意打ちに気をつけないと詰みだ。慎重に、慎重に……」
近くの山の山頂から、戦場の全体を推測して行く。
夜になると、戦争が終わって、敵軍が集まり出した。
そして、夕飯らしい。
「ふむふむ。食糧庫はあそこか……」
躊躇う必要もないな。
僕は、夜中に敵軍の食料を強奪した。〈転移〉と〈収納〉を使えば、簡単だったな。だけど、全部は奪わない。数日分だけ残す。
これで、大将が活躍できる場面が整っただろう。
「ステータス」
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名前:ワカツキ(若槻)
職業:異世界のストーリージャンキー(オタク)
レベル:1
HP:90
MP:900
STR(筋力):200
DEX(器用さ):500
VIT(防御力):70
AGI(速度):1000
INT(知力):1200
スキル:統率、自動翻訳
ユニークスキル:空間湾曲
魔法:空間魔法(転移・転送・収納)
称号:異世界転生者、天下の大泥棒
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