第20話 漫画オタク_都を落とす

 東西の隣国は、北国のネオランドに本気で攻め込んで来たとの情報を得た。

 王都の警備も薄いとの調査結果もある。

 それと、砦近くの農民は、帰順を申し出てくれた。


「今なら行けるか……」


 俺は、王都への進軍を命令した。

 先に、王都を占領してしまおう。

 この国に攻め込んでいる二ヵ国との同盟は生きている。

 最悪、全滅させてしまってもいい。

 ベギラゴンなら、数十発は撃てる。(げふん、げふん)


 途中で、数万人の防衛兵が来たが、返り討ちだ。

 まだまだ、レベルカンストには程遠い俺だが、大分強くなったのかもしれない。

 特に抵抗もなく、王都に着いた。


「王都は、厳戒態勢だな……」


 門を閉ざして、上空にはワイバーン部隊が展開している。


「食料の備蓄は、調べられたか?」


「農業の発展している国なので、一般人を囲っていても数ヵ月は持つかと……」


 どうすべきか……。

 城壁を飛び越えて、食糧庫を焼くか?

 いや、城壁を壊して、降伏させるべきか……。

 ここで時間をかければ、他国の兵が来てしまう。


「破壊専門の俺の苦手分野だな……」


 後々を考えるなら、一般人の損害は出したくない。

 それは、俺の苦手とする分野だ。

 矛盾を抱えた、攻城戦……。思考時間も余りとれない。決断しないとな。



 数日が過ぎた。

 俺たちは、陣地を構えて王都を伺っている。

 ワイバーン部隊は、警戒を止めたようだ。

 野営している俺たちには、毎日食料が贈られるようになっていた。

 農民を味方につけた成果だな。

 これで、補給を気にする必要がなくなった。


「大将軍殿。そろそろ動かないと……」


 だけど、報告では他国の侵攻は許していないとある。防衛出来ているみたいだ。

 そして、王都からは撃って出て来ない。

 こちらは、二千人弱の寡兵だというのにな。

 王都に残っている兵士は、少ないんだろう。


「王族の暗殺が、最適なんだが、俺のスキルが適していないんだよな」


 そんなことを考えている時だった。

 王都の門が開いた?

 数千の兵士が、向かって来た……。多く見積もっても一万だろう。


「和睦交渉か?」


「いえ……。痺れを切らした指揮官が撃って出て来たのでしょうね」


 とりあえず、陣形を整えて、迎え撃つ。

 挨拶もなしに、突撃して来た。


「手加減する必要もないだろうな。イオラ! (げふん、げふん)」


 俺は、爆発系魔法を放った。

 突撃して来た敵兵が、吹き飛んで行く。

 後方にいた、敵将は向かって来ない。つうか、逃げた。何しに来たんだか……。


「全滅には、程遠い威力だな……。今これじゃ、この世界最強の兵士が来たら、俺は詰みじゃん」


 最初期から最強ではない異世界転生……。不満を言っても仕方がないが、俺だけハズレなのかもしれない。本当にそう思えて来た。追放は受けたくないな。


 兵士に指示を出し、敵兵は捕虜にした。

 武装解除の後に、周囲の農民に捕虜を預ける。

 死者は、少なかったらしい。

 まあ、広範囲の威力低めの呪文だ。一応、今の自分に合った魔法を選んでみた。


 飛翔して、王都を見下ろす……。



「兵士がほぼいない? 先ほどの、一軍が王都守備のほとんどだったのか?」


 ここで、ワイバーンに乗った騎士が来た。

 白旗を掲げている。


「貴殿は、セントラルガルドの将軍か?」


「ああ、そうだ」


「休戦協定を結びたい」


「降伏なら受け入れよう。無血開城が条件だ。そうだな、王族は見逃してもいい」


 騎士が、考え出す……。

 その後、一度戻って検討するとのことだった。


 交渉の後、俺は陣に戻った。


「なにを話されたのですか?」


 見られていたか。

 何時も五月蠅い、俺の監視役が聞いて来たよ。


「無血開城を勧告して来た。それだけだよ」


 兵士は、全員驚いているな。

 だが、俺はバトルジャンキーじゃない。人命は、出来る限り奪いたくない。

 特に民間人や味方を殺す悪役は、最後に倒されるんだ。俺は、そんな役回りはゴメンだ。



 次の日に、無条件降伏の使者が来た。割と話が通じる相手だったか。

 王都の外で、王族と面会を行う。兵士たちは、100メートル離れた所で待機している。


「……降伏する。だが、王族貴族の姫だけでも、見逃して欲しい」


「王族貴族だけでなく、王都の民も、好きな場所へ行け。残ると、兵士たちに凌辱されると伝えろ。俺は、王様にも興味がない」


 それだけ言うと、王族は、馬車数十台で王都から逃げて行った。財産は……、ほとんど残して行ったみたいだ。賢明ともいえる。今は移動を最優先して、他の貴族の領地での再起が正しい。

 それと、兵士だな。千人ほどついて行ってる。食糧とかどうするつもりなんだろうか……。辿り着けるといいんだが。


 王都を進むと、住民たちが不安そうに俺たちを見ている。

 今後、悪政を敷くつもりはないんだけどな……。兵士たちにも民間人に手を出さないように命令しないとな。

 それと……、娼館だな。戦争物の漫画で良くある展開だ。兵士の不満を抑えて貰おう。相応の賃金を支払えば、問題にならないはずだ。


 城に入る。静かだな……。メイドすらいない。服従の意思を示した数人の文官のみだ。俺は、城の全ての部屋を調べるように指示を出した。暗殺者とか隠れていそうだ。

 俺は……、王の椅子に座る。これが、玉座か。王様って、こんな光景を見ているんだな。だけど、これで終わりじゃない。


「攻められている、他の砦の状況を教えてくれ。東西の国との戦況だな」


 残った、元ネオランドの大臣が教えてくれた。

 こいつは、優遇してやろう。悪い諺だけど『まず隗より始めよ』だよな。


「防衛は出来ています。しかし、士気が持つかどうか」


「俺が、向かった方が良さそうだな」

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