第19話 漫画オタク_進軍する

 俺は、軍を進めることにした。

 とりあえず、二千の兵士での進軍だ。千人は砦の防衛に回した。

 元敵軍陣地を通過する。俺が燃やした跡だ。


「……何も残っていないのですな。真っ平です」


「全部燃やしたからな。王都は、この100倍くらいあるんだろう? 流石に今の俺のレベルだと無理があるな。対策を考えないとな……。ワンキルできないと、こちらも被害を受けそうだ。まだ、負けがあるかもしんねえな」


 俺の言葉に、兵士たちがピリリと引き締まった表情をした。


 山を越えると、一面の平野だった。

 開拓されているのが分かる。


「豊かな国なんだな」


「大陸一の農業国ですから」


 ちっ。麦が実ってやがる。燃やすわけにはいかねぇな。

 この地では、俺は全力を出せそうにない。

 王都までは、兵士たちに任せるしかないか。


 移動を続けていると、途中で、関所が現れた。

 この国は国境を山の険しさに任せて、王都を守る関所を道の途中に設置しているのだとか。

 そうなると、国境から関所までの農民は、誰が護るんだ?

 途中に村があったが、襲わない様に、俺が指示を出したくらいだ。


「この国もダメだな。国作りの基本がなってない」


 戦国の世なんだ。一ヵ所でも欠点があると、その国は亡ぶぞ?

 俺は、飛翔して上空より関所を望んだ。


「俺の話は、伝わっているんだな」


 関所は門を閉じて、防衛の構えだ。矢も射かけて来ない。

 だが、兵士数が少ない?

 関所の大きさと、兵士数が合っていない……。


「まあ、攻撃してみるか」


 俺は、炎を剣の形に成型した……。

 その剣を振り下ろす。


「邪王炎○剣! (げふん、げふん)」


 ――ドッガ~ン


 関所が、半分に割れる。飛び火しないように調整しないとな……。

 瓦礫の中から、敵兵士が出て来た。混乱しているみたいだ。

 そこへ突撃する、俺の部下。奇襲が成功して、砦に雪崩れ込んで行く。

 だけど、砦の兵士も抵抗して来た。砦の中で、戦争が始まる……。


「やはり、数が少ない? なんでだ? 先ほどまで攻めていた兵士が、主力だった?」


 抵抗は少なかった。

 一手で、関所を制圧出来たみたいだ。





 捕虜とした敵兵から、話を聞くことにした。


「兵士は、東西の砦に配置されただと? 兵士は国境に配備されたのか?」


「は、はい。南からは来ないとの判断でした。前に攻め込んでいた兵士たちで十分だとの判断です。それで、この関所は維持できる最少人数で守っていました」


 ペラペラと良く喋る。まあ、実際に拷問に耐えられる奴なんていないっていうしな。賢明かもしれない。


「その東西というのは、攻められているのか? 砦とか関所は、あるのか?」


「防衛を行っているとの連絡が来ています。戦端が開かれて、予備兵までも導入されているみたいで……。国境には、砦があり道の途中に関所を設けるのが、この国の道路設計になっています」


 考える……。俺が、砦の敵陣を壊滅させたのは、数日前だ。それまでは、北の国は、攻めていた。本当であれば、中央国に進軍するんじゃないのか?

 そうなると、それ以前から、他国が動いていた?

 鳥による情報伝達といっても、侮れないのかもしれない。


「まあ、考えるまでもないな。隙をみせた国から滅んで行くんだろう。これが戦国の世だよな」


 俺は、漫画でそれを知っている。


 捕虜は面倒なので、彼等は武器を捨てて投降という形にさせた。

 関所が落ちたことを、中央に知らせるメッセンジャーになって貰おう。

 敵兵は、お礼を言って去って行った。

 再び、相まみえないことを祈ろう。

 次は、蒸発させてしまうかもしれない。良くて、消し炭だな。


「この関所を、俺たちの本拠地とする。修理してくれ」


「「「はっ!」」」


 かなり壊してしまったが、雨風を凌ぐくらいには役に立つ。

 城壁だけでも修理すれば、関所としての機能は維持できんだろう。


 それと、かなりの食料を溜め込んでいた。

 周辺の村に配るように指示を出す。


「何故このようなことを? 食糧を放出するなんて、聞いたことがありませぬ」


「土地をとった為政者の最初の仕事は、民衆を手懐けることからだぜ? 今は収穫前なんだ。一番食料が少ない時期だ。収穫したら、倍の食料を治めて貰おうぜ」


 この兵士には、理解できないらしい。

 暴徒化した農民ほど、怖いモノはないんだけどな。


 それと、情報収集だ。

 特に戦場になっている左右の砦だな。中央の――王都には、兵士は残っていないだろう。

 二千の兵士で制圧できるかどうか……。


「俺は、破壊しかできないしな」


 焼け野原になった王都など、何の価値もない。

 制圧戦……、俺に一番向いていない。殲滅戦みたく、なにを壊してもいいのであれば、別なんだけどな。

 だけど、若槻と鈴木に頼るわけにもいかない。


「どうやって、この国を制圧するかだな……。ちっ、俺には向いてないぜ」


 俺は、天を仰いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る