第18話 漫画オタク_敵陣を蹂躙する

 俺の率いていた部隊が、砦に到着した。敵陣を蹂躙して、撤退させた後なので、結構ボロボロだな。戦闘の痕が見える。

 戦争に勝ったとはいえ、砦にいた兵士はほぼ壊滅状態だ。

 こうなると、怪我人しかいない。


 王都は、なにを考えていたんだ?

 ここまで追い込まれるほど、砦を放置するとか。


 しかも、この砦から王都まで関所もない。

 敵兵が砦を越えて雪崩れ込んだら、国が終わっていただろうに。途中の村も滅んでいたぞ?


「大将軍殿。この後、如何いたしましょうか?」


「怪我人の手当てと、食事の用意な。敵が攻めて来たら、俺が相手をする。監視は、怠るなよ」


「はっ!」


 鈴木が言っていた……『兵士数』か。ここに来て、言葉の重みが理解できた。


「逆だったかもしれねぇな。大将がこっちに来るべきだったかもしれない。いや、あちらも追い詰められていたんだろうし、単純には言えないか」


 回復魔法のない、自分に歯噛みする。

 なんで俺は、〈炎魔法〉だけなのか……。


「脳筋そのままのステータス。恥ずかしい。もしかして、俺だけハズレスキルなんじゃないのか?」


 他の2人も『怖い』と思える。

 あいつらは、時間が経つにつれて、真価を発揮するタイプだ。

 特にこの国は、若槻と鈴木にかかっていると言っても過言じゃない。


「ふう~」


 ため息が出た。


「負けてらんねぇな。とりあえず、実績を作らないと……。将軍に祭り上げられているけど、成果がまだないんだし」


 俺は、敵陣を睨んだ。





 それから数日、敵兵は攻めて来なかった。

 おかげでこちらは、大分回復できた。

 魔法使いの中に、回復魔法持ちがいたのも大きい。

 それと、薬品だ。作った奴の名前は憶えていないが、同じ異世界召喚者が作った『試作品』が凄い効果を発揮するのだとか。傷口が一瞬で閉じるって、体に悪そうだな。まあ、瀕死から一瞬で安静にまで回復できるんだ。戦場では、不満もないだろう。

 錬金術師になるのかな? 後で名前を聞いておこう。


「次は、どうするか……」


 俺は敵陣を観察しているのだけど、ワイバーンが人を乗せて移動しているだけだ。

 あれは、連絡を取っているのか? 敵国の王都と往復している?

 もしかして、電話がない?

 そこまで、古代なのか……。

 ナーロッパとはいえ、魔法のある世界なのに、手紙による連絡か。


「意識改革が必要だな。だが、それが俺たちのアドバンテージでもある」


 鈴木に、電話を作って貰おう。

 王都に帰ったら、相談だな。スマホを作って貰い、データベースも欲しい。

 それと、現地人に漫画を描かせて、この国の書物を全て漫画化するのが、俺の野望になりそうだ。


「大将軍殿。この後如何なさいますか?」


 考えていると、声をかけられた。

 そちらを見る。

 俺の監視役だった奴だ。戦場にまで、ご苦労なこった。


「とりあえず、時間稼ぎが目的だ。一気に攻め込んでもいいが、敵は遠征しているんだ。浪費して貰おうと思う。食料が尽きれば、撤退だろう? 若槻が、盗んで行って、数日前に敵の陣地は崩壊したんだ。待ってれば、その内動きがある」


「いえ……。他国が北国に攻め込んだみたいです。もう、この砦に攻め込んで来ることはないでしょう。西国と東国です」


 他国? 隣国か? 手薄になった敵国の本土を狙っている?


「その情報は、どうやって手に入れた?」


「鳥による、手紙ですが?」


「ちっ……」


 情報が、数日遅い。

 そうなると、敵陣は、撤退の真っ最中か。判断を誤ったな。


 俺は、飛翔した。



 敵陣に近づくと、矢が飛んで来た。

 だが、上空から俯瞰すれば、なにをしているかは丸見えだ。


「まじで、撤退かよ……」


 食料を運び出していた。

 負傷者からだろうに……。人命を軽んじている。回復魔法がある世界だというのにな。


 観察していると、雨のような矢が、下から襲って来る。曲射射撃なので、自分たちには降り注いでいない。そして、撃ち終わると回収している……。

 それで、また撃って来た。


 俺は使い物にならないように、今度は全ての矢を焼いて行く……。

 一時間もしないうちに、矢が止んだ。撃ち尽くしたのだろう。

 やはり、飛べるというのは優位性があるな。俺の〈炎魔法〉と組み合わせると、弓矢を無駄に消費させられる。


「矢は、応戦しないと、弾切れになるよな……」


 それでも、一万本はあったと思う。

 敵兵は、槍と盾を構えて、抵抗の意志を見せる。

 そこから、飛んでいる俺に何をするのだろうか……。


「これだけ、力の差を見せても撤退しないのか……。いい兵士だ」


 俺もそれに応えないといけない。

 俺は、両手に炎を纏った。

 それを合わせる。


「ベギラゴン! (げふん、げふん)」


 眼を開けていられないほどの閃光の後に、敵陣が溶鉱炉に変わった。

 今の俺の最大火力だ。だが、核兵器には遠く及ばない威力……。

 回数だけは、数十回は撃てるが、威力がな~。

 『ギラグレイド』を撃てるだけの研鑽を積みたかったな~。(げふん、げふん)


「さて、他の国に取られる前に進軍と行こうか。ここからは、時間との勝負だ」

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