第15話 漫画オタク_盗賊退治をする1

 砦に向かっている最中だが、途中の村に着いた。

 小休憩だ。水を補給しようか。

 ここで、村長が出て来た。


「お立ち寄り頂いたのですが……、おもてなし出来ずに申し訳ない」


 村長を名乗る老人が、頭を下げて来た。

 話を聞くと、盗賊が出るのだとか。そして、村の物資と女を全て持って行ったのだとか。今は、木の根を食べて凌いでいるらしい。カリウムの過剰摂取になるぞ?


「ちっ。衛兵どもは、なにしてんだよ。治安が最悪じゃねぇか」


 俺の独り言に、背後にいる兵士たちが反応したのが分かった。

 俺は、出発を後らせて、村の復興を手伝うように指示を出した。畑を耕した後に、軍俵の麦を畑に撒かせる。

 それと、壊れた建物の修理だな。3千人いると、復興も一日で終わりそうだ。


 手の空いている奴には、狩猟採集を命令した。肉を村人に食べさせないとな。

 俺はというと、輜重の前で座って、考えている……。待っているかな。

 盗賊が見ているのであれば、絶好の機会のはずだ。輜重の護衛が一人なんだし。

 俺に、〈スキル:索敵〉がないのが悔やまれる。

 マジシャンズレッドを真似てみるか? 『炎の探知機』なら覚えられるかもしれない。(げふん、げふん)


「へへ……。見張りは一人か……」


 考えていたら、数人が草むらから出て来た。

 革の服を着た、見るからに『ザ・盗賊』が現れたみたいだ。

 計算通り、輜重の警備を解いたら、盗賊が現れたのか。笑いが止まらない。

 数は全部で、20人かな……。

 俺は立ち上がった。兵士たちを呼び戻す必要もないな。


「おうおう。下手な抵抗はしない方が身のためだぜ?」


 盗賊の一人が、剣を俺に向けて来る。

 その剣を掴んで熔かす……。


「なっ!?」


 ワンパターンな反応だな。鉄の融点は、高々1538℃だぞ?


「……選ばせてやる。終身刑の労役に就くか、ここで焼け死ぬかだ」


 俺の質問の意図は、伝わらなかったらしい。

 盗賊が、切りかかって来た。

 それ以外は、馬車に乗り、輜重を動かそうとする……。


「なんだ? 動かねぇ?」


「車輪をロックしているんだよ。解除には、数分かかるぜ?」


 もちろん、対策はしていた。さて、倒して行くか。


「「「ぎゃあ~!? 腕が~!?」」」


 俺に切りかかって来た6人が、燃える。俺の炎の防壁を突破できる者は、この世界にいるんだろうか?

 俺は……、飛んだ。制空権……、盗賊共には分からないだろうな。


「2次元と3次元の戦争の違い。第一次世界大戦の飛行機乗りは、こんな風景を見ていたんだな……。メラ! (げふん、げふん)」


 小さな火の玉が、盗賊を襲う。俺は、後方で見学していた奴を狙った。

 その盗賊が燃える。


「なっ!? ぎゃ~!」

「「「お頭~!?」」」


 俺の魔法は、何故か必中なんだ。この世界の魔法という概念は、追尾機能があるらしい。

 そして、最近は狙ったモノ以外を燃やさないことも出来るようになった。

 盗賊狩りには、最適だな。


「メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ、メラ……。(げふん、げふん)」


 盗賊を、一人ずつ消し炭にして行く。村民を盾にして来た奴もいたが、村民を傷つけることなく、盗賊だけを燃やすことに成功した。俺の炎魔法は、敵味方の識別も可能だと理解した。

 それと、兵士たちが異変に気がついたようだ。

 残った盗賊は、なにも盗らずに逃げて行った……。

 全てが終わった後に、兵士たちが駆けつけて、生き残っている盗賊を確保した。俺は、盗賊についている炎を消す……。



 村長は泣いていた。

 泣きながら、お礼を言っている。散々に煮え湯を飲まされたんだろうな。

 それと、食料を分けることにした。


「殲滅できなかったのは、惜しかったですな」


 将兵の一人が、語りかけて来た。


「まだ、発動させていない魔法が残っている。陽が落ちたら、討伐に向かうぞ。全員に用意させておけ」


「「「はっ!」」」


 兵士たちは、驚いていたが、敬礼で返して来た。俺が、予想外の行動をとるなんて、もう理解しているんだろうな。

 当然、追跡用のトラップは仕込んである。こんなのは、漫画の定番だ。

 それに、ただで逃がす意味もないと思う。やるなら、徹底的にだ。



 陽が暮れる前に、腹を満たす。腹が減っては、戦は出来ないもんね。


「準備はいいか?」


「「「はっ!」」」


 兵士たちも、多少は使えるようになって来たか。兵士たちに頼もしさが出て来た。

 俺は、指を『パチン』と鳴らした。


 数キロメートル先の森や山で火柱が上がった。

 まあ、なんのことはない。着弾した『メラ』を時間差で発火させただけだ。着火直後に爆発させる意味もなかったんでね。(げふん、げふん)


 兵士は、4部隊に分かれた。攻め込む3部隊と村を守る1部隊だ。


「さて、実戦だな……」


 俺は、飛んで盗賊のアジトに向かった。



 盗賊のアジトでは、火を消そうと大慌てだ。

 俺の炎は、水では消えない。無駄なことを……。

 それと……、貫頭衣を着た、女性が見えた。乳房がこぼれているよ……。


 俺は、盗賊のアジトに降り立った。


「て、てめぇは!?」


「口を塞げ……。聞くに堪えない。てめぇら、もう朝日を拝めると思うなよ」


 俺は、炎の剣を作り出した。

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