第12話 漫画オタク_決闘を行う

 今俺は、コロシアムみたいな、娯楽施設にいる。

 観客席には、騎士がひしめき合い、王族も見学している。王様と王妃のババアもいるな。

 異世界召喚者はいない。結構な騒ぎになっているけど、俺に興味なし? 女子高生に心配されたいけど、彼女すらいなかった。(涙)


 そして、目の前には、この国の第一将軍がいた。


 なんでこうなったかというと、決闘を申し込まれて、受けたからだ。

 部下を傷つけられたので、大将軍さまが怒ったのだそうだ。実に面倒くさい。

 騎兵のエリート集団というのも、扱いづらいな。


 部下も部下なら、上司も上司だ。

 揃って頭が悪い。

 いや、この世界の魔導士の地位が、低いんだろうな。

 それでいて、科学技術も発達していない。


 人力による、武器での打ち合いの世界。

 その世界での、魔力の優位性を理解している俺……。


 笑いが込み上げて来る。

 その俺の笑みを見た大将軍さまが、剣を抜く。

 あれは、西洋剣だな。重さで押し潰す剣だ。


「始め!」


 審判の合図のとともに俺も魔力を解放する。

 もう、『纏』そのままだな。(げふん、げふん)


「ワンパターンが! その炎さえなければ、貴様はなにもできまい!」


 反射で剣を避ける。

 どうやら、魔力を帯びた剣のようだ。

 魔力対策を、考えて来たんだろうな。


「……正面から受け止めるか」


 俺も、炎の剣を作り出して、受けてみた。


 ――ガキン


 大した膂力だ。

 俺は、吹き飛ばされてしまった。

 体重を落としたのが、マイナスとして働いている。これからは、筋肉を増やして体重を増やそう。

 魔力で腕力を補強するが、素の身体能力が違う。

 いや、相手も魔力を筋力に変換しているみたいだ。


「流石は、大将軍……。第一将軍と言ったとこか。剣術は、そこそこ使えそうだな」


「ぬかせ! 腕の一本くらいは貰う! その後、命乞いをして貰うぞ!」


 言葉とは裏腹に、本気で殺しに来ているんだけど?

 なに考えているんだか。


 でも、いいぞ……。俺は、死合を望んでいた。

 そして、怯まない自分を確認した。目の前で殺気を放たれても、死地に立っていても、俺の心に怯えはなかった。


「俺は……、この世界で生きていけるな」


 確認できた。もう、いいだろう。

 死合を終わらせよう。


 ――パシ


 大将軍の剣を素手で受ける。手は魔力で覆われているので、切られることはない。

 つうか、刃がそもそもない。腕が折れないように強化するだけだ。


「うおおぉぉ~!」


 俺は、剣を握り潰した。熔けてもいる。

 信じられないと言った表情で、大将軍が下がった。

 剣を投げて返す。


「他に何かあるか?」


「…………」


 なさそうだ。単純な戦闘バカだったらしい。下がった時点で戦闘民族とは呼べない。つうか、その滝のような汗を見せるなよ。

 もう、興味が失せた。終わらせよう。

 失神させるのが、ベストかな?


 ――ズキ


 なんだ? 足に僅かな痛みを感じた。

 視線を落とすと、足に針が刺さっている……。

 視線を戻すと、大将軍が笑みを浮かべた。


「象ですら、動けなく麻痺毒だ。これから、一方的にボコボコにしてやる。覚悟しろよ」


 大将軍が、ボロボロの剣を取った。まあ、ハンマーにはなるか。

 それにしても観客の中に、暗殺者を紛れ込ませていたのか。

 形状的に、吹き矢かな? 距離的に、結構な命中率かもしれない。

 まあ、興味ないけど。


「……くだらない」


 俺は、纏っている炎を全開にした。

 針は、足の脛に刺さっていたので、その部分も焼く。


「な? な?」


 目の前の大将軍を睨みつける。

 もう、手加減する理由もなかった。


「あんたも、一兵卒なら使えたかもしんないが、司令官としては下の下だ! あの世でもう一度訓練し直して来い!」


 俺は、右手を向けた。


「メラ……。(げふん、げふん)」


 小さな炎が飛んで行く……。

 次の瞬間に、大将軍は炎に飲まれた。盛大に燃え上がる。雲まで届く炎が出来上がった。

 その炎が、10秒程度で消えた。

 大将軍は、手足以外を消滅させていた。燃えた胴体は、灰すら残っていない。


「やっと、初級魔法を覚えたって感じだな。それも一番簡単な魔法だ」


 この魔法……、メラなら、数百発は撃てそうだ。(げふん、げふん)

 それは、俺が戦場で倒せる数を意味する。


「敵が数千とか数万であれば、俺は無力だ。ガス欠で殺されるのが落ちだろうな。まだまだ……だ。こんなんじゃ、戦場には行けない」


 大将は、レベル1でも戦場に向かってくれたんだ。

 俺は、修練する時間を貰っている。今のままじゃ、顔向けできない。


 周囲を見渡すと、全員が黙っていた。

 審判を見るが、腰を抜かしている。

 俺は、コロシアムを後にした。


「次は、範囲魔法を覚えないとな。それも連発出来なきゃ意味がない。ギラ系かイオ系か……。(げふん、げふん)」


 レベルカンストには、程遠い。

 これでは、皆に合わせる顔がないな。


「まあ、まだ転生して数日だ。焦らずに行こう」





 大魔王バー○のメラを想定して書いています。

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