第7話 知識オタク_砦に向かう2

 10日ほどで、目的地の砦に着きました。遠目から確認です。それと、森に紛れて身を潜めています。おそわれたくないですからね~。

 だけど、砦は敵軍に包囲されていますね~。

 これでは、荷物を届けられません……。


「これならば、炎魔法使いの稲葉君か、空間魔法使いの若槻君に来て貰うべきでしたね」


 今更ですね。だけど、このメンバーで考えないといけません。


「どうやったら、届けられるのでしょうか……」


「貴殿は……、このような状況でも砦に向かうつもりか?」


 中隊長を見ます。


「行かないのですか?」


「いやな……。普通の人であれば、あの状態の砦を見ると尻込みするものだ。それを鼓舞するのが、隊長の役目なのだが……」


 随分とホワイトな部隊ですね。令和の企業の方が、よほどブラックと感じますよ。これでも戦時下の国なのでしょうか?

 受けた仕事は、熟しましょうよ。


「ちょっと、出かけて来ますね。包囲が解かれたら砦に駆け込んでください」


「なにをする気だ?」


「嫌がらせ……、ですかね」





 〈透明化〉を発動させて、敵軍の陣地を観察して行きます。

 気は抜きません。音も匂いもあるんですしね。足跡にも気をつけます。

 完全防御じゃないんです。

 一度のミスが、即死亡に繋がる……。私に油断はありません。


『ここにありましたか』


 食料貯蔵庫を見つけました。

 残念なことに、油などの可燃物は近くにありません。

 管理がしっかりしているな~。


 だけど、牛や馬は多い……。


『攻城戦に、馬は必要ないですよね。この後のことを考えているのでしょうか……。騎馬隊を連れて来た意味……』


 武器庫も見つけました。サーベルを一本拝借します。

 これだけで、どんな戦法を使うのかが分かります。私の戦争知識は、近代から古代まで幅広いのです。

 だけど、油がありません。松脂まつやにみたいなのはあるけど、液体でないと燃え広がりません。

 とりあえず、夜まで待つことにしました。



 陽が落ちると、兵士が戻って来ました。

 数千人はいますね。各人が鍋料理を始めました。


『調理人は、いないのですか。食材を受け取り数人で鍋を囲む……。非効率ですね~』


 この世界の軍人の様子を確認出来ました。

 これは、大きな収穫です。


 次に私は、指揮所と思われる、大きなテントに向かいました。

 そっと中に入り、人の来るのを待つことにしました。

 明かりを持った5人が来ました。

 その5人が、円を描くように座ります。


「まだ落とせそうにありませんが、包囲しているので時期に音を上げるでしょう。あの砦は、もう手中にあるとお考え下さい」

「補給部隊は? もしくは、援軍だな」

「近くに到着しているみたいです。連絡は入っています。探して襲撃致しますか?」

「いや、包囲に穴を開ける必要はない。このままで行こう」

「同意見だ。砦を落とすことが最優先だな」


 良かったです。補給部隊は、襲われなさそうです。

 テントにいるのは、5人……。

 私は武器庫を見つけて、剣も佩いている……。日本刀とは違いますが、サーベル形状のモノを拝借しました。


『行けそうですね……』


 私は、居合抜きを放ちました。一番偉そうな人物の首がズレます。

 学生の頃、親に強制されて居合術を習いました。

 中学生になり、剣道部に入るけど、それはそれは使えないこと……。

 一年で辞めてしまいました。

 だけど、異世界でなら使えそうです。


「えっ? 将軍?」


 他の将兵たちが、驚いています。思考が追い付かないみたいです。

 その隙を見逃す理由もありません。

 私は、バッサバッサと切り捨てて行きました。

 その間、3秒でしょうか。私も、まだまだです。『雷の呼吸』の使い手なら、1秒以下ですね。(げふん、げふん)

 イメージしてみましょうか。実現出来るかもしれません。

 う~ん、複数相手であれば、手数の『九頭龍閃』がいいのでしょうか?(げふん、げふん)


「良かったです。外に異変は漏れていないようですね」


 瞬時制圧出来たようです。

 それと、剣は血のりで使い物にならないですね。どんな名剣も5人と切れない――らしいです。


「やはり、実戦であれば、槍なのでしょうか……」


 私は、サーベルをテントに置いて、陣から離れました。





 やっと、輸送部隊の元に帰って来れました。夕食時だったみたいです。

 私も食べていないので、ナイスタイミングです。


「池上殿……。偵察はどうでしたかな?」


「敵将と思われる5人を、倒して来ました。明日は、統率が乱れそうなので、突入の準備をお願いいたします。余裕があるのであれば、夜襲がいいかもしれませんね~」


「はえ?」


 それと、肉の塊を拝借して来ました。牛肉の肩部位だと思われます。肩ロース?

 正直、熊肉は臭くて硬かったです……。調理次第なんでしょうが、材料がまるでありません。焼くか煮るだけです。


「さあ、食べてしまいましょう」


 私は、肉を切り分けて、鍋に入れました。

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