第6話 知識オタク_砦に向かう1
「乗馬も慣れて来ましたね~。思い通りに進んでくれます」
「池上殿。馬の歩法には『
「承知しました。でも賢い馬ですし、駆歩までなら大丈夫そうですね~」
2日程度で、乗れるようになりました。
どうやら私の職業は、知識として吸収したモノを発現出来るようです。それは、前世の知識であってもです。乗馬は教えて貰えたので乗れるようになりました。
水泳とか、試してみたいな~。
本音を言うと、襲歩であっても見せて貰えれば、覚えられそうです。
ちなみに、〈透明化〉による暗殺は、映画を参考にしています。
これ……、もしかすると漫画やアニメなんかの動作も、再現出来るかもしれません。後で、検証してみましょう。可能ならば、アニメの動きをトレースするのが、映えますね~。
今度は、『人斬り抜刀斎』の動きを試してみましょうか。(げふん、げふん)
お尻も、スキルの〈変身〉で〈治療〉すれば、すぐに痛みが引きます。
スキルと魔法は、便利ですね~。前世でも欲しかったです。
そのまま、数日。
途中で、騎士が鹿を狩って来ました。
荷馬車を止めて、解体が始まります……。聞いてみますか。
「急いで戦場になっている砦に、向かわないのですか? 都度、狩猟採集を行っているように見えるのですが……」
「我々の食料は、支給されていないんだよ。道中での自力での補給が求められるのだ」
アホなのでしょうか……。効率が悪すぎます。
この数日で、食べられる野草も確認しました。
道も一本道だと言いますし。
「ちょっと、私だけ先行してもいいでしょうか? 食材を集めて来ます」
隊長と思われる人が、相談を始めました。
「……いいだろう。ここで逃げても、近くに街などないからな。貴殿なら、盗賊に身を堕とすとも思えない」
話の速い人は、助かりますね。
馬を早歩きさせて、先行します。
1時間程度進んだ所で、馬から降りました。
馬を樹に繋ぎます。
「この辺でいいでしょう。さて、狩猟採集ですかね」
乗馬で長時間同じ姿勢だったので、体中の関節を動かします。凝り固まった全身が解れました。
なにが起きるか分からない世界。用心に越したことはないですよね。
私は、〈透明化〉を発動させました。
「これも食べられますね……」
採集の方は、問題はありませんでした。
私には、植物の見分けがつきます。こんな時に、田舎の祖母の教えが生きて来ますね。
「社畜として生きるのではなく、田舎で畑でも耕していた方が、良い人生だったのでしょうか……」
人生の後悔が、襲って来ました。
異世界に来て、後悔するとは……。
――ガサ
ここで、音を拾いました。
動物かな? その方向を見ます。
「……熊ですか」
〈透明化〉を発動させているので、私は見えないと思うのですけど、気配を察知されている?
熊は、臨戦態勢ですね。
「う~ん。どうしましょうかね~」
長高3メートルは、ありそうです。数百キログラムなんて、持てませんし、運べません。
私は、採った野草を抱えて馬の元へ向かいました。
「はあ、はあ……。キッツイな~」
この歳で、全力疾走ですか。
見た目だけでなく、心肺機能の強化でもしてみますか。中身の若返りも必須ですね。
街道に出た所で、熊に追い付かれました。
結構、距離があったのにこんな一瞬で追い付くのですか……。私は、姿を消しているというのにね。
まあ、愚痴っても仕方がありません。
私は、野草を手放し、熊の突進を躱しました。
「見えてはいないみたいですね~。音か匂いか……」
熊は、私を一瞬見失ったので探っています。
私は、熊の背中に触れました。
――グシャ
熊が倒れます。
手足を、曲がってはいけない方向に〈変身〉させます。肩肘膝の関節が、外れましたね。
「ふむふむ。触れる必要がありますが、便利な
魔法や
異世界モノの定番ですね。
ハズレ認定されそうでしたけど、使ってみるとなかなかに有用でした。まあ、ハズレ認定は、自分で行ったのですが。
その後、熊の首に剣を刺しました。血だまりが出来て行きます。
「さて、解体はお任せしますか。でも血抜きは必要ですよね……」
私は、わきの下と内股の太い血管を切断しました。
1時間程度で、輸送隊が追い付いて来ました。
街道まで、熊を誘導して倒したので、時短になりましたね。運ぶ手間が省けました。細切れにして運ぶなんてのは、私には出来そうにありませんでした。
護衛隊員は、熊を見て驚いていますよ。
「狩猟採集しておきました。お納めください」
「は、はい……」
輸送隊が、止まりました。
熊の解体に取り掛かり始めましたよ。
「いいのですか? 馬車だけでも先に進ませた方が、時間短縮になりませんか?」
「それで襲われて、荷を奪われては本末転倒だ」
彼等にも経験があり、今の進行速度なんでしょうね。
私は、お邪魔している立場なので、情報を得る方向で行きましょう。
「それでは、水を汲んで来ますね」
私は、桶を借りました。
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