第4話 知識オタク_盗賊退治をする

 朝日が昇ると、呼び出されました。

 馬車に乗せられて、移動開始です。輸送部隊みたいです。


「サスペンションのない馬車は、振動が凄いですね……」


 腰を悪くしそうです。

 途中で、乗馬を教えて貰うことにしました。

 あぶみがあり、大人しい馬を選んでくれたので、乗る事は出来ました。

 だけど、数時間でお尻が、もの凄く痛くなってしましました。


「異世界……。移動だけでも慣れないですね」


 自分のお尻を〈治療〉します。一時間に一度のペースで〈治療〉して行きます。これ、慣れるんですかね……。


 日が暮れたので、夕食です。昼食はありませんでした。

 朝食は、とても質素だったので、お腹が空いていましたよ。


「鍋料理ですか……」


 夏なのか分からないですが、かなり高温多湿な土地です。


「食中毒は、避けたいのでね。全ての食材に火を通す。無理にでも食べて貰うが? 味は、期待しないでくれ」


「ありがたく、頂きます」


 味付けは、塩のみ。胡椒が欲しいですね。

 ですが、コンビニ食で生活していた私には、新鮮に感じます。

 そうでした。味ってこう感じるんでしたね……。

 異世界定番かもしれませんが、食の改善も期待しましょう。あの3人なら可能でしょうし。残りの人たちもチート持ちがいそうです。あのヤンキーさんが、料理人だったら笑えますね。


 食事の後は、火の番と野営を兼ねて、ローテーションを組んで寝るのだとか。

 私は免除されていました。まだ客人扱いの様です。


 まだ異世界生活、2日目。

 自ら望んだことですけど、令和の世界で、エアコンに慣れた体には、堪える生活です。



 目が覚めました。

 夜中だけど、音が聞こえます。

 馬車から出ると、戦闘していますよ。


「どうゆう状況ですか?」


「起きたのか? 盗賊に襲われている!」


 滅亡に直面した国で、盗賊ですか……。他の豊かな国に行きなさいよ。

 私は、落ちている剣を拾って、〈透明化〉を発動させました。


 狙うのは、後方で傍観している奴ですね。お頭もしくは頭領――だと思います。

 そっと近づき、喉を切り裂きました。


「ぐは!?」


 盗賊が、喉を抑えて倒れます。


『私は……、殺人を行っても大丈夫そうですね。相手が、クズというのもありますが』


 手の震えも出ませんでした。血を見ても、匂いにも怯むことはありません。

 多分ですが、異世界召喚時に精神も作り変えられたと考えるのがいいんでしょうね。他の人たちも同じと思いたいです。


『戦国の世に、人を切れない人材を召還する王族とかでなくて、良かったです』


 周囲に展開していた、盗賊の護衛が騒ぎ出します。頭から潰されていますからね。次は、誰が指示を出すのでしょうか。

 私は、ぶつからない様に、その場から離れました。


『次は、弓兵かな?』


 そっと近づき、また喉を切り裂きます。

 弓兵は、3人いました。2人が即座に反応して、距離を取りました。


『戦闘に関しては、優秀なんですね~。国の防衛に協力して欲しいですね~』


 それと……、私の武器を考える必要がありますね。経験から、日本刀が欲しいです。


 盗賊達は、数分後に陣形が崩れました。

 指揮官のいない20人程度の盗賊など、こんなもんですかね。

 10人の死体を残して、闇夜に消えて行きました。


 私は、〈透明化〉を解除しました。

 兵士が、寄って来ます。


「凄いのだな。異世界召喚直後なのに、人殺しに躊躇いがないとは」


 改めて、言われて気がつきました。

 何も感じない……。

 私は、こんな人間だったんですね。前世では、暗殺者が適職だったのでしょうか。良くて、傭兵くらい? 戦国の世なら、名を上げられていたのかもしれません。


『異世界召喚の影響じゃなかったら、怖いですね~』


 イジメを受けた経験があります。

 反撃したら、不良共は退散して行きました。私は、幼少時に剣術を習っていました。

 椅子を持って、教室で振り回したら、『危ない奴』と思われたのでしたっけ。だけど、数人の友人は残ってくれました。

 まあ、不良共が教師に呼ばれて、大事になったのが良かったのかも知れないです。

 平成の話です。令和の学生には、理解されないでしょうね。


「どうします? 盗賊を殲滅して来ますか?」


 私の言葉に、騎士たちが絶句していますよ。





 夜道ですが松明の明かりを頼りに、盗賊の足跡を辿って行きます。

 〈透明化〉で、松明の灯りも他人には見えないはずです。

 そして、粗末な集落に辿り着きました。


 盗賊たちは、怪我の手当てをしています。

 そっと近づき、聞き耳を立てます。


「お頭は、どうして殺されたんだ?」

「分からない。いきなり喉から出血した」

「他にも一人、同じく死亡した奴がいたぞ? 魔法じゃないのか?」

「そんな危ない魔導士なんて、聞いたことがないぞ?」


 この人たちは、レベルが低いですね。異世界召喚を知らなさ過ぎます。

 話を聞く価値がないと判断して、私は集落を散策することにしました。

 そして、食糧庫を見つけました。結構溜め込んでいますね。穀物だけで、一年は過ごせそうです。どれだけの、悪事を働けば、ここまで備蓄が増えるのでしょうか……。


 その後、油を撒いて、火をつけました。

 盛大に食糧庫が燃え上がります。

 盗賊たちは、眠ろうとした時だったので、大慌てですね。


 ここで、暗殺してもいいけど、もっと苦しんで貰いましょうか。

 私は、輸送隊に戻りました。



「あの燃えている所が、盗賊のアジトになります。朝日が昇ったら、襲撃に行きますか?」


 私の言葉に、騎士たちが絶句していますよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る