第3話 オタク仲間_意気投合する

「それはで、私は後衛職で、兵士の治療に当たりましょうか」

「いや、大将には実績が必要だ」

「っと、言うと?」

「戦争中っぽいからな、攻めれらている砦に行って、敵軍を撤退させて貰いたい」


 無茶苦茶な依頼ですね~。


「……〈透明化〉で暗殺ですか? 敵将を暗殺して行けと?」


「話が早くて助かる」


 やれやれ、一番危険な役割ですね。だけど、彼等のレベルアップ前に王都が落とされたら全てが終わりです。

 遅滞行動は、必須ですね。状況的に、最優先事項でもあります。

 そして……、私ならば可能と思えます。


「承知しました。物資を受け取ったら向かいましょう。でも、その前に移動手段の確認ですかね」


 3人が、笑顔を見せてくれました。僅かな言葉で、全員が理解出来る。知力の近い集団というのも頼もしいですね。

 話は、ここまでとさせて貰いました。

 最後に自己紹介です。本当は、最初に話すはずですけど、各人の知識レベルを確認してからにしたんでしょうね。


「俺は、稲葉だ。〈炎魔法〉の使い手だ。趣味は、漫画・ゲームだった」

「僕は、若槻です。〈空間魔法〉の使い手です。趣味は、読書というかラノベですね。文字愛好家でしょうか。ストーリージャンキーが近いかな? 活字中毒や本の虫で通じますか?」

「ワイは、鈴木だ。〈金属魔法〉の使い手だ。ミリタリーマニアであり、サバゲ愛好家だ。それと、科学雑誌を愛読していた。ネイチャー(Nature)で通じるか? 専門は、機械工学だ」

「え~と、池上です。スキルは、〈透明化〉と〈変身〉です。趣味は、ネットサーフィンでしょうか。まあ、皆さんと同じでオタクに分類されるんでしょうね。漫画・アニメ・ゲーム・ラノベ・ミリタリー全て浅く網羅しています」


「「「流石大将だ。俺たちの知識を全て網羅するその知識。当てにしているぜ!」」」


 オタクの四人で握手を交わしました。

 年の離れた、友人が出来たみたいで、嬉しかったですね。





 その後、16人と合流します。

 彼等は、この世界の常識を学んでいたみたいです。

 ボコられたヤンキーさんが、更に酷いことになっているので、皆従っているんでしょうね。


『彼は、読書量が足らないんでしょうね。異世界モノを読んだことが、ないのでしょう。これ以上逆らうと、追放処分か、最悪処刑ですよ? 助けた方がいいかもしれません』


 他の3人は、彼を無視して席に着きます。

 私も席に着いて、講義を聞くことにしました。

 時間的に、30分遅れた程度です。

 何の問題もありません。


 黒板に見慣れない文字が書かれていますが、読めますね。異世界定番の〈自動翻訳〉なのでしょう。手帳にメモって行きます。スマホで写真なんて無粋なことは、しません。

 そういえば、普通に会話出来ていたのを今思い出しました。


 まず私が目に付いたのが、転生であること。異世界転移と思ったのですけど、どうやら、この世界で肉体を再構成したらしいです。異世界転移と異世界転生……。結構大きな違いですね~。


「ナーロッパそのままだな。今の最大の課題は、乗馬かもな~」


 稲葉君が、呟きました。私とは、着眼点が違うようです。彼は、過去には興味がないみたいですね。

 この場合は、前世でしょうか。戻れるかどうかはモチベーションに繋がると思うのですが……。


「元の世界に帰るためには、五ヵ国の国宝を集める必要がある。そのためには、終戦が必要なんだ!」


 講義してくれる騎士さん……。熱弁を振るっています。ですが、説得力がないんですよね~。

 『他国の国宝を集める』……、この時点で疑わしくなってきました。


 それと移動は、馬車でもいいと思いますが、戦争に行くのであれば、乗馬は必須スキルではあると思います。

 逃走経路の確保がないと、生き残れませんからね。

 まあ、鈴木君が、乗り物を発明してくれるのを祈りましょう。


 更に話を聞くと、セントラルガルドは、四ヵ国に狙われているのだとか。

 今、戦端が開かれているのは、隣国のサンドランドだそうです。方角的に南ですね。

 他三国とは、同盟中なのだとか。

 同盟期間が切れたら、攻められるんでしょうね。いえ、隙を見せたら攻め込んで来るのが戦国の世です。


「ここまでで、質問はあるか?」


 鈴木君が手を上げます。


「航空戦力は、あるか? ワイバーン部隊とかだ」


 教官が、絶句していますよ。


「サンドランドが、主流だ。貴重なので、他国は連絡用に用いる程度だ。戦場には駆り出さない」


「……古代から、中世の戦争か。時間さえ稼げれば、なんとかなるかな~」


 鈴木君の言葉に、全員が絶句しています。

 いや、私を含めた3人は、納得した――かな?





 講義が終わったので、私は責任者に面会を求めました。

 戦争の遅延であれば、初動で決まるかもしれません。砦に辿り着いた時に、陥落していては、手遅れですし。


「物資が欲しい? その後に、戦場に行くと?」


「話し合ったのですが、私は出来るだけ早く戦場に向かった方がいいようです」


 騎士――教官は考えて、王族に相談すると言って去って行きました。



 個室を貰えたので、休んでいると、ノックが鳴りました。

 ドアを開けると、教官がいます。

 部屋に入れて、2人で話すことにしました。


「どんな装備が、欲しいのだ?」


「ナイフを数本と、防具ですね。革鎧と篭手、脛当て、兜ですかね? 鎖帷子は避けたいです。重装備も。それと、サーベルがあったら見せてください」


 音の出る装備と、重量のある装備は望みません。私には不向きです。


「貴殿は、戦場の経験があるのか?」


「ないですよ? 知識があるだけです」


 格闘技経験は、居合術を少々。でも、古流日本の武芸など、誰も理解してくれないでしょうね。

 教官が考え出します……。


「明日の朝……、砦への補給部隊が出発する。そこに紛れるといい。部隊長には、私から話しておこう。武器防具は、砦に着いてから、好きなモノを選ぶのでどうだ?」


 ……信じてくれるのですか。


「それでお願いします」



 教官を見送った後に、再度、オタクの4人で集まります。


「私は、明日出発します。とりあえず、戦争の遅滞行動を目的として来ますね」


「「「……女風呂の覗きには、行かなかったのか?」」」


「そんな歳じゃないんですよ」

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