第2話 オタク仲間_集まる1

 その後、ヤンキーと呼べそうな人物が前に出て来ました。

 改造学ランというのかな?

 私の時代であれば、多くいましたが、令和の学生でもいるのですね。

 そのリーゼントは、時代錯誤と言わざるを得ないんですけど……。


 そのヤンキーが、騎士に殴りかかりました。

 瞬時に制圧されています……。

 ボコボコですね~。頭が、悪すぎます。本当に、令和の学生なのでしょうか?


「畜生! なんで、テメーらだけチート持ってんだよ!?」


「まず、測定を受けろよ。スキルを確認してからが、基本じゃね? 魔法系か、格闘系かも分からないんなら、尚更だ」


 君たちが、その基本を無視したから、ヤンキーさんみたいな人が出て来たとの、突っ込みはいれません。

 そのヤンキーさんが、引きずられて測定を受けました。


「どうなってんだよ? 最大値が200だぞ? 差があり過ぎじゃねぇか?」


 う~ん。前の世界で努力して来なかったのが、目に浮かびます。

 その後、他の人たちも測定を受けて、グループを作り雑談を始めました。



「一通り終わりましたね。それでは、食堂に移動しましょうか」


「待ってくれ」


 ここで、黒い炎の使い手が、王族の話を遮りました。

 王族の女性は、顔の血管をヒクヒクさせていますよ。流石に、ここまでテンプレから外れた異世界召喚もないんでしょうね。


「俺を含めた4人は、自由行動を許可して貰いたい。今だけでもいい」


 王族の女性は、顔を真っ赤にさせています。怒り心頭ってとこですね。


「……分かりました。特別待遇といたしましょう」


 でも、折れるのですか。大人な対応ですね。

 そして、正解でもあると思います。


「そんじゃ、さっきの3人とで話がしたい」


 でも、3人?

 2人は分かるんですけど……。

 黒い炎の使い手が、私を見ました。


「おっさんは、反対か?」


 どうやら、私も含まれていたみたいです。動揺しなかった4人だったみたいですね。

 見抜かれていましたか……。

 私は彼等を見ていましたが、私も見られていたんですね。ニーチェの言葉が、思い出されます。





 別室に案内されました。調度品とかを見るのですが、来客室だと思われます。

 テーブルを囲み4人で座りました。


「さて、盗聴されていそうだから、簡単な意思合わせで終わらせようぜ。短時間にしないと、他の奴らに不信を持たれそうだ」


 ふむ……。頭が切れる青年みたいですね。

 でも、もう不信は持たれているんですよ?


「俺は、〈炎魔法〉を持っている。MP(魔力)は1000だ。この後は、騎士たちの訓練に参加予定だ。とにかく、攻撃力を極める予定でいる」


 2人が頷く。


「僕は、〈空間魔法〉の使い手です。〈転移〉〈転送〉〈収納〉を持っています。あの16人は、僕が指導します。凌辱とかされたら、全員での帰還は不可能になりますからね。任せてください」


「なにをするつもりだ?」


「内政を手伝います。とりあえず、物資の量産ですかね。そうすれば、あのババアも納得するでしょう」


 他の2人が頷きました。この青年も先が見えていますね。

 それに、人を率いるタイプみたいです。学級委員長?


「ワイは、〈金属魔法〉だ。さっきは、兵士の槍と鎧を捩じった。金属を魔力で生み出す事も可能だ」


 そう言うと、黄金色の金属を、手から生み出しました。


「砂金か?」


「ああ、そうだ。ワイは……、そうだな。銃器を作ろうか。火薬の変わりに魔力がいいだろう。最終的には、戦闘ヘリコプターを設計してみる。戦争の終結が目的だからな。ワイは、この世界の戦争を学ぶことから始めて行くよ。図書室に篭るとこからだな」


「さっき窓から見たんだけどさ、移動が馬頼りみたいだからさ、銃よりトラックが欲しいな」


「……ほう? 分かった。任せてくれ」


 頼もし過ぎますね~。

 最後に私ですが……。期待の視線が、痛いです。


「え~と、ステータスは低めです。スキルは、〈変身〉が目に付きますね。魔法は、〈透明化〉でした」


 3人が考え出します。


「「「〈透明化〉を使って貰えるか?」」」


 イメージすると、「おおお!」という、歓声が上がりました。

 自分の手を見ます。透けていますね。服も透けているので、脱ぐ必要もないみたいです。使い勝手はいいかもしれません。

 とりあえず、〈透明化〉を解きました。


「〈変身〉ってのは?」


 まだ、検証もしていないんですけど……。

 部屋の鏡を持って来て、テーブルに置きます。

 魔力を活性化させて、自分顔を触って行く……。

 これ、あれですね。某有名漫画のクヌム神――そのままですね。(げふん、げふん)

 使い方が分かれば、応用も利きそうです。


「若返ってね? おっさんも、若い頃は、イケメンだったんだな」


 私の若い頃は、こんな顔ではなかったとは言えません。

 皮膚を若返らせて、形を整えただけです。

 それと、気になっていた、薄毛も治して行きます。これで、20代に見えるでしょう。もう一つ、視力を回復させます。眼球が延びて楕円形になっているのを、矯正しました。眼鏡が不要の生活は、嬉しいですね~。

 それを見た、3人が驚きを隠しません。


「なあ、そのスキルって他人にも使えるのか?」


「試してみますか?」


 結果として、他人の怪我をして毛の生えなかった箇所にも、毛を生やすことが出来ました。10円ハゲでも治せてしまえましたよ。


「身長は伸ばせるのですか?」


 次の質問が来ました。まったく、想像力の逞しい青年たちですね。

 言われるがまま、彼の脛の骨を10センチメートル伸ばします。感覚が慣れるまでは、走らない方がいいと伝えました。


「なあ、腹の脂肪って消費できるか?」


 これは考え物ですね……。


「脂肪細胞を死滅させると、二度と太れませんよ? それと、即効性はないでしょう」


「それでも、頼みたい」


 私は、彼の肝臓と腹の脂肪を糖質に変化させました。脂肪細胞は、二度と生れないので、彼の腹が膨らむこともないと思います。体にいいのかどうかは、私には判断できません。


「おっさんは……、もしかして〈治療〉もできるのか?」


 想像力が、凄まじいですね~。

 炎魔法の彼は、火傷をしていたみたいです。まだ、制御がおぼつかないのでしょうね。

 手の皮が、火傷で爛れています。痛みを見せないのは、凄まじい精神力と言えますが。

 私が、魔力を送ると、彼の皮膚が再生しました。


「ふむ。〈治療〉も可能みたいですね。指を生やすことが出来れば、前世以上の技術になりますね~」


 可能か不可能かで言えば、可能だと思ってしまいます。魔法は、想像力が大事ですよね。


「「「おっさん! あんたが俺たちの大将だな!」」」


 どうやら、認められたみたいですね~。追放枠でなくて良かったです。

 それにしても、私が大将?

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