第28話 インタビュー2
「それでは続きまして、しろねこさんにお聞きします」
「はい」
「グループ最初の曲はしろねこさんの作曲でしたが、作曲されるんですね」
「まあ、前から自分の曲は自分で作っていましたし」
「そうでしたか」
しろねこは、調べてないんだとも言いたげな口調だった。
「次に、イラストはセンターになっていましたけど、ライブもしろねこさんがセンターですか?」
「まだそこまでは話し合ってないんですけど……」
「やっぱりしろねこさんですか?」
「だから、まだ決めてないですって」
実際はしろねこがセンターという方向で進んでいるが、さすがにそれをここで言うのは少々問題がある。このインタビューは波風立てずに当たり障りのないものにしようと、セククロ側が決めたというのに。この記者相手にはもう無理かもしれない。
「では最後に、アンリリがあってからの、セククロということですが、どのような気持ちで臨みますか?」
「アンリリは二人だけでやっていたようなものですけど、セククロは事務所も含めて色々な人が関わっています。そういう自覚を持って、頑張りたいと思います」
「ありがとうございました」
しろねこには言いたいことを言えないような、何だか変な空気で質問していた。だがそれは、しろねこが唯一の大手だからだろう。残りの二人に対してはもっと心無い質問をしてくるだろう。
「それでは次に、さくらさんにお聞きします」
「はい」
「Star×Lightから衝撃的な卒業でしたが、それについて何か言うことはありますか?」
「いや、別にもうボクから話すことはないですけど」
Star×Lightというのはさくらが地下アイドル時代に所属していたグループのことだ。ライブで急に脱退が発表されて確かに衝撃的ではあったが、理由は新たな夢のためだった。それ以上は聞くなと言っていて、それ以前にメンバーの不祥事があったため、おそらく理由はそれだけではないだろう。
「こう……またグループでアイドルをすることになって、どう思っていますか?」
「えっと……どうって言われても……」
「卒業の際、自分で言ったこと。これが夢、ですか」
「いや……でも、自分にとってはセククロに入ることになって、そっちの方が大事で、それくらいの夢ですから。あの時の夢とは違っても、ここが今のボクの居場所です」
「なるほど」
逆にその考えていた夢が気になるところだ。
「では最後に、アイドルとしてステージに立った経験のあるということで、何かメンバー内でアドバイスみたいなことはしましたか?」
「アドバイス……あんまりそういうことは言ってないですかね。ボクも言えるほど経験があるわけじゃないし……まだあんまり、いざライブって感じのレッスンまで至ってないのもあるんですけど」
今は主に玲人がアドバイスをしている。オリジナルの振付は玲人が考えたものがほとんどで、本人がいるならそれが一番いい。
「まだそこまで行けてないって、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。レッスンはしているので」
「そうですか。ありがとうございます」
さくらもさすがに変な質問には慣れているようで、ボロらしいものは無く終わった。
「では最後に、シキさんにお聞きします」
「はい」
「まだ歌い手として他のメンバーに比べて活動を始めたばかりだと思いますが、その辺はどうですか?」
「あんまり活動歴とかは気にしてないと思います。自分では気にしてないし、結局一緒にやってく仲間なんで」
短いとは言うが、実際は転生しているらしいので、おそらくそれほど短くはないだろう。だから気にするようなこともない。そもそも短くても気にしたりはしないが。
「なるほど。では、シキさんは今高校三年生ということで、進路について考える年にもなっていると思うのですが、その辺は大丈夫ですか?」
「あぁ……大丈夫です」
記者はそう簡単に行くわけがない、と思っていそうな顔をしていた。
「まあ、もっと真剣に考えないといけないかもしれないですけど、今やりたいことがこれなので。オレにとって、これ以上ないチャンスっていうか、今しかできないことなので、それは大切にしたいんです」
「そうなんですね」
これ以上ないチャンスだということは、全員共通だろう。だが、高校三年生で踏み出したシキは本当にすごいと玲人は改めて感じた。
「それでは最後に、セククロでの意気込みなどあればお願いします」
「そうですね……オレが一番初めましてっていうリスナーさんが多いので、そんな人たちに推してもらえるように、精一杯頑張りたいと思います」
「ありがとうございました」
これで全員への質問が終わった。
「これにて、インタビューを終了とさせていただきます。これからのご活躍を楽しみにしています。まずはワンマンライブ、頑張ってください」
「ありがとうございます」
そんな挨拶でインタビューは終わった。
「無事に終わったね」
取材陣と別れると、こはくがそう呟いた。
「でも結構食い気味だったよな? 質問」
「わかる。なんで前のグループのこと聞かれないといけないわけ?」
シキの一言に、さくらは少し怒った様子でそう言った。
「さすがに僕もあんなマジレスされるとは思ってなかった。ガチのニートは事実だけど、普通キャラ付けだと思うでしょ……」
「こはく、あれガチだったんだ」
こはくの急な告白に玲人は驚いてそう言った。
「あ……うん。しろねこにしか言ってなかったけど、ガチで家から出てない。学校にも行ってない」
「そうなんだ……」
だがそう言われて何か変わることはない。グループにとっては普段何をしていようが、それがグループに影響がなければ気にすることではない。
「まあ、所詮歌い手なんて、って思ってそうな気はした」
変な空気になったので、しろねこがそう言って話を戻した。
「見くびられてるってこと?」
「そうかもね。でもまだ何もやってないし、しょうがないよ」
「そっかぁ……」
さくらは少し落ち込んでいた。
そんなことを練習着に着替えながら話し、五人はレッスンルームに向かった。
それからストレッチを始めると、部屋に白夜が入ってきた。
「みんなお疲れ様」
「取材の人たち、帰りました?」
少し話をしたり、片付けを手伝ったりするから、先に始めておいてと言われていたので、それが早かったと思った玲人は白夜にそう聞いた。
「いや、まだ。でも、話したいことがあって、夕真に押し付けてきた」
「また怒られるよ」
しろねこは白夜に一言そう言う。白夜には刺さっているようだった。
「……まあ、大丈夫だって。今回は特別だから」
「特別?」
「そう。特別な話」
ならいいか、としろねこはストレッチを続けた。
「真面目に、今後のことで話がある」
「今後のこと、ですか? 僕たちの」
「うん。だから、真面目に聞いてほしい」
ここまで言われると、どんなことなのだろうと興味が湧く。
「今度、歌番組に出ないかっていう話があって……」
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