第10話 企画会議

「よし、みんなの実力は見せてもらった。ハッキリ言うと、想像以上にできていたと思う。歌の方は加工で上手く見せてるわけじゃないって確信が持てた。ダンスはよっぽど運動音痴じゃなければいいから、今回はそれなりにできてたし、練習すればもっとできそうな感じがした。一応、基本的に振り付けはAriaにやってもらおうと思ってるんだけど、Ariaもなんとなくレベルはわかったんじゃない?」

「そうですね」


 Ariaはそう答えた。


「とりあえず、今日の練習はここまでで、あとは企画会議とかに使ってほしい。明日は一応何かやろうとは思ってるけど、平日だから来れる人だけでいいよ」

「わかりました」

「じゃあ、お疲れ様」

「お疲れ様です」「ありがとうございました」


 白夜がレッスンルームから出て行って、部屋の中はセククロの五人だけになった。


「えっと……企画会議、やろっか」


 凛は勇気を出して静寂を破り、リーダーとして話の主導権を握りに行く。


 セククロが何をするかといったことはメンバーがやりたいことをやるという想いから、白夜たちは凛たちに企画を任せると言っていた。お金がかかることや、ライブなどの大きなイベントは契約を結んで収益の一部を貰っているのでさすがにやってくれるだろうが、グループとして出す動画の内容にまで口を出したりはしない。一応投稿する前に中身は確認するが、社会的に問題ない内容なら特に何も言われない。


 そんな状況なので、企画会議は定期的に開催されるだろう。


「そうだね。発表の前に色々準備しておいた方がいいと思うし、この前みたいに突発的にやってるだけじゃ続かないだろうしね」


 Ariaはそう言って凛の話し合いに乗っかる。そして全体が企画会議をする流れになり、全員で案を考える。


「まあ……とりあえず、歌ってみたはやりたいよね? 本職っていうか……」

「そのためのグループっていうか、それをしないなら歌い手である理由がないし」


 凛とシキがそれぞれそう言う。


「そうだね。じゃあ、やりたい曲色々ピックアップしよ。チャットサーバー作っとくから、そこに色々載せてこ」


 二人の言ったことに全員が同意したので、さくらがそうまとめて締める。


「俺としては、踊ってみたもやりたいかな……練習にもなると思うし、工夫すれば顔出しせずにもできるから……」


 続けてAriaがそう提案する。


「なら、歌って踊ってみたっていうのは? 効率よさそう」

「効率っていうか、現実的な話をすると本数出した方がいいと思うけど」


 シキの提案に、しろねこがそうマジレスをする。


「確かに。効率ではないか。でも、権利とかもあるし、他の人の音源使うより自分たちの音源使った方がいいかもしれない」

「うん。ぼくもそれはアリだと思う。需要もありそう」


 だがしろねこはシキの意見には賛同した。


 踊ってみたをやる時に、現状顔出しをしていない凛とシキはマスクとサングラスという顔出ししていない配信者の定番コスチュームで出ればいいだろうし、別に出してもよければそれでいい。さくらとAriaはもう出ているし、しろねこはライブと一部分をぼかした自撮りだけ出ていて微妙なところだが、その辺も上手く色々できるだろう。


「あとは……定番で言うと、ゲーム実況? 実況っていうか、ただゲームするだけになると思うけど……」


 さくらがそう呟く。


「こはくはゲーム実況専門だよね? かなり」


 そう言ったのはしろねこだった。


「ああ……まあ……配信では」

「じゃあ五人でできそうなゲームとか探しといてほしい」

「わかった」


 しろねこがそこまで知っているのかと少し驚いたが、確かに凛は配信をする時はゲームしかしないし、いいものが撮れれば動画にして出したりもしている。歌い手だが、ゲーム実況者でもある、といったのが本当の活動内容だった。


「あとは、やっぱ配信か。定期的に全員で配信とかやった方がいいんだよね?」

「そうだと思う」


 Ariaとしろねこがそう話す。


「普段はそれぞれ予定があるから、個人の配信時間をずらして……なんてしないけど、そこだけは合わせた方がいいかもしれない。別に無理はしなくていいんだけど」

「まあ、そこはちゃんとやろう。大事な配信だし」

「そうだね」


 しろねこが少し譲歩したが、シキとさくらがそう言ってやる気を見せた。


「でも、ここまでって、まだ他の歌い手グループと変わらなくないかな」

「確かに。でも他に何かある?」


 凛は思い切ってそう言ってみたものの、さくらに返されてしまい、少し考える。


「例えば、練習風景を動画にするとか。そういう日常系の動画も需要ありそうだけど……」


 なんとか思いついたのはそれだった。


「いいね、それ」

「あんまりないかも、そういうの」

「俺がオタクだったら見たいわ」

「わかる」


 しろねこ、さくら、Aria、シキの順でそれぞれそう言って、凛の案は採用されることになった。



 そして、その日の企画会議は出た案をさらに具体的な内容にするための案を考えて、チャットグループに張り付けるという宿題付きで終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る