第5話 自己紹介
「じゃあ、全員揃ったから、早速自己紹介していこっか」
白夜がそう言って、まずは白夜から自己紹介をする。
「Snowdrop productionの社長兼プロデューサー、元Snowdropの白夜こと瀬川光です。よろしくお願いします」
限りなく白い銀髪に水色のメッシュ、髪色よりも黒味が強い銀色の目、顔は全体的に整っていて、身長はそれほど高いわけではないが、さすがアイドルと言ってしまうほど人を引き付けるオーラがあるように凛は思えた。
「次いきます。Snowdrop productionの副社長兼マネージャー、元Snowdropの夕真こと岩本理央です。よろしくお願いします」
夕真は茶髪に赤い目を持ち、やはり顔はいい。身長も白夜より少し高い。だが得意不得意がどうとかという理由で白夜が表に立つことが多いので、白夜の方が有名だったりもする。そうは言っても、夕真もさすがアイドルというオーラがあるし、劣っているわけでもない。
そんな二人のアイドルユニットなんて、改めてすごかったんだなと凛は思った。
「じゃあ次は……あくあ行っとこう」
「えっ、私!?」
次に白夜が指名したのは、一人だけいた少女だった。
「わかったよ……私はあくあっていいます。本名は
黒髪セミロングに、あくあという名前に相応しい青く澄んだ瞳。人が集まっていれば凛たちと同じようにアイドルをやることになっていただけあって、普通に可愛い。
「次……行きたい人?」
「じゃあオレ行きます」
そう言って手を挙げたのは、灰色の髪に緑色の目をした高身長の少年だった。
「シキっていいます。今の名義は始めて二か月くらいなんですけど、活動歴は合わせて二年くらいです。本名は
シキと凛は二つ離れていた。高校三年生でこんなことしてていいのかとも凛は思ってしまう。それ以上に、『今の名義は』というのが気になる。二年間活動してきて名義を変えているというのは何があったのか……変な理由じゃないといいんだけど……と凛は心配してしまった。だが白夜たちのことだから、それくらいはしっかり調べているのだろうとも思った。
「じゃあ次、ボク行きます!」
次にそう言ったのは、金髪青目のショタ感が強い少年だった。身長も相まって、年下に見える。そういうキャラなだけなのかもしれないが。
「さくらという名前で今は歌い手をしています。三月まで二年間Star×lightの
今度は地下アイドルだった。最初の印象通り、仕草もショタっぽくあざとい。アイドル時代の名残か、それが素なのかわからないが、本当にそんな高校生がいるんだなと凛は思った。
そしてやめた理由がしっかりと調べて出てくるようなそれなりの理由。人間的にやばい人だったらどうしようと不安になる。大体それは自覚がないものだろうし、裏の顔なんて当時のメンバーしかわからない。シキよりも不安なメンバーだ。
「じゃあ次行きます」
次はAriaだった。やっぱり黒髪に青いメッシュを入れているのがデフォルトのようだった。目が紺色をしているので、色の統一感はあってちょっとかっこいい。
「はい。踊り手のAriaです。活動歴は四年くらいで、ダンスは小さいころからやっていて得意です。本名は
前に調べた通り、Ariaは全く無名というわけでもない、界隈では一定数名の知れた踊り手だった。ダンスの技術も高く、評判は良かった。そんな人と一緒に活動することになったが、凛には見劣りするような劣等感がまだ残っている。
しかも、ここまで全員年上だったことに凛は気付いた。
「じゃあ次……こはくくん」
残りは二人となり、凛が不安からどうしようと考えている間に沈黙の時間が続いてしまい、白夜が流れを途絶えさせないようにと考えて凛に話を振った。
「えっ、あっ、はい……!」
凛にとってみれば急に振られたので、驚いて上手く言葉が出てこなかった。
それから息を整えて、改めて自己紹介を始める。
「歌い手のこはくと申します。活動歴は三年くらいです。本名は伊堂凛。高一です。よろしくお願いします」
他に言えるような特徴もなく、凛の自己紹介は短く終わった。
「最後、しろねこ」
最後に白夜はどこかで聞いたことがあるような名前を呼んだ。
「うん。えっと……一応歌い手のしろねこです。本名は
自己紹介をした白い髪の少年の声は、間違いなく凛の知っている歌い手・しろねこだった。
しろねこは凛とは比べものにならないくらい、界隈では大手と呼ばれている歌い手だ。歌い手が少しずつ広まり始めた頃、その中心部にいた歌い手たちの一人。凛もそれを見て歌い手を始めたと言ってもいいし、同じような人は多くいるだろう。だが凛が始めた三年前、その時にはすでにしろねこは何年か活動していたはずだったので、同い年だったとは思っていなかった。
そして、まさかそのしろねこが同じグループになるとは……
同名の可能性も無くはないが、そんな大手とわざわざ同じ名前にするメリットがない。新人が大手と張り合えるわけがないのだから、必ず潰されてしまって、最悪大手のリスナーに偽物だと通報されてアカウントが消される。いいことはない。
やはり、このしろねこは、凛が憧れたしろねこなのだろう。
それにしても、しろねこは自分が有名だということくらいわかってるはずだが、前髪で目が隠れていて表情が読み取れず、何を思っているのかわからない。
「あの、しろねこさんって、あのしろねこさんですか?」
その質問をしたのは、シキだった。
「あのっていうのが本当にぼくのことを言ってるのかわからないけど……多分そう」
しろねこはSNSのアカウントを見せながらそう言った。見せたアカウントページは確かに凛の知っているしろねこだった。シキが思っているしろねこも同じだろう。そして、アカウントページのフォローボタンの部分には、アカウントの編集ボタンがあった。これはこのアカウントにログインしている証拠。これでこの少年がしろねこだと確定した。
SNSのフォロワー数は三十二万。凛の八倍もある。今度は何でこんな無名が大手と呼ばれる歌い手と……などと言われることが怖くなっていた。
「そろそろいいかな? 交流はいつでもできるから。まずグループについて、これからの活動だったり、そういうことについての話をしよう」
しろねこが何か言おうとしていたのを白夜が遮り、話を進めた。確かにこの白夜の話はずっと気になっていたが、しろねこが何を言おうとしていたのかも凛は気になった。
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