799 噂の川崎にあるバスケット場

 今回のお礼を兼ねて、飯綱ちゃんの要望でもある川崎にバスケをしに行く事に成ったのだが、事もあろうかエディさんと美樹さんに、タクシーを拾わせに行かせた飯綱ちゃん。


その間、眞子が美樹さんをエディさんにお薦めした理由を聞いて、呆気に取られていたら……


***


 ……そうこうしながら、飯綱ちゃんと話していると。

出来たてのほやほやカップルが、タイミング良くタクシーを捕まえる事が出来たのか、再び手を繋いだまま帰って来た。


矢張り、何度見ても、なんとも微笑ましい光景だね。


でも……ちょっと羨ましかったりする。


だから私も、いずれは崇秀と……キィ~~~、くやちぃ!!

……なんて馬鹿な事を思いながら、タクシーを拾ってきてくれたエディさんと、美樹さんに連れられて、飯綱ちゃんと、私との4人で、なにやら怪しげなバスケット場のある川崎へと向って行った。


***


 ……あぁ、ヤッパリ、こう言う場所な訳ね。

予想に反する事無く、飯綱ちゃんの指定したバスケット場は……酷く荒んだ場所だった。


しかもですね。

このバスケット場、高架下のフェンスに穴を開けて、誰かが、私有地に勝手に作った様なバスケット場みたいなんだけど。

そこにあるものと言えば『ちょっと暗めの照明』が、電車の柱に強引に取り付けられ『何所で盗んできたの?』って、言う様なボロボロのバスケットリンク、それ等が2コート分4つがあるだけ。


地面なんて、モロ砂利だしね。

とてもとても、バスケット場と言うには、ほど遠い酷い施設だ。


それにね……集まってる人達も、明らかにロクでもない連中が集まってるのが一目でわかる。


因みに今の時間は、深夜の3時を廻ったぐらいなんだけど。

近所迷惑なんてお構いなしに、CDからガンガンに音を響かせてるし。

此処に居る人達って、腕や、背中にタトゥーなんか入れちゃって、如何にも、それっぽい人達ばっかりしか居ない。


そりゃあさぁ、真琴ちゃんなら喜んで飛んで来そうな場所だけど、とてもとても、こんな時間じゃなくても、女の子が来る様な場所じゃないね。


そんな酷く荒んだ場所に、飯綱ちゃんは堂々と入って行く。


もぉ……この子は。



「オ~~スッ。みんな、元気にしてたかぁ?サッカン生きてるかぁ?」

「おぉ、なんだよ。誰が来たのかと思ったら飯綱じゃんかよ!!最近、顔を出さなかったけど。オマエの方こそ元気にしてたのかよぉ」

「当たり前やんか。ウチを誰やと思てんの?なめた事言うてたらシバクで」

「ハハッ、オマエさんは相変わらずだな。それはそうとよぉ。今日は、なにしに来たんだ?試合でもやんのかよ」

「それこそ当たり前やんか。それ以外、こんな柄の悪い所に、なにしに来るんよ」

「違いねぇ。……んで、本日のレートは、どうするよ?」


話の流れからして、賭けバスケの話をしてるみたいなんだけど。


ふ~~ん、やっぱ、こう言う所でもやってるんだね。


まぁまぁ、場所が場所なだけに、順当だと言えば順当な答えだよね。



「そやねぇ。基本は10分ハーフで、一試合5000円。後は勝った方が、全体の掛け金の5%って所かなぁ。……それでどぉ?」

「うわっ、なんだよ、そのレート?ホント厚かましいなぁ、オマエさんは」

「あぁそぉ、そんな事言うんや。ほな、やめとくわ。他所行こ」

「待て待て。誰も出さねぇって言ってねぇだろ。まぁ、飯綱が出てくれるなら、試合も盛り上がってくれるし、掛け金も集まるってもんだ。それぐらいなら、ギリギリ了承しておくわ」

「偉いやんか。ほな、それで宜しゅうなぁ」

「おぅ、任せとけ。……おぅ!!みんなぁ、飯綱来たぞ飯綱!!」

「マジかよ!!こりゃあ、今日の掛け金は吊り上がりそうだな!!」

「天井知らずだぜ!!」


坂下さんと呼ばれる人物がそう言った瞬間。

周りに居た人間は、火が入った様にドンドンと場末のバスケット場を盛り上がっていく。


でも、なんか、これって、ライブの盛り上がりに良く似てるね。


こう言う活気の有るのって好きなんだよね。


……にしても。

瞬時に、これだけの盛り上がりを作るって事は、飯綱ちゃんの人気は高いんだね。


まぁ、あれだけの実力があれば、こう成っても然りかぁ。



「ところで飯綱ちゃん。此処のバスケのルールって、どうなってるの?」

「なんやなんや。嫌がるかと思たら、やけに美樹ヤル気満々やね。流石、中学時代に、神奈川選抜に選ばれただけの事はあるねぇ。余裕やん」


えっ?そうなの?

しかも選抜って事は、美樹さんは神奈川県の代表選手だったって事だよね。


チョモランマねぇさん……嫌過ぎるんですけど。



「そんなの昔の話、昔の話。最近は全然やってないから、多分、無茶苦茶下手になってるよ」

「よぉ言うわ。逗子中不動のエース。大会得点王。神奈川最強のパワーフォアードと呼ばれてた美樹の言うセリフやないわね」

「へぇ~~~、美樹は凄いんだねぇ。流石、僕の彼女。大したもんだ」

「体が大きいからね。ははっ……」

「そう言うエドかて、高校時代センターやってたっけ?確か、当たりも強いし、リバウド率も高かったと思うけど」


えぇ~~~ッ、マジですか?

美樹さんだけに留まらず、エディさんもバスケ経験者さんなんですか?

しかも、ロッキー山脈にぃさんも、飯綱ちゃんの話を聞いてる範囲じゃ、かなり上手そうだね。


これって……また、経験者バッカリが集まる、私専用の虐めですか?



「へぇ~、よく知ってるね。けど、僕の行ってた高校は、あまりバスケの強い高校じゃなかったから、その話自体、あんまりメジャーじゃないんだけどなぁ。なんで、そんな事まで知ってるんだい?」

「ウチの情報量を、なめたらアカンで。ウチはバスケの事やったら、大概よぉ知ってんで」

「なるほど。好きこそ物の上手なれって奴かい?情報も然りって奴だ」

「そういうこっちゃな」

「けどさぁ、飯綱ちゃん……」

「なぁなぁ、美樹。えぇ加減なぁ。飯綱でえぇで『ちゃん付け』気持ち悪いって」

「だよね。私も、ズッと言い難かったのよね。じゃあさぁ、飯綱。此処のバスケって、3on3じゃなくて、正式な5onのバスケみたいだけど。エディさんと私、それに飯綱ちゃんと眞子じゃあ1人足りないみたいなんだけど、誰か助っ人が来るの?」

「……来るよ。違う学校の子やけど、とんでもないウチの相棒が来るよ」


ヒィ~~~、もぉヤメテよぉ。

なんで1人だけド素人の私が、そんなレベルの高いチームで、バスケのプレイをしなきゃいけないのよ?


本当に、なんの虐めなの、これ?



「へぇ~~~、どんな子?」

「パスのセンスが並外れてるピカイチな子やね。あの子のパスが、途中で取られたん見た事ないもん。それに3ポイントの名手でもあるね」

「へぇ~~~、それは凄いねぇ。ところで、その子って男?女?」

「ウチの相棒や言うたやろ。メッチャ可愛い女の子やで。此処に来る前に前以て連絡しといたから、地元やし、そろそろ来るんちゃうかなぁ」

「あっ、飯綱さん」

「おっ、噂をしてたら来たみたいやね」


ぶっ!!


えっ?えっ?えっ?ちょ……嘘でしょ!!

飯綱ちゃんがべた褒めする様な子だから、一体どんな子が来るのかと思えば、まさか、まさかの!!


まっ、まっ、まっ……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたです<(_ _)>


この辺の人間関係の話ばかり見せられると、どうしても『ジャンル違い』とか思われてしまうかも知れないんですがね。


音楽物の作品だからと言って、音楽だけをやっていれば良いと言う訳でもありません。

色々な方面での人間関係を構築していった方が、当然、自身には有利になりますし、より大きなコミュニティーを確立する事が出来る。


所謂、音楽をするにしても「多方面からのアプローチ」があった方が、沢山の人に自身の音楽を聴いて貰える可能性が高くなる訳ですね。


その為にも、人間関係が重要になって来るので、私もこう言った音楽以外のアプローチも沢山させて頂いております(笑)


さてさて、そんな中。

今回のバスケの一件で「飯綱ちゃんの相棒」っと呼ばれる子が、この場に姿を現した訳なのですが。


一体、どんな子がやって来たのでしょうか?


次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


あっ……一応ヒントとしましては、飯綱ちゃんの言った『地元の子』って所ですかね(笑)

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