788 困った姉妹説
眞子についての一件を、ある程度は男性陣に納得させた飯綱ちゃん。
だが、男性陣が納得したからと言って、女性陣が納得いく訳ではない。
果たして、そこはどう説得するのか?
***
「でもさぁ。それだったら、眞子にアタックするチャンスが来たら、付き合ってる女の子は別れられちゃうって事?」
「美樹、それはちゃうで。そう成りたくなかったら、付き合ってる子が眞子より魅力的な女になったらえぇだけの話やんか。そうやって努力さえ惜しめへんかったら、最終的には、その子に落ち着くんちゃうかなぁ」
「それって、難しくない。……相手は眞子だよ」
いやいや、それ、どういう意味ですか?
私は、よく崇秀にモブ女って言われるぐらい、何所にでも転がってる様な普通の女ですよ。
そんな風に中身が腐ってるから、ひょっとして、その評価って顔の話ですかね?
もしそうなら、そっちも崇秀公認なんで、ちょっとだけ自信が有りますけど。
「まぁ、普通に考えても難易度は高いわなぁ」
「だよね」
「そやけどなぁ『ホンマに自分だけを見て欲しい』って思う意志があんねんやったら、それぐらいは頑張らなアカンんのんちゃう?『女は度胸』なんて古臭い事を言うてたらアカンで。『女も努力』する時代やで」
「あのさぁ。……ズッと気になってたんだけど。飯綱ちゃんって、眞子と同い年だよね。なんか妙に悟ってない?」
「それは、苦労の差ちゃうかなぁ」
「苦労の差?」
「そぉそぉ。ぶっちゃけ言うたらウチなぁ、今までに家があった事ないし、普通の家庭みたいな安穏とした生活なんか一回も送った事ないねんやんか。そら、そんな環境にあったら、ちょっとぐらい悟らなアホ過ぎるやろうに」
「家が無かった?……って、どういう事?」
「言葉の通りやで。ちぃさい頃から、自分の家なんかあった試しが無いで。それこそなぁ、眞子が、此処の家が、ウチの家やって言うてくれたからこそ、初めて、自分の家ってもんが解ったってぐらい。オトンも、オカンも、ウチの事は、基本的に放ったらかしやからなぁ。……あぁ因みになぁ。ウチのオカンは、オトンとは別の男作って、どっかに逃げよったけどな」
本当に、この子は、そう言う複雑な家庭環境を、平然と語る子だよね。
なんとも思ってない……って事は、流石にないだろうけど。
比較的、そう言う事実を受け入れてるよね。
まぁ、そう言う意味では、奈緒ネェより強い精神力の持ち主なのかもしれないね。
「それって……悲しくないの?」
「はい?なんで悲しいの?自分の好き勝手出来るから、ウチは、なんとも思ってへんけど」
「でもさぁ、他の家とかに行った時、そう言うの感じなかった?」
「全然。って言うか、他所は他所やろ。大体そんなんなぁ。ウチのオトンと、オカンに望んでも100%無理やん。だから、あのアホ夫婦には、なんも望めへん。……でもなぁ、眞子は、そんなウチを見ても、同情1つせんと、ただ一言だけ『一緒に住も』って言うてくれた。だからウチにとったら、眞子が、生まれて初めて出来た家族も同然やねん。そやからなぁ。この子の幸せを壊す様な真似をする奴は、なんの躊躇もなく抹殺出来んで。ほんでウチは、この子の為やったら死ねんで。……ウチにとったら、眞子は、ホンマの家族やねんから」
「ちょっと……怖いって」
「そぉ?でも、別に怖い思うんやったら、怖い思たらえぇで。ウチは、ホンマに、そう言う奴やから」
違うって!!
そこは違うって!!
確かに、ちょっと変わり者ではあるけど、そう言うのじゃないでしょ。
「あぁ、違いますよぉ。飯綱ちゃんは、絶対に、そんな子じゃないです。言葉に騙されて、変な風に取らないで下さいね。ダメですよ。言葉の文ですよ、言葉の文」
「えぇねんて眞子。実際そうやねんから」
難しい子だなぁ。
素直って言うか、真っ直ぐ過ぎるんだよね。
「ぷぷっ……飯綱ちゃんって、昔の奈緒ソックリだね」
「奈緒?……奈緒って、誰?」
「此処の家主で、眞子のおネェちゃん」
「へぇ。ウチにソックリ言う事は、その眞子のおネェちゃんって……凄い変人なん?」
「奈緒ネェ、変人じゃないから!!」
変人を自覚って……
「変人って言うか。……あれはもぉ『超』が付く変人だね」
「へっ?ちょっと待って、ひょっとしてウチ、そのお姉ちゃんに負けてるん?その姉ちゃん、そんな強烈な変人なん?」
「だから、奈緒ネェ、変人じゃないもん」
「もぉ超変わり者。……でも、奈緒の事は、みんな、好きなんだよね。変にお節介だし、妙に優しい。けど、逆に、これと決めた事は、絶対に曲げない偏屈者。本当に飯綱ちゃんソックリ。姉妹なんじゃないの?」
あぁ、確かに似てますね。
飯綱ちゃんも授業に出てないクセにクラスの人気者だし、お節介だし、優しい子。
それになにより、これと決めた事は、絶対に曲げない様な性格ッポイですもんね。
確かに言われてみれば、奈緒ネェソックリだ。
それによって、また新たな姉妹説が浮上しましたね。
「あぁ、そう言われてみると、そうだね。奈緒も、飯綱ちゃん同様に、偶に怖い時があるもんね」
「でしょ、でしょ。多分、同じタイプだよ、この子も」
「ちょっと待ってくれ。奈緒は、そんなに頑固じゃないが」
「それ、完全に騙されてますよ。あの子の頑固さはワールドクラスですよ」
「そっ、そうなのか?」
「いや、ホランドさん。千尋の言う通り、あの子、かなり頑固ですよ」
「ほぉ。私の知らない所で、なにか、そう言う事があったのか?」
「いえ、そんな大層な話じゃないんですけどね。なんか夜中にパスタが食べたいとか、突然、言い出して。夜中店を中探し回って、食べて帰って来たって、本人が話してましたよ」
「あぁ、奈緒なら、確実にやりそう」
確かに……
しかも、絶対に途中で意地になったな。
「だが、それは頑固と言うより。……ただの馬鹿なんじゃないのか?」
「あの~~~、ホランドさん。人のお姉ちゃん捕まえて、馬鹿とか言わないで下さいよ」
「あぁ……すっ、すまん、つい……」
まぁ、気持ちは解りますけどな。
なにやってんでしょうね、ウチの姉は?
「あぁまぁ、馬鹿は置いて置いたとしても。確かにウチの姉は、1度言い出すと、中々、人の言う事を聞かない人ですからね。滅茶苦茶頑固な人ですよ」
「あぁ確かに、ありゃあワールドクラスの頑固だな。俺ちゃん……それに付き合って、豪い目に遭ったからなぁ」
「そりゃあ、ご愁傷様。どうせ『コンビニは嫌だ』とか言ってたでしょ」
「あぁ言った、言った」
「それで、あれでしょ。結局、朝方、店が開いたぐらいに食べて満足したでしょ」
「千尋ちゃん、よく知ってるなぁ」
「私も、それ、同じ事を奈緒にされた事がありますから」
「そりゃあまた、お互い、ご愁傷様だな」
「ですね」
ホント、ウチの姉は、なにをやってるんだろう?
変に、何事に対しても妥協しないからなぁ。
困ったもんですね。
「うわあぁ~~~、それは酷いわぁ。重症やわ」
「いやいや、ウチの姉だからね。私を家族だと思ってくれるんなら、自動的に飯綱ちゃんのお姉ちゃんでもあるからね」
「あっ、そやね。……みんな、なに言うてんのよ!!拘りがあって最高やんか。ウチでも、きっと、そうするわ」
「いや、あの……今さっき重症って言ったよね」
「言うてへんけど?なんのこと?」
変わり身早ッ!!
「最悪だよ。……って言うか。ウチのお姉ちゃんより、飯綱ちゃんは、まともなんで大丈夫ですよ」
「奈緒を……基準にしちゃダメでしょ」
「私も、そう思う。奈緒基準は、ちょっと……ねぇ」
「俺ちゃんですら、それだけは、やっちゃイケナイと思うぞ」
「確かに、話を聞く分じゃ。奈緒は、ちょっと普通じゃないな」
「まぁ、僕的には、そう言う拘りがあるのって好きだけどね。一般的にはダメだろうね」
あれ?フォローは?
それにみんなは、解ってて、そう言う事を言ってるの?
言って置くけど……奈緒ネェは怖いよ。
今、此処に帰って来ない事を、布団に包まりながら祈った方が良いよ。
さもないと、ノートの角で『ポコポコ』撲殺されるよ。
あれ……本当に痛いんだよ。
……軽く死ねるよ。
「なぁなぁ、さっきから気になっててんけどなぁ。……これ、なんの話やの?」
「いや、飯綱ちゃんが、急に変な事を言い出すから、こんな事になったんだよ」
「あぁ、ウチのせいか。……そら、ごめんなぁ」
「えっ?それで纏めちゃうんだ」
本当に、なんですか、これ?
「なんやの?納得いけへんねんやったら、今までの話、ダイジェストで全部纏めたろか?」
「なっ、なにを纏めるの?」
「全部って言うたやん。えぇか眞子?まずは……」
そしてこの後、再度、飯綱ちゃんの纏めをした言葉が、場の雰囲気を変える事に……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
『女は度胸』なんて言葉があるのですが。
本来、その度胸を表に出す為には『日々の努力』と言うものが大前提に成ってきます。
実際、なんの努力もなしに、度胸を発した所で、そんな物は『ただの割の悪い賭け』でしかありませんし。
日々の努力があるからこそ、その度胸を試すチャンスが、より成功率を上げる事になりますからね。
結局は、何をするにも運任せではダメって事ですね。
さてさて、そんな中。
この後、今回の一件を、どうやら飯綱ちゃんが纏めて話すみたいなのですが……これはもぉ、嫌な予感しかしませんね。
なので次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます