772 飯綱ちゃんの願い事

 学校の事で、一杯お世話になった飯綱ちゃんに恩返しがしたい眞子。

その旨を相手に伝えたら、ある事を頼まれるのだが、果たしてそれは、一体、どの様な願い事なのか?


***


「なっ、なに?なんでも言ってくれて良いよ」

「ホンマ?ほんだら今日、眞子の家に泊めて」

「へっ?」

「ウチ、家が無いから友達の家を泊り歩いてんねんやんかぁ。そやから、良かったら今日だけでも眞子の家に泊めてくれへん?」

「あぁいや、私一人暮らしだから、泊りに来てくれるのは全然良いんだけど。……家がないって、どう言う事なの?なんで、家が無いの?」

「うん?あぁ、それ。それなぁ、ウチのオトンがアホやから」

「あの……『オトン』ってなに?」

「父親の事。……あぁコッチでは、そう言わへんねんね」


関西弁だ。


全然知らなかったよ。



「あぁっと、そうだね。でも、家が無いって、本当にどういう事なの?」

「まぁ簡単に言うたらやな。ウチのオトンな。建築関係で土方のオッサンをやっとんねんけどな。あのおっさん『家賃が勿体無い』とか訳の解らん事を言うて、いつも会社の事務所で寝泊りしとんねん」

「うっ、うん」

「そやけどな。オトンはそれでえぇとしてもや。会社とは無関係なウチまで事務所で寝泊まりする訳にいかへんやろ。やから、友達の家で泊めて貰うか。マン喫行くか。野宿してんねん」


酷い……酷すぎる。

そのお父さんって、飯綱ちゃんの事、なんだと思ってるんだろう?


特に飯綱ちゃんは女の子なのに、こんなの酷過ぎるよ。



「女の子なのに……そんなぁ……」

「なんで、そんな悲しそうな顔するん?結構、無茶苦茶で、おもろい生活やで」

「えぇ、でも、女の子なんだからさぁ。……あの、ほら、なんて言うか」

「なんや?SEXの話か?そんなん、別に、なんとも思ってへんわ。そんなもん、たかだか『粘膜の接触』やんか。コンドームだけちゃんとしてたら、なんの問題も無いよ」


えっ?



「……って事は……」

「うん?あぁ、そんなん当然『処女』ちゃうで、そんなん遠い昔の話やわ」

「でも……」

「ふふっ、眞子は可愛いなぁ。そんなんな、体の1つぐらい使わせたらな。タダで泊めて貰ってんのに悪いやん。SEXしたからって、別に、どないかなる訳でもないねんから、その辺は気にしたら負けや。そう言う所、女は便利やと思うしね。お金なくても生きていけるもん」


そんな……


なんで飯綱ちゃんが、そんな目に……本当に最低の親だ。



「ふふっ、なに?その表情はどうしたん?うちの事が汚いって思たん?穢れてる思たん?それともウチとは友達を辞めたい思たん?それやったらそれで、別に構へんで」

「そんな事は微塵も思ってないよ!!なんて事を言うの!!そんな言い方しないで!!」

「えっ?えっ?なんで怒ってるん?」

「怒ってないけど。そう言うのって……」

「そんなんウチかて、眞子に言われんでも解ってるけどもやなぁ。そやかて、お金無いねんからしゃあないやん。どないせい言うのよ?」


どないせいじゃなくて……



「だったら、ズッと、うちに居なよ。私、一人暮らしだからさぁ。なにも迷惑じゃないから、ウチでズッと居なよ。そんな事、もぉしなくて良いよ」

「なんで?泊めてくれんのは嬉しいけど。別に、なんも気にしてへんけど」

「そう言う問題じゃなくてさぁ」

「ホンダラなに?ウチの境遇に同情でもしたんか?」


飯綱ちゃんは平静のまま、いつも通りの口調で話し続けている。


育ってきた環境って奴なんだろうね。

彼女は、こう言う話をしても、一切の変化が見受けられない。


果てしなく冷静に対処して来る。



「同情なんてしてないっての。ただ単に、一人じゃ部屋が大きいから、誰か一人ぐらいルームシェアしないかなぁって思ってただけ。それが知り合いだったら良いなって思ったから、飯綱ちゃんに声を掛けただけ。だから、同情なんかしてないよ」

「ふふっ……眞子は、ホンマおもろいなぁ。此処は普通、同情する所やで」

「なんで同情なんかしなきゃいけないのよ?飯綱ちゃんの生き方に干渉する程、私は、なにかを出来てる人間じゃない。だから、なんとも思わないんだけどなぁ」

「そうか。眞子は、ホンマにオモロイ子やな。普通やったら、みんな、ウチの事、そう言う同情の眼でしか見ぃひんのにな」

「あのさぁ、SEXする事が、そんなに悪い事なの?私は、そうじゃないと思うよ。ただね。自分をね、大切にはして欲しいと思うよ」

「綺麗事やし、格好のえぇ事言いよんなぁ。……でも、眞子に言われたら、ちょっと嬉しいわ。ホンマ、出逢って間無しや言うのに、ウチの家庭事情を、よぉ解ってくれてるわ。ありがとうな眞子」


それは……私のセリフなんですけど。



「うん?そぉかなぁ?あぁでも『友達だから』とかチープな事は言わないよ。これから一緒に生活するんだったら、家事とかは、ちゃんと交代制でやって貰うからね」

「ふふっ、ホンマ、アンタは素はケッタイな子やね。女子で、こんなん言う子、逢った事すらないわ」

「ははっ……よく言われる」

「ホンマ、アンタは、最高におもろい子やわ」


ははっ……



こうして私は、飯綱ちゃんとの共同生活が始まった。


でも、出会ったばかりの飯綱ちゃんと、こんな関係になるとは予想もしてなかったよ(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


同情してない、っと言いつつも、同情し捲りの眞子なのですが。

それでも『飯綱ちゃんの状況を少しでも変えてあげたい』っと言う気持ちは本心なので、これはこれで良かったのかもしれませんね。


少々嘘が混じっているとは言え、特に悪い事をしてる訳でないですし。


まぁただ、奈緒さんに相談もせずに決めてしまったのは、少々問題の様な気はしますが……


さてさて、そんな中。

こうして飯綱ちゃんとの共同生活が始まる訳ですが。

果たして、何事もなく、この破天荒な2人が一緒に過ごす事が出来るのか?


そして、なにも起こらないのか?(笑)


次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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