770 和解の糸口
崇秀との関係に関しては恋のライバルではあるものの。
偶然出会った飯綱ちゃんと言う、自身とよく似た性格の欲望に忠実な友達を得る事が出来た眞子。
それ故に、機嫌良く教室に戻って行くのだが……(笑)
***
……えぇっと、今ね。
今日の授業が全部終わって、雛ちゃんのホームルームの時間に成ってるんだけどさ。
でもさ、でもさ。
もぉ一分一秒でも早く飯綱ちゃんに逢いたいから。
いつも通り、冷静な顔をしてホームルームを受けてるフリはしてるんだけど……それとは裏腹に気分はやけにソワソワしてる。
けど、そんな私の気持ちに反して雛ちゃんはと言うと……相も変らず要領が悪く、教壇の立って必至にピィピィなんか言ってるんだけど、全然みんなに伝わっておらず、ホームルームが全然終わる気配が無い。
最悪だよ。
もぉ……頼むよぉ。
そんな事を考えてた折……何の前触れもなく『ガラッ!!』っと教室の前の扉が開いた。
何事?っと思って、そちらの方を見てみると……
「よっ、お久しぶりやで。ちょっと悪いけど、お邪魔すんで」
「「「「「飯綱?」」」」」
えっ?あれ?
飯綱ちゃん、授業には興味がないからクラスに来たくないんじゃなかったっけ?
あれあれ?
それにさぁ、彼女が教室に入って来ただけなのに、クラスメイトが凄いざわめいてる。
これって……みんな、ちゃんと飯綱ちゃんの事を認知してるって事だよね?
それになによりね。
私のせいで暗くなっていた教室が、一気に明るくなった。
だとしたら、認知されてる処か、凄いカリスマ性?
「なんやの?」
「なんだよ、飯綱!!久しぶりに学校に来てるんなら、もっと早く顔を出せよ」
「はい?なにがやの?ウチ、毎日学校に来てんで」
「ちょっと飯綱さん。毎日学校に来てるの?」
「来てるで、なんで千夜ちゃん、そんな事を聞くん?」
「なんでって……あの、じゃあ、なんで授業に出てくれないの?」
「なんでって。勉強したないから」
「そんな理由って……」
ぷっ!!マイペースの飯綱ちゃんらしいなぁ。
なにがあっても、誰であっても、絶対に自分の信念を曲げない子だね。
でも、そう考えるとあれだね。
本当に飯綱ちゃんが言った通り、我欲従順な所は、私達2人はソックリだ。
「まぁ、そんなショウモナイ事は、どうでもえぇねんって」
「良くないし……」
「そんな事よりな。ちょっと、ウチの話を聞いて欲しいねん」
「聞いてないし……」
やっぱり、ウルトラ・マイペースだ。
でも、今、なにかを話す様な気配でモノを言ってたけど、なんの話をするんだろう?
・・・・・・
……って!!まさか!!
「それで、飯綱ちゃん。どうしたの?」
「あのな。なんて事ない話やねんけどなぁ。眞子の事なぁ、もぉ虐めんとたって。ウチの友達やから……それだけ」
飯綱ちゃん……
「虐め……」
「そやで千夜ちゃん。クラス全員で眞子を無視して虐めとんねん。やめさせたって」
「あの、飯綱ちゃん。それ、酷い誤解だよ。向井さんは、このクラスの人間を、誰も相手にしてないだけなんだって」
「なんでやの?ウチを相手にしてくれてんで、それやったら全員ちゃうやん」
「それは、飯綱ちゃんは認めて貰えたからじゃないの」
「なんで、友達なるのにイチイチ認めて貰わなアカンのよ。アンタ、アホちゃうか?それにウチは、やりたい様にやってるだけやで」
「そうだけど……」
「……それとな。ホンマの眞子は、アンタらが思ってる様な子やない。何処ぞの誰かにな『こう言う風にやれ』って言われてやってんねん。クラスメイトやねんやったら、ちょっとはそう言うのにも気付いたったら、どないやの?」
あっ……
「でも……」
「『でも』は無しやで」
「でもね。あれだけ突き放されたら、話し掛けれないよ」
「まぁそやね。そこは、眞子が悪いのは間違いないね。だからなぁ、此処に居る全員が、お互い様やねん。そやからなぁ、もぉ遺恨なしでえぇやろ。みんなで楽しくやりや。ホンで眞子も、いつまでもショウモナイ意地張ってやんと、はよ、みんなに謝り。しゃあないと、ホンマおもんない中学最後の生活を送る事になるで……アンタは、それでもえぇんか?」
飯綱ちゃんがそう言った瞬間、私に視線が集中するんだけど。
そんな一斉に注目されてもなぁ……
そりゃあね。
『実験』だの『奈緒ネェの疑似体験』だの『素直ちゃんとの約束』だの言ってたけど、飯綱ちゃんの言った通り、こんなんじゃあ、全然、学校生活が面白くないんだよね。
やっぱりね。
真琴ちゃんの件があるから、みんなに無視されるのは嫌だよ……
だったら此処は四の五の言わず。
こうやって、飯綱ちゃんがチャンスを作ってくれたんだから、此処はちゃんと、みんなに謝罪しないとね……
この機を逃したら、もぉ卒業まで、此処のままの状態で終わっちゃうだろうし。
「ごっ、ごめんなさい」
「「「「「えっ!!えぇえぇ~~~!!」」」」」
「あの、本当に、ごめんなさい。……私、本当は、皆さんと一緒に楽しい学校生活を送りたかったんだけど。事情があるから、今まで『こんな風』にしか接せられなくて……ごめんなさい」
約束破って、ごめんね、素直ちゃん……
もぉ限界。
もぉ私には、こんな生活我慢出来無いよぉ。
結局、奈緒ネェの気持ちは、なにも解らなかったけど、私は、どこまで行っても私でしかない。
無理をしても意味が無かったんだ。
「そう言う事やから、もぉ無視とかせんとったってな。眞子はな。メッチャ素直でえぇ子やから、もぉヤメたってな。……わかった?」
「なぁなぁ、飯綱。でも、それ、本当なのかよぉ?これも向井の演技なんじゃねぇの?」
「はぁ……相変わらず山西はアホやねぇ。ちゃんとなぁ、眞子を見てへんから、そんなアホなセリフが出て来んねん。それにや、こんなえぇ子が、こうやってちゃんと反省してんねんから、2回も嘘付けへんて。……もし、まだ嘘付いてんねんやったら、今度はウチが眞子をドツキ廻したるわ。そやから、此処はウチに免じて信じたって」
また……人のお世話になっちゃってるね。
私って、なんで、こんなに融通が利かないんだろ?
「じゃあよぉ。向井は勉強とか教えてくれるのかよぉ」
「甘えるな。勉強ぐらい自分でしぃ。……って言うか、アンタなぁ。眞子みたいな可愛い子と同じ空気吸えるだけでも有りと難い思いや。アホちゃうか?調子のんな」
「酷ぇ~~」
「まぁまぁ、そうは言うてもやな。山西が、眞子と友達になったら、眞子もなんか教えてくれるかも知れへんで。可愛くてなぁ、頭のえぇ子に勉強を教えて貰えたら、アホ男子共もは、それだけでも幸せなんちゃうんか?」
「あっ、まぁ、そうだけど……」
「ほんだら、どうしたらえぇんや?それを眞子に実践して欲しいねんやったら、いつまでもしょうもない過去の遺恨なんか持たんと、眞子と友達になれる様に努力した方が得なんちゃうん?」
「だな。だな」
そこまでして貰ったら……
「アホの山西だけやのうて、他の子もそうやで。人間って言うのはなぁ。お互いの持ってるメリットちゅうもんを、他人に分け与え合うからこそ人間関係が円滑に行くもんなんやで。だから自分が、眞子に、なんかしたれる思う事が有んねんやたらドンドン友達になったってや」
飯綱ちゃん……
「そんな訳やからな。眞子、ちょっとコッチおいで」
「えっ?どうして?」
「えぇから、はよコッチおいで」
「あっ、うん」
私は訳も解らないまま、飯綱ちゃんの居る教壇までトコトコと歩いて行く。
ちょっと、みんなの視線で恥ずかしい。
「あの、飯綱ちゃん……」
「ほな、みんな、注目」
「オイオイ飯綱。なにをする気だよ?」
「イチイチうるさいわ山西。なんも解れへんねんやったら、大人しく黙って聞いとき」
「すっ、すまん」
うわ~~~。
解ってはいたけど、この子も、大概、傲慢な子だなぁ。
流石、崇秀の最長の幼馴染だけの事はあるよ。
「ほな、みんな、ちょっと聞いてな。昨日、どっかに転校してもた『向井』って言う嫌な子が居ったけど。今日から、同じ苗字の『向井眞子』って子が、このクラスに転校して来たから、絶対に仲良ぉしたってな」
「「「「「!?」」」」」
「あっ……」
もぉ……この子も、崇秀と同じでズルイ子だ。
出会って間が無いって言うのに『お節介』だよ……
「なんか眞子に質問ある?」
「じゃあさぁ、前の向井に聞いた事なんだけどよぉ。スリーサイズは?」
「もぉ……ご想像にお任せします」
「ちぇ……そこだけは前の向井と一緒かよ。けどさぁ。今回の向井は良い奴そうだから、宜しくな。俺、山西な」
「あっ、うん。宜しく」
あぁ~~あっ、あの質問の主って、山西君だったんだ。
でもねぇ。
二回聞かれても、スリーサイズなんか答えないっての……
「あぁじゃあ、俺からも質問なんだけど。向井ってさぁ。頭良いって噂を聞いたんだけど。勉強を、偶にで良いから教えてくれる?」
「あぁ……頭が良いか、どうかは解らないけど。私で良かったら、いつでも聞いて。出来る限り協力させて貰うよぉ」
「マジで。俺、結構な馬鹿だけど、大丈夫」
「あっ、うん。精一杯頑張ってみる」
「頑張ってみるって……酷ぇなぁ。まぁ良いや。俺、坂田ね。宜しく」
この後も、続々と、みんなが名乗りを上げてくれる。
一般的には、漫画にありそうな臭いシーンなんだけどね。
これは、夢でも幻でもない、目の前にある事実。
……皆さん。
……ありがとう。
それに、この機会を作ってくれた飯綱ちゃん……本当に、ありがとう。
・・・・・・
……うん?あれれ?
そう言えば、そうやって皆さんを話してる隙に、その張本人である飯綱ちゃんが居なくなっちゃってる?
何処行っちゃったの??
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
飯綱ちゃん……豪快に傲慢でしたね(笑)
この辺については、流石、崇秀の最古参の幼馴染と言った所でしょうか(笑)
まぁ、そうは言っても、この飯綱ちゃんの行為で眞子が救われたのも事実。
結局の処、どこか融通が利かずドン臭い眞子を見て、崇秀同様に放って置けなかったんでしょうね。
早い話『お節介』なんですよ、この子も♪
まぁただ、飯綱ちゃんの場合は、自分が気に入った子以外は助けませんけどね(笑)
さてさて、そんな中。
そんな飯綱ちゃんにお礼をしようと思ったら、既に教室には姿はなく、何処かに行ってしまった様なのですが。
一体、どこに行ってしまったのでしょうか?
それともう1つ……
……ってな感じの話を、次回は書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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