768 ぎゃふん

 ひょんな事から屋上で知り合った飯綱ちゃん。

話している内に、バスケで勝負をして遊ぼう、っと言う提案が飯綱ちゃんからあり。


余りにも彼女が自信有り気な態度を取るものだから『ギャフン』っと言わせようとする眞子だったが……


***


 ……ぎゃ……ぎゃふん……


なっ、なっ……なになに、これって、どう言う事?

この子は、一体、なんなの?

身長が145cm位しかないって言うのに、なんて恐ろしい様なジャンプをするの?

その身長の高さで『ダンク』を決めるなんて、人体の構造上、絶対に有り得ないんだけど。


しかも、そのゴールした際にも、空中を歩いてた様にも見えたんだけど……あれって錯覚?


それに、この小さい体からは想像も付かない様な、人知を超えたスピードが繰り出されている。

私自身も精一杯まで崇秀の動きをトレ-スをしてるって言うのに、彼女の動きには全くと言っていい程付いていけていない。


何度やってもアッと言う間にボールを奪われて……アッと言う間にゴールされる。

その上、ボールを持った瞬間からの動きが、あまりにもトリッキーで、コチラも全然ついてイケナイ状態。


それで終わってみれば、結果が……10:3ってなに?


ホント、なんなの、この子?



「なぁ~~~んや、おもんな。眞子は、思ってたよりも全然下手糞やね。こんなんやったら、話になれへんわ。折角、ちょっとは骨があるのかと思て期待してたのに」

「はぁ、はぁ……ごめんね。……期待に沿えなくて面目ない」

「ふふっ。でも、面白かったで。アンタの動き方、崇秀にソックリやん。まぁアイツはなぁ。ウチの事を平気で馬鹿にするぐらい上手いけどなぁ」

「えっ?……飯綱ちゃんも、崇秀の事を知ってるの?」

「知ってるもなにも。ウチ等の年代でバスケやってる子やったら、大概はアイツの事は知ってるで。アイツなぁ、小学校の時、全国の『最優秀選手』やったぐらい有名な選手やからね」

「……嘘?」

「なんや眞子は知らんかったんかいな?まぁ、なんか中学入ってからは、一回バスケ部に入部したらしいけど。ムカツクとか言う理由で、先輩全員シバキ倒してクビなったらしいけどな。……ホンマ、アイツ、アホやね」


崇秀、またしても自分が化物だって事を証明をしてるよ……


本当に、どうなってるの崇秀って?


なんなんなの?そのスペックの高さは……

此処まで来たら『優良細胞』が、どうとかって問題じゃないよね。


訳がわかんないよ?



「あの、こう言う事を聞くのは失礼だと思うんだけどさぁ。私、転校生だから、よく知らないんだけど。飯綱ちゃんって、1年の時から、この学校に居たの?」

「うん、居ったでぇ。けどなぁ、ウチなぁチッコイから存在感が薄いちゃうかなぁ。まぁそれ以前に、学校来ても、授業サボってばっかりやから、誰も知らへんのかもね」

「でも、それだけ上手いんだったら、当然バスケ部だよね」

「ふふっ……それ、なんの悪い冗談なん?なんでウチが、あんな偉そうにしよるだけの下手糞な連中とつるんでバスケなんかせなアカンのよ。ウチはな。ストリート専門。公式の試合には一回も出た事ないよ」


あらら、それは勿体無いなぁ。


これだけ身体能力が高くて、技術的にもバスケが上手いんだったら、それこそ全国レベルのプレイヤーなのにね。



「勿体無いね」

「まぁねぇ。そや言うたかてなぁ、ウチがチビやから言うて、実力も見んとドイツもコイツもボール拾いばっかりさせよんねん。ほんで、全然試合で使いよれへんねんから、クラブとかは、もぉ懲り懲り。ホンマ堪らんわ」

「そう……なんだぁ」

「そやで。それになぁ。クラブ活動に参加せえへん一番の理由はな。『パートナー』が居れへん事やね。みんな雑魚過ぎて、話にもなれへんわ」


あぁ……どこの世界にでも、そう言う話ってあるんだね。

そう言う不満って発散のしようがないから、アッと言う間に凄く溜まるもんね。


なんか、ほんのちょっとだけなら、今の私にならその気持ちも解る様な気がする。



「そんな訳で、ウチの話は終わり。今度は、眞子の話を聞かせてぇや」

「私の話?……あぁでも、私には、飯綱ちゃんに聞かせる様な事なんて、なにも無いよ。最近は勉強ばっかりしてたから、特に、これと言っては無いかなぁ」

「アンタ、勉強なんか、ホンマにしてんのや。……アホやね」

「放って置いてよ!!」

「ちゃうやん、ちゃうやん。そう言う事を言うてるんとちゃうねんて」

「えっ?」

「ウチはな、そんなツマラン話を聞いてるんと、ちゃうんねんって。勉強ばっかりしてる眞子にかてやなぁ。なんか趣味の1つぐらいあるやろって話。その話をして欲しい訳や」


趣味って言われてもなぁ……飯綱ちゃんの話に匹敵する様な話なんてなにも無いしなぁ。


敢えて言うなら、ベースとかの話とかでも良いのかなぁ?


まぁ現実的に言えば、それしか無いんだけどね。



「えぇっと、楽器のベースを弾いてるとかでも良いの?そんな話で良いの?」

「それそれ。……そやけど、それで眞子が、ウチにバスケで負けたり理由が解ったで。なんや、楽器を弾いてるから、眞子はリズム感がえぇんやね。通りで、バスケやってる時、守り易い筈や」

「えっ?楽器とバスケ?どういう事?」

「うん?わかれへん?これも、眞子がさっき言うてた『複合原理』の1つやで」

「えっ?」


『複合原理』って……


その話が出来るんだ。


この子、本当に頭が良いじゃないの?



「アホやなぁ。あのなぁ、眞子のバスケはな。楽器をやってるから、基本的な部分でリズムが規則的過ぎるねん。だからなぁ、予想だけで簡単に眞子の動きが先読みが出来る。そやからウチは、眞子からは簡単にボールが取れてまうねん」


鍛えているリズム感が裏目に出てると。


そっか。

至って単純な複合原理の話だけど、解答としては的を得てるなぁ。


この子……本当に賢い。



「そう言うのを感じるんだぁ」

「そやね。崇秀の動きと似てても、眞子のは規則正し過ぎるから読まれる。そやけど崇秀は、変幻自在にリズムを替えてくるから、どうにもやりにくい。この辺が、眞子と崇秀の差やろね」

「ふ~~~ん」


そっか。

上辺のトレースは出来ても、中身が伴って無いって事かぁ。


なんかこれってさぁ。

ボロを出した上に、凄く現実を叩き付けられた気分だよね。



「あぁ、ゴメン、ゴメン。眞子の話の腰を折ってもうたね。さっきの話の続き聞かせて」

「あぁいや。話の続きって言われても、別に趣味だから、大した話はないんだけど」

「そんな事無いんちゃうん?楽器弾けるんやったら、ライブとかもバンバンやってんねんやろ?なんか、その時の伝説とかないん?」

「ないない。この間の全米ツアーとかでも、散々メンバーの皆さんには迷惑掛け捲ってただけだからね」

「へっ?ちょ……えぇっと?アンタ、今、なんて言うた?」


なにが?



「いや、だからぁ。一緒の演奏して下さったメンバーの方達に、一杯迷惑を掛け捲ってたって」

「いやいや、その前、その前。その前に眞子『全米ツアー』とか言わへんかった?」

「あぁうん、言ったけど。それがなに?」

「メッチャ凄いやん!!何箇所ぐらいでやったん?5箇所ぐらい?」

「えぇっと、一応45箇所ほど」

「えっ?……45箇所!!なにそれ?もぉそんなんプロやん!!」


えぇっと、これって、そんなに驚く様な事なの?


ただの顔合わせライブだったんだけどなぁ。



「あぁ、違う違う。これ自身は、完全にドサ廻りみたいなもんだから、そんな大層な物じゃないよ」

「あぁ、ゴメンなぁ。なんかウチ、偉そうな事言うた割に、眞子の方が全然凄いやん!!ギャフンやわギャフン」

「ギャフン……なんだ」

「そぉ。完全にギャフンやわ」


ギャフンなんだ。


……とか言いながら。

この後、サボりの時間が無くなるまで、飯綱ちゃんと楽しく話し続けた。


お互い、他愛も無い話ばっかりだったけどね。


久しぶりに素で話せてたから、凄く楽しかった♪


それでサボってる時間が一杯になってきたんだけど、私は気持ちよく授業に戻れそう♪



そんな私に対して、飯綱ちゃんは、最後になにかを言ってきた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


眞子……飯綱ちゃんを『ギャフン』っと言わせましたね。

まぁただそれが、本来の目的であったバスケではなく、私生活の方でのギャフンだったのが少し残念な感じですが(笑)


まぁそれでも、この子をギャフンと言わせた事には違いないので、ある意味、大したものだと思います♪


さてさて、そんな中。

飯綱ちゃんはギャフンと言わされながらも、眞子に何か言いたい事がある様なので。

次回は、その辺を書いて行こうと思います。

なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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