767 変わった子

 クラスに馴染めない処か、恐怖の対象にまで成ってしまった眞子はボッチ確定。

そんな自分が居た堪れなくなって、久しぶりに授業をサボり屋上に行くと、そこには1人の同級生が。


そして、その子は、眞子に対してお構いなしに話してくるのだが……


***


「あの、バスケも結構なんですが、私、アナタにイキナリ呼び捨てにされる憶えはないんですけど」

「なんでぇ?呼び捨てぐらい別えぇやんか。それともアンタ、名前呼ばれたらなんか減るん?もしそれでなにか減るんやったらダイエットになってラッキーやん。良かったね」

「はぁ……あのねぇ、良かったねじゃなくて、元よりダイエットなんて必要ないんですけど。それ以前に、呼び捨てにされたからと言ってなにも減りませんけどね。でも、知り合ったばかりの方に、呼び捨てされる憶えはありませんけど」

「なにそれ?ちっちゃ、アンタ、人間ちっちゃ。アンタ……友達居れへんタイプやろ。それともなに?そんな『しんどそうな仮面』付けてるから、自分自身が一杯一杯になって息苦しなってるん?無理はアカンで無理は」


えっ?


嘘?


その発言をするって事は、この子には、私の作っている意地悪眞子がバレてるって言うの?


そんな馬鹿な……



「……仮面なんて付けてませんが」

「はいはい。今、自分でも気付かん間に、自然と間が空いてたで。……って事はや、全部『嘘バレバレ』ちゅうこっちゃな。ホンマ、嘘が下手糞な子やなぁ」

「そっ、そんな事ありませんけど」

「なんや?今度は声が上ずってんで」

「しっ、してませんけど」

「はいはい。こんな程度の事で、そこまで顕著に動揺する言う事は、アンタ、ホンマは、そんな子ちゃうねんやろ。なぁなぁ、そんなん煩わしいもん、サッサと取ってもうて、もっとウチと本音で話そうや。しゃあないと、おもんないって、そんなん」


この3ヶ月。

今まで誰も気付かなかったって言うのに、本気で、この子にはバレてるって言うの?


そりゃあね。

相手に『私が興味を持って貰えていない』って言うのが、誰にもバレなかった一番の要因なんだろうけど。

それにしたって、こんな短時間で、この意地悪眞子の仮面って見破れるものじゃないと思うんだけどなぁ。


この子、何者なの?



「あの……なんで解ったの?」

「うん?『神通力』やけど」

「えっ?」

「……ウチなぁ、此処だけの話。実は、なんでも見通せる天狗の末裔やねんで。……知ってた?」

「えっ?えぇっとなに?」

「なんやアンタ、天狗も知らんのかいな?ケッタイな子やなぁ」

「あぁ、そうじゃなくて、天狗については、一応、知識としては知ってるけど。あれって、空想の生き物じゃなかったっけ?本当に存在するなんて1度も聞いた事が無いんだけど」

「なに言うてんの。ほらほら、本物の天狗が目の前に居るやんか。ウチは正真正銘、ホンマもんの天狗の末裔やで」


う~~~んっとね。

こう言う発言が出るって事は、この子って、ちょっと痛い子なのかなぁ?

天狗なんて空想の世界にだけしか存在しないから、リアルで居る訳ないのにね。


変な子だなぁ。



「あの、そう言われてもねぇ。飯綱ちゃん、特別、鼻が高い訳じゃないし、山伏の格好もしてない。それにさぁ1本下駄じゃないし、第一羽も無いし」

「ちょ!!待ち!!」

「なっ、なに?」

「人が黙って聞いてたら、誰が『鼻ペチャ』やねん。ウチは『キャンディー』か」

「えっ?えっ?なに?ツッコむ所はそこだけ??」

「あはははっはは……なんや、ちゃんとえぇツッコミも出来るやん。ほんだら、その調子で、ウチと遊んでみようやぁ」


あぁ……なんかさぁ。

最近、ベースの件や、素直ちゃんの件があって、退屈で嫌な事バッカリだったから……この子と話してるのが、殊の外、楽しく感じてきた。


そりゃあね、全部、この子のペースに引き込まれてるのは解ってるんだけどね。

最近さぁ、本当に、なに1つとして面白い事がなかったからさぁ。


ついつい……これを楽しんでる自分が居る。


まぁ、そうやって退屈する羽目に成ってるのは自業自得なんだけどね。


それにしても……この子には『人を楽しくさせる才能』でもあるのかなぁ?


普通に話してるだけなのに、凄く楽しい。



「良いけど。此処で、バスケなんて、どうやってやるの?」

「簡単やん。眞子はなぁ。ドリブルでウチを抜いたら1点。ウチはなぁ。眞子からボール奪って、アソコのゴールポストに叩き込んだら1点。……それを繰り返してなぁ。十点先取で勝ちって言うので、どぉ?」


うん?なにその勝負方法?


なんか明らかに、凄い私にだけ有利なハンデマッチな様な気がするんですけど。


なんで、対等な勝負をしようとしないんだろう?



「あの……ひょっとして、私の事なめてる?」

「うん。そんな心配せんでも、滅茶苦茶なめてるで。この勝負方法で、必ずアンタをギャフンと言わしたるわ」


あれ?

楽しい気分とは裏腹に、なんか今の発言には腹が立つなぁ。


あぁそれはそうとさぁ……あんなのモノ、いつの間に取り付けたんだろね?

確か、あそこのゴールポストがある場所って、真琴ちゃんと、津田さんが一緒に昼食を摂ってた場所だよね。


しかもご丁寧に、バッチリとバスケのゴールポストの高さに設置されてる。


これって、先生にバレない様に道具を自分1人で運びながら、エッチラホッチラと、アソコにくっ付けたのかな?


まぁまぁ、それがあるなら、あるんで良いんだけど。

確かこの子って……あの『例の体育の授業』のバスケの時には居なかったよね。


なら、実力は『未知数』って事かぁ。


だったら最初から崇秀のトレースをして、逆にこの天狗娘を『ギャフン』って言わせてやろうかなぁ?


そうやって、自称、天狗の鼻をへし折るってのも悪くないしね。



うん……そう考えたら、また楽しくなってきた。


飯綱ちゃん……覚悟しておいてね♪


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


飯綱ちゃん、眞子の正体を一瞬で見破りましたね(笑)

……っとは言え。

極一般的な中学生なら、普通は意地悪眞子の正体なんて見破れた物ではありません。


なら当然、その観察眼に優れているのにも理由がある訳なのですが。

この辺については後々語って行きたいと思いますので。

次回は、眞子VS飯綱ちゃんのバスケの試合をクローズアップしていきたいと思います♪


なので、もしこの勝負の行方が気になりましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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