766 加速する疎外感

 素直ちゃんとの約束で、未だに意地悪眞子を続ける中。

奇跡的に声を掛けてくれる子がいたのだが。

その子に便乗して眞子と仲良くなろうとした4人組を一蹴してしまった事で……全てが元の木阿弥に。


果たして眞子は、いつ、学校での友達が出来るのか?


***


 ……翌朝。

相も変わらず早起きして、満員電車に乗って学校に行き。

いつも通りのふてぶてしい態度で教室の中に入ってみると……


私が入るまで凄く騒がしかった教室が、私が中に入った瞬間。

一瞬だけ、ざわめいた後、一気にみんなが、今までしていた会話を全て打ち切り。

誰もが完全に口を閉ざして、我先にと自分の席にサッと座る。


私の前の席の子なんか……微妙に震えてるし。


この後も、偶にチラチラと変に気を使って私の方を見ながら、なにかに怯える様に静かにして、教室全体が静まり返り、物音1つ立ってない……


なので、ただ、此処にあるものと言えば『なんとも言え無い様な、ギスギスした空気だけが充満している』


あぁ……私のせいだ。


けど……この私自身も嫌な眞子を辞める訳には、どうしてもいかない。

なんとしても継続しなきゃならない。


1度した約束だけは、絶対に守らないとね……


そんな風に、少し居た堪れない気分になったので、鞄を置いてから、一旦トイレに行く事にした。

このまま私が教室に居座ったんじゃ、他のみんなにまで迷惑を掛けるので、学校生活を楽しく送れなくなっちゃうからね。


……ごめんね。


***


 こうして私は授業には出て、休み時間は悉く教室以外のどこかへ行く……そんな孤独にのみ支配された毎日を送る羽目になった。


この一件以降、前まで以上に教室に居ずらくなった分、現状では好転の兆しすら見えない程、だいぶん悪化してると言えよう。


こうやって1人孤独に学校生活を過ごしていると、人と接せられなかった時代が、前にも増してフラッシュバックしてくる。


それだけで、ドンドンと気分が滅入っていく。


だから……今日は一時間だけ、心のリフレッシュを計る為に授業をサボって、ある所に行く事にした。


***


 ……凄く久しぶりに、崇秀と、真琴ちゃんが、いつもタバコを吹かしてサボっていた屋上へ来た。


此処が、落ち込んでる私が来たかった場所。


半年前と、なにも変わらない屋上からの景色を眺めているとね。

崇秀と2人で過ごした楽しい時間を思い出し。

まるで崇秀が、この場に居てくれる様な気持ちになって少しだけ気が晴れる。


まぁ実際の所は……ただの現実逃避でしかないんだけどね。


偶には、こう言うリフレッシュも必要だと思う。



そこに……



「なんや、珍しいなぁ。こんな所に、お客さんかいな。……それとも先生にサボってるのが、バレたんかなぁ?」

「誰?」


どうやら、私以外にも、此処にはサボりの先客が居た様だ。


此処の鍵さえ持ってれば、サボりの『定番』と言えば定番だからね。



「『誰?』と聞かれたら、名乗らなアカンわね。ウチは飯綱……飯綱神楽(イヅナ・カグラ)や。アンタは?」

「私は、3-Cの向井眞子だけど」

「3-C?なんやそれやったらクラスメイトやんか。良かったら、仲良ぉしたってなぁ」


そう自己紹介した飯綱さんは、私に向かって、なんの蟠りも無い無邪気な笑顔で微笑んだ。


翳りの無い笑顔。

なんか、凄く人懐っこい子だなぁ。


しかも……関西系だね。



「クラスメイトなんですか?ですが、アナタとは、教室では1度もお逢いした記憶がありませんが」

「あははっは……アンタ、ムッチャ面白い事言うんやねぇ。なんでウチが、学校の授業なんかに出なアカンのよ。アホちゃうん?」


えっ?その言い草だと、授業には全く出てないって事?


それともなに、この子も学校の授業を無視して、黙々と自分で勉強を押し進めてる系の子なのかなぁ?



「えっ?でも、授業に出ないと……」

「えぇねんって、えぇねんって。勉強なんか、アホで、それしかなんも出来ひん子が、必至のパッチでしとったらえぇねんって。あんなもんはなぁ。ただのアホのする事や」


うわっ!!此処最近の私を……全否定されてるよぉ。


そりゃあないよぉ。



「そうですか。では、飯綱さんは、勉強しなくても、相当、勉強が出来る方なんですね」

「いいや。勉強なんか全然出来ひんよ。もぉサッパリわ~~~や。数学なんか見たら、それこそサブ疣出るわ」

「えっ?えっ?」

「なに驚いてるんよ?アンタって、ホンマおもろい子やね。ほんだら、逆に聞くけどなぁ。勉強出来たら、なんになるん?……但し『嫌な事に立ち向かう精神を養う』って言うのんだけは無しやで。そんなん、ウチみたいなアホ以下の人間でも、簡単に解る様な事やねんから。それだけは、絶対に無しやで」


うっ……いきなり説明しようと思ってた『確信』を封じられた。


そこを理解出来てるって事は……この子……自分で、自分の事を『アホ』とか言ってるけど、本当は頭良いんじゃないの?


なら此処は1つ、普通じゃない崇秀の言ってた変な理屈でも言ってみるかなぁ。


此処を一発で理解出来たら凄いからね。



「勉強の意味ですか?……簡単じゃないですか。複合原理を得る為ですけど」

「ふ~~~ん。そうくるかぁ。アンタ……ホンマに面白い事言うねぇ。それ、本気で言うてるん?」

「別に、冗談を言ってるつもりはありませんけど」

「そうなんや。ほんだら頑張りな」


へっ?



「ちょ!!なんですか、それ?散々、人に勉強の話を聞いて置いて、答えたら『頑張れ』って、なんなんですか?」

「なんもないよ。ただ聞いてみただけ」


なにこの子?

変に期待して、真面目に応えた私が滅茶苦茶馬鹿みたいじゃない。


あぁでも……こう言うタイプの子って、今までに知り合った事の無いタイプの子だなぁ。


ただ、今、少し話しただけで思った事なんだけど『凄く自己中な子』だと言う事だけは、恐らく間違いないね。


でも、こう言うタイプって嫌いじゃないんだよね。



「ハァ、だったら、少しは勉強をなされたら如何なもんですか?」

「嫌やね。絶対にお断りやわ。……なぁなぁ、そんな事よりさぁ眞子。ここにサボりに来たんやったら、ちょっとウチと遊んでみいひん。……アンタ、噂ではバスケが、メッチャ上手いねんやろ」


バスケかぁ。


うん、ストレスがおかしなの方向で溜まってるから、体を動かすのは悪くない。

今の私には、実に、悪く無い提案なんだけどねぇ。


でもね。

今のキャラじゃ、それよりもなによりも、呼び捨てされた事を、先に指摘しなきゃいけないから、そこをクリアーしてくれたらね。


……どうせまたドン引きされるんだろうなぁ。


&傲慢な態度で、ごめんね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なにやら人懐っこい関西系の変わった子が登場してきましたね(笑)

そして会話も、なにやら弾んでいる様子。


……っとは言え。

その一歩先に進むには『意地悪眞子をクリア』して貰わなきゃいけない訳なのですが。

果たして飯綱ちゃんは、前回の森田君の時の様な事もなく、そこをクリアしてくれるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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