760 あの子のご帰還

 様々な事象から、鬱屈した日々を送る眞子だったが。

海外から『ある物』が届いた事にテンションが爆上がりする。


一体、彼女の元に何が届いたのか?


***


 明らかに、この大きさの郵送物と言えば、あの子のご帰還。

誰がどう考えたって、私の愛機の『79 Sting -rayちゃん』ご帰還じゃん。


それ以外には考えられない!!


なので、なにも考えず外に付いている段ボールを綺麗に剥ぎ取って行き。

ハードケースの『Musicman』の文字が見えた時は、余りの懐かしさに涙がポロポロ出てきましたよ。


そんで……ハードケースの中を開けて、中身を見てみたら!!


・・・・・・うん?


あれ?……なんじゃねこれは?


『原形留めてないし……』


あれれ?


いやいや……そうは言ってもね。

別に『79 Sting -rayちゃん』の形自体が、なにか変わってる訳じゃないんだよ。


基本的には『ステグレちゃん』


ただ、目に見えて変わった場所があるとすれば。

①PUが以前の市販品の物から『骸さんオリジナルのPU』に変わってる。


しかもね。

このPU、元は1個だったんだけど。

フロントに『ハムバッカー系』リアには『ディマジオ系』が設置されていて。

そのフロントPU自体には『翼』をイメージされたであろう綺麗なグラフィックが書き込まれているの。


ふふ……なにこれ、超可愛いんだけど♪



②フレットを排除してフレットレスに変更。


まぁこの辺は多分、多種多様な音に対応出来る様にジムさんが改造してくれたんだろうね。

元々私自身がフレットレス使いだったし。


後、ネックのインレイもPU同様に『翼』のイメージのグラフィックが入っている。


これもなんだか可愛い♪



③そんで、これが究極なんだけどね。


ボディ全体に、薄く彫り込まれた『鴉天狗』のグラフィックが、凄く印象的。


しかもね。

ボディ自体が真っ黒に塗り替えられてるんだけど。

ブラックライトを当てると、この『鴉天狗』が闇夜に浮かび上がるんだよね。


でも、これだと凄い目立ちたがりみたいだね。


ふふふっ……こう言うの好きだけど♪



④おまけ。


これには、最初、全然気付かなかったんだけど。

周りの温度の上昇に合わせて『鴉天狗の眼』が『ビカビカと光る』んですよ。


まぁ体感的に感じる温度の上昇で、眼が光るみたいなんだけど……


これさぁ。

会場が相当盛り上がってないと……多分、光りもしない様な高難易度設定だね。


まぁまぁ、それぐらいの高設定の方が、観客の皆さんの熱狂度を測るには良いのかもしれないけどね♪



……そんな、全く姿の変わった『79 Sting -rayちゃん』が到着した訳ですよ。


……あぁでも、そう考えたら。

日本に帰って来てからも、今までお世話になった『スタファちゃん』には悪い事をしたなぁ。

なんか此処数ヶ月、結構な数のライブで使わせて貰ってたのに、全然満足させて上げられなかった感じだったもんなぁ。


……かと言って、私には、先立つお金無いから買い取れないしね。


好みの良い音を出してくれる良いベースなんだけどなぁ。


けど、返すしかないんだよねぇ。



まぁまぁ、そんな嬉しさと悲しさが心に共存してる訳なんですが。

まずは、なにを置いてでも『79 Sting -rayちゃん』のお礼の電話をする事が必須。


なので早速、国際電話を使って、ジムさんに電話を掛けてみた。



『プルルルルル……プルルルルル……プルルルルル……ガチャ!!』



「ハイ、骸……オマエ、誰だ?」

「ジムさん、ご無沙汰してます。鞍馬です」

「あぁ~~~ん、鞍馬ちゃ~~ん。おじさん、鞍馬ちゃんの声を聞きたかったぁ~~」


うわっ!!テンション高ッ!!



「ははっ……相変わらず、お元気そうですね」

「まぁまぁまぁまぁ、鞍馬ちゃんが、こうやって電話さえしてくれりゃあ、オイラは、いつもこんなご機嫌な感じさ」

「ははっ……」

「……っで、なんの用だい?用事があるんなら、オイラが、今から日本に行こうか?」


この人は……



「あぁ、いえ、大丈夫です」

「そうかい?言ってくれれば。店を休んででも、直ぐに駆け付けるんだけどなぁ」

「いえいえ、とんでもない。そんなの恐れ多いですよ」


本当に来てくれそうで、怖いな。



「……っで、結局は、どうしたんだ?」

「あっ、あの、ありがとうございました。『79 Sting -rayちゃん』が今しがた届きましたんで、直ぐにお礼をしようと思いましてご連絡させて頂きました」

「オッ!!漸く届いたか……っで、どうだよ?良い感じだろ。ソイツは、オイラの渾身の作品だぞ」

「あぁ、もぉ、開けてビックリしちゃいましたよ。格好良過ぎて卒倒しそうになりましたからね」

「そうかい、そうかい、そんなに気に入って貰えたんなら、オイラも満足だ」


いや……あれを、気に入らない人が居ますかね?

私達ミュージシャンは、基本的に目立ちたがりの人が多いですから。

こんなに完璧なまでに目立つ仕様のベースにして貰ったら、誰だって気に入っちゃいますよ♪


……ってかね。

『鴉天狗』が自分のロゴみたいな感じだから、余計に嬉しいです。



「んじゃあ、あれだな。これで『GUILD 67 STAR-FIRE4』は、お払い箱だから。悪いけど、着払いで送って貰えるかい?」

「あぁはい、勿論です。あぁでも、良いんですか?『着払い』で送っちゃって」

「あぁ、全然構わないよ。なんなら日本まで取りに行くけど」

「あぁ、いやいや、流石に、そう言う訳には行きませんよ」

「そうかい?言ってくれれば、直ぐにでも行くよ」

「あぁいや、とんでもない。恐れ多いです」


あの……ひょっとして、日本に来たいんですか?


良かったら、幾らでも案内しますけど。



「ちっ……じゃあ、しょうがない。取り敢えず『79 Sting -ray』を入れてた段ボールにでも詰めて、送り返してくれ」

「あっ、はい。わかりました。綺麗に梱包して送らせて頂きますね」

「あぁ、まぁ別に綺麗に梱包まではしなくても良いけどね……あぁそれはそうと、少し聞きたいんだが。鞍馬ちゃん、最近の調子はどぉだった?」


あぁ……愚痴でも良いですか?



「あぁ、はぁ、まぁ、なんと言いますか。ライブをしてたら、観客の皆さんには物凄く盛り上がって頂いてるんですけど。最近、なんて言うか、こぉ、ズッと物足りない感じがしてまして……なんか妙に、心が空回りしてる感じなんですよね」

「ヤッパリそうかぁ。鞍馬ちゃんでもダメだったかぁ」

「えっ?えぇっと、それは、どういう事ですか?」


なんだろ?

ジムさんの言葉は、まるで、こうなる事を予言してたみたいな言い方だ。


なんですかね?


それともまた私が、崇秀の時みたいに、ジムさんにも完全に心理を読まれてるだけなんですかね?


『眞子の心は、いつも丸裸』って奴ですか?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


( ´,_ゝ`)ププッ……眞子のテンションがいきなり爆上がりしましたね(笑)

しかも眞子は、ビルダーとしてのジムさんに大きな信頼性を持ってるのかして、まさに『いつもの眞子』の様な対応で。


……っとは言え、此処まで露骨に態度が変わるのもおかしな話。

一体、何故、此処まであからさまに態度の変化が起こるのか?


そして、ジムさんの言った『鞍馬ちゃんでもダメだったか?』の真相とは一体なんなのか?


次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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