759 苦悩

 昼間の謝罪の為に、眞子の元を訪れた山中君だったが。

余りの眞子の傍若無人ップリな態度や言動が元で、再び山中君とは揉める事に成った。


そして、その再度揉める事になった原因の中でも。

そこに素直ちゃんの件や、自身の演奏の件だからが加味されていたからこそ……山中君も引くに引けない状態になっていた為。


***


 ……さて、くだらないハプニングも片付いた事だし、サッサと家に帰ろう。

その練習とやらをした成果や実力が、こんな程度の演奏じゃあ『話にもならない』以前の問題。

私は疲れ果てている素直ちゃん、木根さん、山中君、山口君、梶原君を見ながら、呆れ顔になって帰る事になった。


今回、直接一緒に演奏して良く解った事なんだけど、矢張り、この人達は、私と以前一緒に演奏した時からなにもレベルアップもしていなかった。


今、それを肌で実感した感じ。


ってか『この数ヶ月なにをしていたの?』って言いたくなるレベル。


……そりゃあまぁ、贔屓目で見れば。

木根さんや、梶原君や、山口君は、昔に比べれば、見事なまでにと言える程、格段にレベルアップはしている。


此処に関してだけ言えば、大したものだと言え様。


けど、そんなものは所詮、素人に毛が生えたレベルでの話でしかなく。

プロに通じるとか、そう言うウンヌンカンヌンの話ではない。

ただ、ちょっと上手くなっていただけに過ぎない。

ご存じの通り、私も、彼等彼女等同様の『素人』なのだからこそ、この評価は正しいと思う。


……それにしても、山中君と、素直ちゃんって、こんなに下手だったっけ?


もぉ一回初めから、小さなライブハウスからやり直したら……どぉ?



「ねぇ。……もぉ、いい加減帰って良い?」

「なんでや!!なんでやねんなぁ!!俺かて、練習サボった日なんか1日も無いねんぞ!!なのに、なんでやねんな、これ!!」

「ただの事実なんじゃない。……じゃあね」

「眞子ちゃん待って……」

「ハァ……この期に及んで、なに?なにかまだ用事?」

「なんで?僕、一生懸命頑張ってるのに、なんで?」

「(´Д`)ハァ…多分それってさぁ、素直ちゃんが一生懸命になったつもりなだけなんじゃないの?……ってか、人の事まで知らないわよ」


甘えないでね。

甘えて貰っても、なにもする気は無いから。


ちょっとは自分で考えて、自分だけの力でその壁を突破してみれば。



「ねぇ、眞子ちゃん。僕、頑張るから、もっと頑張るから……」

「ごめんね。もぉそれは聞き飽きた。素直ちゃんは、いつもそう言って、頑張ってるつもりに成ってるだけで、実際はなにもしてないじゃない。そう言う事は、本当に頑張ってから言おうね。……じゃあね」


さようなら。


***


 ……また足りない。


……なにもかもが、物足りないよぉ。


……本当に、こんなので良いの?


誰か、私を満足させて……


昨晩に引き続き、今晩のHELPに来たライブでの感想も、矢張りこれだった。

こんな風に愚痴ばかり言いながら演奏を続けても、なんの意味もない事は自分でも良く解っている。

でもアナタ達は、なんの為に、高いお金を払ってまでライブハウスを借りてライブをやってるの?

こんな程度のレベルの演奏を観客の皆さんに聞かせて、なにがしたいの?

こんなもので、本当に満足を勝ち得てるの?とでも言いたいの?


人をHELPに呼んで置いて、この体たらく。

ほんと、馬鹿にするのも、もぉいい加減にしてよね。


この分じゃあ、もぉ日本になんか居ても意味が無いのかなぁ?


もしそうなら、またアメリカに戻りたいなぁ。



こんな生活、もぉヤダ……


***


 ……また次の日も、昨日に引き続き『不発のライブ』だった。


なのにも係わらず。

なんであんなに観客の皆さんは嬉しそうな顔をしてまで、凄く盛り上がれるの?

今日のライブなんて、どこをとっても、良い音なんて、なに1つとして出てなかったよ。

普通で考えたら、こんなの、クレームが出てもおかしくはないレベルの『タダの外れライブ以下のライブ』だよ。


リズム担当のドラムは。

お馬鹿ちゃんのディックさんに比べれば……バラバラで、ボロボロの極みで、評価するのも、おこがましいレベル。


ギターの音は。

変態仮面で裏切り者のホランドさんや、大好きな崇秀に音に比べれば……聞くも無惨なカス同然、聞くに堪えない様な雑音。


キーボードは。

意外にも、ちょっと子供っぽいエディさんに比べたら……ただ演奏してるだけ以下の、なにやら訳の解らない音で、しかも音の着地点すらアヤフヤ。


ボーカルは、一番論外。

ちょっとHなミナさんや、これまた大好きな奈緒ネェに比べたら……ただの雑音にすらなってない悲しいレベル。


それ以前に、あれって歌なの?


こんなのが、私が日本に求めてきた音楽なの?


もぉ……本当に限界だよ。


こんな生活耐えられないよ。



うっ……


うっ……


誰か助けて下さい……もぉヤダ。


***


 私は、この日を境に、とうとう学校に行かなくなった。

たった3日間、学校生活を過ごしただけで、煩わしい人間達に会うのが嫌で、学校自体に行く気が失せた。

寧ろ、学校に居る人間とは、誰とも顔を合わせたくない。


逢えば、鬱陶しく感じるだけだ。


……まぁまぁ、それでもさぁ。

勉強に関しては、家で、ちゃんと毎日ヤル気満々でしてるしさぁ。

毎朝5時には起きて、身嗜みも当然整えてる。

それに、毎日の様にスーパーに買い物に行って、崇秀のレシピを見ながら楽しく料理を作ったりもしてる。


だから、日常生活にのみ、なにも文句は無い訳ですよ。


あぁ……それにさぁ。

あれからも懲りずに、毎晩の様に、どこやかしこのバンドのHELPでライブで演奏はしてるんだよね。

序に言えば、お昼前ぐらいに1時間程『ランニング』をする事を日課に加えた。


まぁ……でもね。

そんな日課を毎日繰り返しながら、今4月の下旬なんだけどね。

未だに、最初に感じた物足りなさが消える気配が無いんですよね。


これって私自身が、アメリカで贅沢な音を味わい過ぎて、もぉダメなんだろうか?


***


 ……そうやってる内に、アッと言う間に5月のゴールデンウィークを越え。

そろそろ、雨が鬱陶しい梅雨の時期を迎え様としていた。


外は毎日の様に雨が降り。

洗濯物も家干しになるんで、思った様に乾いてくれない。


そう思いながらも……私は、こんな所で、一体なにやってんだろ?


***


 ……そんな鬱屈した毎日を送っていた、ある日。

完全に密閉された状態で、海外からの大きな郵便物が届いた。


それを受け取った瞬間、私のテンションは久しぶりに大きく上がった。


だって、これって……♪


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


アメリカで贅沢な音を体験し過ぎたのが原因なのか?

それとも、眞子自身の精神面の成長が、そう言う風に影響を及ぼしてしまっているのか?


どちらにしても、どうやら眞子は『現状に満足出来ない病』に罹ってしまった様ですね。


さてさて、そうなると打開策を探さないといけない所なのですが。

今の眞子は『出来る人以外は認められない人間』に成っちゃってるし。

当然、自分が認めていない人間に相談なんて恥ずかしい真似は出来たものじゃありません。

勿論、こんな些細な問題を『出来る人にも相談をする訳にも行きません』しね。


まさに八方塞がり状態。


果たして眞子は、この状況をどうやって打破するのか?

そして、そんな眞子のテンションすらも上げてしまう、海外から届いた物とは一体何なのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

(次回は、意外な展開が待ってます(笑))

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