756 腹黒

 転校初日で嫌われ者に成りつつある眞子。

されど本人は、どこ吹く風で、そんなクラスメイトや素直ちゃんを無視。


更に数学の授業も聞かずに、自主勉強していたら……


***


 ……数学の授業中。

特に先生の話を聞かずに、自分に科した勉強を黙々としていたら。

フッと気付いた時、数学担当の河本先生に教科書で頭を『ポコッ』っと叩かれた。


もぉ、なんなのよ?

確かに授業は聞いてないかもだけど。

別に、そんな所は今更学ぶ所じゃないから、聞いてないだけなんですから、自習してても良いじゃないですか。


ってか、そんな程度の事でイチイチ私に構うなっての……



「オイ、向井。他の勉強をするのは結構だけどな。ちゃんと数学は出来てるのか?」

「……先生。その前に髪が乱れますから、教科書で頭を叩くのはやめて下さい。それに、その程度の問題なら、なんの問題なく解けますんで、ご心配なく」

「あのなぁ、向井」

「あの、すみませんけど。私の事は放って置いて貰って結構なんで、授業を続けて下さい。……それとも、あの黒板に書かれた問題を、全問解いた方が納得して頂けますか?」

「オマエなぁ……そこまで言うなら、解いてみろ」

「はい」


もぉ……そんな所の勉強は、今更どうでも良いんですよ。


いつの問題を出してるんですか?


面倒臭い。


まぁ……それで先生が納得するんなら、良いんですけどね。


私は、途中の数式を全部省いて『解答だけ』を一気に黒板に記して、自分の席に戻る。


……っと同時に、教室内がざわめき立つ。


この程度の問題を解いたぐらいで、イチイチ騒がないで欲しいんだけど……



「これで良いですか?」

「向井、解答は合ってるがな。途中の数式は、どうした?」

「そんなのワザワザ書くまでもありませんよ。全て頭の中で計算出来てます。無駄ですよ無駄」

「なら、この問題も解いてみろ」

「ハァ~~……じゃあ、それを解いたら、もぉ私には構わないで下さいね」

「兎に角、解いてみろ」

「ハァ~~~」


また『解答だけ』書いて席に戻る。

此処で再び、教室内にざわめきが起こる。


それにしても河本先生……私の態度が腹に据えかねて怒る気持ちは解りますがね。

その問題……私立の名門中学でもない限り、公立の中学じゃ、絶対にやらない様な高校生の問題ですよね。


教えても居ないのに、そう言う事をして良いんですか?

ちょっと大人気ないんじゃないですか?



「これで良いですか?合ってますか?」

「……合ってるな」

「じゃあ、もぉ構わないで下さいね」

「……問題児め」

「何故、私が問題児なんですか?先生に出された問題には、ちゃんと解答しましたよ。問題があるのは、高校の問題を出す先生の方じゃないんですか?良いんですか、そう言う事して?」

「私は、オマエの、その態度の事を言ってるんだ。なんなんだ、その態度は?」


都合が悪くなったら……今度は態度ですか?


やる事は子供っぽいのに。

実に大人らしい、いやらしくも卑怯な意見を言ってくるんですね。


面倒臭い人なんですね……河本先生も。



「あの、すみませんけど。勉強の邪魔なんで、先生は授業を続けたら、どうですか?」

「なに?」

「そうやって私だけに集中してたら、PTAが文句言って来ますよ」

「向井……後で、職員室に来い」

「ハァ~~……解りましたから、勉強の邪魔しないで下さいね」

「コイツ……」


面倒臭い……此処に居る全員、纏めて死ねば良いのに。


***


 呼び出しをされたのは久しぶり。


まぁ以前とは違う意味で、授業の妨害をしたんだから、しょうがないか。


けど……それを煩わしいとは感じるけど。

後は、特に、なにも感じない。

どうせ行った所で、自己主張するだけの先生の説教が待ってるだけだもんね。


けどまぁ、それも時間の無駄だと言えば、時間の無駄だし、なんか良い回避方法はないもんかなぁ?


一応、最低限の対応策だけは考えてあるけど、先生はそれに対して、どう言う反応をするんだろうね?



まぁ、どうでも良いけど……


……そう思いながら、職員室に入って行く。



「失礼します」

「あっ、あっ、向井さん、ダメだよ。河本先生を怒らせちゃダメだよ」


顔を合わせた途端、保身ですか島田先生?


ピィピィうるさいですよ。


此処は、職員室なんだから。

ちょっとは生徒の見本になる様な態度で、静かに話したらどうですか?


馬鹿みたいに騒ぐのは、3-Cの子供達だけで十分ですよ。



「すみません」

「あっ、向井さん。ちゃんと反省はしてるんだね。だったら先生と一緒に、河本先生に謝ろ。謝りに行こ」

「そうですね。私も大人気なかったですから。これは謝罪に値する行為なんでしょうね」

「えっ?」

「ですが、話が拗れるので島田先生は一緒に来て頂かなくても結構です。私一人で謝りに行きますから」

「えっ?でも、向井さん」

「時間が勿体無いんで……放って置いて下さい」

「えっ?」


雛先生は問題を拡大するだけだから来なくて良いですよ。


ただの迷惑なだけの存在ですから。


私は、河本先生の元に行き、直ぐに謝罪を始める。



「おぉ、来たか、向井」

「はい、先程は失礼致しました」

「なんだ?さっきとは打って変わって、やけに素直な態度だな」

「こんな事をしても、時間が勿体無いですからね。謝るべき時は謝ります」

「オマエって奴は……」

「あの、それと先生。今やってるテキストで、少し解らない問題があるんですが教えて頂けますか?」

「オイオイ、怒られてるのに、勉強の話か?」

「すみません。先生に、どうせ教えて頂けるなら、もっと有用な勉強をしたいもので。是非、宜しくお願いします」


深々頭を下げて、お願いしてみる。

これが、お互いにとって、一番良い方法だと思ったからだ。


別に、これと言って解らない所がある訳じゃないんだけど。

事実としては、無理矢理探せば、解り難い所なら2・3点は見付け出す事は出来る。

敢えて、そこを聞けば、違うアプローチの仕方が見えて来るかも知れないから、それを教えて貰った方が有用。



「ふぅ、呆れた奴だな。……っで、どれなんだ?」

「此処なんですが。此処の数式の展開が、自分1人ではイマイチ良く解らないんですよ」

「あぁ、此処か……確かに、引っ掛り易い所だな」

「そうなんですか?」

「あぁ、一般的には、展開し難い数式だからな。……まぁ、そうは言っても。こうやれば簡単に解けるんだけどな」

「あっ!!本当ですね!!凄い先生!!そっか、そっか、そうすれば良かったんですね!!」

「えっ?オマエ……」


勿論、そのやり方なら知ってましたけどね。

こうやって喜んだ顔をすれば『反抗的な生徒』と言うよりも、ただの『勉強好きな生徒』に見えるでしょ。

それで自分が教えて、生徒が嬉々として喜んだのなら、先生も嫌な気分はしないし、自己顕示欲が満たされるでしょ。

序に言えば、私の事を『誤解してた』って思うんじゃないですか?


勉強好きな生徒を、嫌う先生はいませんからね。


なので良かったら他の先生にも、それとなく私の事を言って置いて下さいね。


凄く助かりますんで。



「先生。さっきは、本当にすみませんでした。また解らない所が有ったら、こうやって休み時間に教えて貰えますか?」

「あっ、あぁ、一向に構わないが。……寧ろ、自主的に勉強したい生徒を拒む理由なんてないからな」

「あっ、ありがとうございます。あっ、先生。出来ればなんですけど。他の先生にも、それとなく頼んで置いて貰って良いですか?私、自分では解らない所が、偶にあるんで」

「オマエって……本当に、勉強が好きなんだな」

「好きと言いますか。……解らない所が有るのは気持ちが悪いですからね。直ぐにでも解きたい性分なんですよ」

「そうか。わかった。なら、俺から、他の先生にも、一応はそれとなく言って置いてやる。けど、授業もちゃんと受けてくれよ」

「あぁはい……すみません」

「あぁ、なら、もぅ良い。教室に戻って良いぞ」

「あっ、はい。失礼します」


ハァ~~~、面倒臭い。


まぁ、これで『内申点』が稼げるんだから安いものか。


こう言う生徒って稀にしかいないからね。

本心じゃ、私みたいな生徒が現れて、先生方も嬉しいんじゃないですか?


……まぁ別に、内申点なんて、今更どうでも良いんだけどね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


眞子……強かな行動で、河野先生を上手く躱しましたね。


なんと言いますか。

アメリカから帰って来てからと言うもの。

強かかつ、なんだかやや腹黒な感じに成ってるのですが……そんな事をしてて大丈夫なんですかね、この子は?


さてさて、そんな中。

次話では昼休みに成ってしまう訳なのですが。

こんな眞子は、一体、どんな昼休みを送っているのか?


次回はその辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る