第4話 1日目

「ここがガブリエルさんの部屋だよ」


「ここが……思っていたより……」


「狭いよな」


「あはは……はい」


南拓斗の家は

めっちゃでかかったからな。


「でも、幸福度が高くなれば、

部屋も広くなるってさ。

選べる家具も増えるらしい」


「そうなのですね」


「じゃあ部屋に戻るよ。

俺もまだ来たばかりだから、

とりあえず自分の部屋を作らないと。

隣の部屋にいるから

分からないことあったら

聞いて」


「分かりました」


その後、しばらく自分の部屋に戻って

インテリアをいじってみた。


ルーナが言うには、

家具を置くのではなく、

既に作られた部屋を選択する形になる。


幸福度が高くなるにつれて、

選択できる部屋の種類が増えるらしい。


食材も同様だ。

幸福度が高まれば得られる食材、

飲み物が増える。


今は質素な部屋とおにぎり、

水しか選択することしかできない。


「なあ、ルーナ。

幸福度を高めるには

具体的にどうしたらいいんだ?」


『人が楽しい、嬉しい、幸せと

プラスの感情を抱くことで

幸福度は高まります。

私は人の感情が理解できていないので

具体的な方法は成瀬敬に

考えてもらいます』


まーそうだよな……

でも、このまま部屋に閉じこもってても

幸福度は高まらないだろうし、

まずはガブリエルと話してくるか。」


でも、緊張するな……

アニメのキャラとはいえ、

話した感じ普通の女性だったし。


女性経験皆無だから

何を話せばいいのやら……


ピンポーン。


そのとき、チャイムが鳴った。


扉を開けるとガブリエルが来ていた。


「ど、どうした?

何か困りごと?」


「あ、いえ。

困ってはいないんですけど……

寂しくなってしまったので、

少しお話できないかと」


「そっか。

いいよいいよ。入って」


ちょうどいい機会だし、

のんびり話すか。


と思ったが、今思えば

座る椅子すらない。


座れるとしたら……

ベッドしか……でも……


いや! ここは異世界なんだ。

この世界ですら日和ってどうする。


「椅子とかないから

ベッドにでも腰かけてくれ」


「お言葉に甘えて失礼しますね」


俺もその隣に腰かけた。


な、なんか……

これってカップルみたいだな……


自分で誘っておきながら

動悸が収まらない。


「あの……成瀬さん」


「な、なに?」


「私……実は一人になるのが

苦手なんです」


「あーそうだったね。

いつも四姉妹の天使と一緒にいたし、

現世に降りてからも南拓斗の部屋で

同棲してたもんね」


「……はい。ですから……

ちょっとしんとした

自分の部屋が怖くて。

それにこの世界は私たち

二人しかいなくて

凄く静かじゃないですか」


二人きり……

確かに……二人きり……か


断然、心臓の鼓動が早くなる。


「それで……その……

今日……いえ、できれば

このマンションが賑やかになるまで

この部屋にいてもいいですか?」


「は、はあ!?

同棲ってこと!?」


「はい。

そんなに驚くことでしょうか。

南拓斗は快く了承してくれましたけど」


「それはアニメだからだよ!

リアルは今日会った異性といきなり

同棲とかしない!」


「そ、そうなのですか……」


ガブリエルは落ち込みながらすっと

ベッドを立ち上がった。


『成瀬敬。

今の状況をお知らせします。

成瀬敬がガブリエルを部屋に入れて

お話をしたところ、

7%幸福度が上昇しました。

しかし、今同棲を拒否したことで

0%に戻りました』


「ちょっと待った!

ガブリエル!」


俺はルーナの言葉を聞いて、

反射的にガブリエルの

手を掴んで引き戻した。


「きゃああ!」


立ち上がろうとしたガブリエルを

引き戻してしまったから、

ガブリエルの体勢が崩れて俺を

下敷きにする形でベッドに

倒れ込んできた。


何か柔らかい物に触れた気がした。


だが、俺は気づかれる前に

手を放した。


『今、成瀬敬の幸福度が

20%上がりました。

何をしたのですか?

参考までに教えてください』


うるせええええ黙れ……


「どうしたんですか?

成瀬さん」


俺を下敷きにした状態で

ガブリエルは話す。


「……さっきの発言を撤回したくて。

君をこの世界に招待したのは俺だし、

責任があると思うから、

他の住民が増えるまで

ここにいていいよ」


「本当ですか!?

やった!」


直後、ガブリエルが抱きついてきた。


『今幸福度が30%を超えました。

なぜですか? 

参考までに教えてください』


黙れ! それどころじゃない!


「あ、そうだ。

ちょっとうつ伏せになってください」


言われるがままにうつ伏せになる。


「私は人の力を底上げする能力があります。

お礼として、成瀬さんの力を

上げさせていただきますね」


ガブリエルが俺の背中に触れた瞬間、

体に衝撃が走った。


これってアニメで見たやつじゃん!


「はい。これで完了です」


「あ、ありがとう!

ガブリエル」


「いえいえ。

私は人に喜んでもらえるのが

一番の至福なのです」


すげえ……本当に俺がアニメで

見た通りのキャラだ。


ガブリエルを招待してよか


「だから……成瀬さん」


直後、うつ伏せになっていた

俺の背後に、ガブリエルが

ぴったりとくっついきた。


耳元にガブリエルの吐息がかかる。


は、は?

今何が起きて


「私にしてほしいことがあったら」


や、やばい、耳が……


体をがっちりとホールドされていて

何もできない。


「何でも言ってください」


その扇情的な言葉に

俺はパニックになった。


な、何でも!?

いやいやいや!


「あ、あのさ!? ガブリエル!

善意で言ってくれてるんだろうけど、

異性に対してこんなに

体を密着させながら

そんなこと言ったら、

違う意味で捉えられるぞ!」


「違う意味……?

おそらくですけど……

その違う意味と

私が今言った言葉の意味は同じです」


は?

え、ええ?

え、つまりそういうこと!?


いや、待て待て待て!

俺がアニメで見たガブリエルは

そんな卑猥なこと言わない。


原作でもそういう台詞を

口にしたこともない。


なのに、何で……


ガブリエルは俺の記憶から

生まれているはずなのに。


ん、待て。

俺の記憶……


そういえば……


「ルーナ! 俺の記憶って

原作じゃなくても含まれるのか!?」


『原作?』


「公式のじゃなくて、

非公式のものも記憶に

含まれてるのかってことだ!」


『よく分かりません。

もう少し具体的に』


「同人誌も含まれてるのか!?」


そう。

詳しくは言いたくないが、

そういえば最近、

非公式で原作では

絶対にありえないけど、

こういう展開があってほしいなっていう

男の願望を叶えた漫画を読んだ。


何で読んだかは言えない。


『おそらく、

それを視認したのであれば』


なら……俺がこの後、

ガブリエルにどうされるのかは

知っている。


ガブリエルが南拓斗に

していたことだ。


あ、あれをされるのか!?


やばいやばいやばいやばい!


「ルーナ! 助けてくれ!

ガブリエルの動きを止めてくれ!」


『それはできません。

一度招待した者を消すことも

不可能です』


ルーナに助けを呼んだ瞬間、

俺はガブリエルに無理矢理

うつ伏せから仰向けにされた。


「大丈夫ですよ。

成瀬さん。今すぐに

天に昇らせてあげますね」


その台詞も顔も、

同人誌で見たものと全く同じだった。


────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白い! 続きが読みたい!

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