第17話 壊れた肉親
「――またお前か。俺の娘を傷物に仕上がって。」
「勘違いしているんじゃないぞ。俺らはまだそんな関係じゃない」
「黙れ!」と父親は竹山に殴りかかろうとした。
しかし、彼はレベッカから貸してもらったアイテムを使って。攻撃をカウンターする。
反動で部屋のドアを突き破って倒れる父親。その場から離れる。
その道具はレベッカと初対面に使っていた『いびつな形の綿棒』だ。
「大丈夫か? みぞな」
「ええ、大丈夫よ。うっ……」彼女は倒れる。
「全然平気じゃないか。俺が肩を貸すよ」
黒髪はピンク髪の少女を抱える。
「あ、ありがとう……。あ、そうだ。しんぞー。それ取ってくれない」
みぞなは机にある本を指す。その本は竹山が買ってくれた小説だ。
「これは、あのときの……」
「うん。これはしんぞーが買ってくれた本。苦しいときは、これを読みながら耐えていたわ」
「……耐えていた」
「うん。戻ったあとも、読もうかなと考え――」
竹山はいきなり彼女を抱きしめた。
「え――」
「もういい。もういいんだよ。みぞな。もう我慢しなくても……。もうボロボロだろ? 苦痛だったんだろ?」
「……ううん。そうじゃないよ。私は家族以外に本を買ってもらえるなんてなかったから。嬉しかったんだよ」
「そう、そうなんだけどさ……。俺は、俺はお前の苦しみを知らなくて」
「いいんだよ。私は苦しくなかったから。お父さんがいてくれたし」
「……なぁ。もしもお父さんが人を殺したら、お前は愛するのか?」
「どうして、その質問を……」
「答えてくれ、みぞな」
「……愛せないわ。人を殺したら、もうそれはソクラテスの『善く生きる』に反するからよ」
「俺にはよくわからないが、つまり『善良であれ』ってことだよな。もしお前の親父が人を殺したなら。縁を切れ、なんなら今すぐ切れ!」
「どういう意味かわからないけど。そうなったら縁を切るよ。今のところそんなことないけど」
「俺は『みぞなの心臓』だからな。俺が生きないと」
「ふふ。ありがとう」
みぞなは、くしゃりと笑う。すると近くで彼女の父親が戻ってきた。
「ふざけるんじゃねぇぞ。部外者が!」みぞなの父は包丁を手に持っており。走って、部屋の中に入る。勢いよく竹山の背中に刺さる。
「あ、あぁ……」
少女の父親は、背中を刺された彼の首を引っ張る。体が表向きになり、腹めがけて数カ所、穴を開ける。
「死ね死ね死ね死ね死ね」彼は怒りにまかせて、黒髪の青年を刺す。
「う、みぞな……この中に入れ……」
彼は、傷ついた体を一生懸命動かして、黒い星を指して移動するように命令する。
「で、でも……」
「いいから早く!」
みぞなは急いでこの中へ入っていく。
「おい! 待て!」と。彼女の父親も追いかけるよう、亜空間へ向かう。
(これでいいんだ……。これで、もし生きていれば。みぞな。お前と……)
竹山は何か言いたそうだが、体力の限界か、意識を途絶える。彼は満足そうに目を閉じる。
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