第11話 ショッピングモールに行こう

 ツンツンヘアーの青年がいなくなり、竹山はピンク髪の彼女にこう話す。

「みぞな。今度さショッピングモールにいかないか?」

「ショッピングモール? 何それ」

「いろんな店がいっぱいあるところだよ」


「それって本屋さんもあるの?」

「あぁ。あるぞ」

「古本屋さんも?」

「それもあるさ」

「だったら図書館も?!」

「さすがにそれはないかな……」


「でも、結構あるのね! 面白そう! いってみたい」

「だろー。いこうぜ」

 竹山たちは遊びに行く約束をする。その様子を、板倉たちはみていた。


「あいつら、今度デートするみたいだぞ。休み明け。学校へ着いたら馬鹿にしようぜ」

「……そうか」

 赤髪のツンツンヘアーは素っ気ない態度をしていた。


「ん? どうした? 板倉。乗り気じゃないけど」

「あぁ。少し俺のダチのこと考えてさ」

「山口のことか。あいつなら元気にやっているだろ」


「そうなんだけど。竹山のノートを読んだら思い出してしまって」

「あのダサいやつにか? それは山口に対する侮辱だろ」

 板倉の連れは笑いながら話す。


「……侮辱かもな。」

「……やっぱりお前おかしいぞ。何か悪いものでも食べたか?」

「まぁ。今日はモヤシを食べたからな」


「きゃははは。マジウケる。モヤシ食べたから情が移ったんだぜ」

「ふっははは。そうかもな」二人は大きな声で笑っているが、板倉は心から笑っていなかった。



 そして。約束の日になり竹山とみぞなはそれぞれ行く準備をしていた。

 黒髪の青年は約束の三十分前に待っており、ピンク髪の少女は家に出ようとしていた。

 彼女は玄関先から、父に聞こえるように伝える。


「父さん。私出かけてくるね」

「どこにだ?」

 みぞなは数秒沈黙し、ごまかすように話した。

「……図書館に行ってくるの」

「すごいな。さすが俺の子だ。どんどん勉強して大きくなれよ」


 みぞなの父親は彼女の頭をポンポンとやさしく叩く。


「う、うん。行ってくるね」

「もし、嘘ついてたら、お前を監禁してまで勉強させるからなー」

「……わかった」

 少女はドアを開いて家を出る。


(俺もいい娘を持ったな。俺みたいな誠実で謙虚な人間になれよ)

 父は怖いぐらいにニコニコしながら、一人娘を見送る。



 お昼頃。竹山はショッピングモール近くの駅で待っていた。場所は時計台の前だ。

「そろそろ。来る頃なんだけどな」

「ふふふ、まるでデートみたいですね」レベッカは、からかうように話す。


「まぁ。デートに近いかもな。これも俺が漫画家になるための過程だ」

「その割には嬉しそうですが」

「ほっとけ。それ言われると恥ずかしくなる」

「どうして誘ったんですか?」

「まぁ、俺自身。漫画のネタ集めや人間観察のためでもあるが、みぞなに遊ぶ楽しさを覚えてほしかったんだ」


「確かに、河愛さんは勉強以外の楽しみ方を知らなさそうですしね」

「だろ? だから。俺から誘ったわけ」にやけ顔で彼女の方を見る竹山。それを気持ち悪そうに引いていた。

 女神とわちゃわちゃしていたそのとき。みぞなが待ち合わせ通りに来た。


「おーい。ごめんごめん。遅れちゃってー」

「いやいや。待ってないよ。むしろ、ちょうどいいさ」

「えへへ。ありがとう」みぞなは少し照れている。


「このひと。楽しみすぎて早く来すぎたんだよね」レベッカはクスクスと笑いながら煽る。みぞなに聞こえてないのをいいことに好き勝手話していった。


「おい! うるせえぞ!」彼は恥ずかしそうになりながら女神に当たるも、他の人に見えないわけで一般人から白い目で見られる。


「また、しんぞーにしか見えない守護霊と話しているの? やっぱりすごーい! 私も喋りたいなー」

「あぁ、守護霊と話しているぜ。とっても説明不足の幽霊だけどな」

 彼は自称女神に視線を合わせながらジト目で見る。


「なんですか? なにか言いたそうに私の方を見て……」

「なんでもない。いこうぜ。みぞな。俺がショッピングモールの素晴らしさを教えてやる」

「えー、楽しみ。ソクラテスの本あるかなー」


「え! ちょっと私をおいてかないでください-!」

 竹山はホットパンツの女性をおいて建物の中に行く。


 まずは、みぞなが行きたがっていた本屋さん。もちろん。竹山もこの時代の漫画やアイデアになるための本も探すためだ。

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