第8話 友達になろう

 今日の授業が終わり。生徒たちが一斉に帰ろうとしていた。

「今からカラオケ行かないか?」

「いいねー」

「俺も行ってもいいか?」

「おういいぜ。だったら。あいつらも誘おうぜ」

 男子三人はカラオケに行こうとする。


「さて、だるい授業も終わったことだし、飯買いに行くか」

 ある生徒は飯を買いに行く。


「帰り何にする?」

「ゲーセンいかなーい?」

「いくー」

 ゲーセンに向かおうとする女子二人。


 さまざま、異なる帰り道を目指していた。だが、河愛みぞなは違っていた。


(……学校が終わってしまった。家に帰らなきゃいけない。いやだな)

 と、嘆くように考える。

(なんで学校に宿泊できる校則がないんだろう)

 

 突如。彼女の前に竹山が現れた。

「おい! 河愛。話したいことがある」

 と、彼は誰もいない廊下へと連れて行く。


(なんだろう……。勉強のことかな?)

 みぞなが彼女らしいことを予想していた。


 廊下に着いて、みぞなは彼に質問する。

「え? なに、しんぞー? 化学式の面白さに気がついたとか」

「いや違う。そういうことじゃない。もっと簡単なことだ」


「あぁ、芥川龍之介の羅生門のことね。あれ面白くていいよねー」

「すまない。それよりも簡単なことだ。俺と友達にならないか?」


「え? 友達?! うーん、どうしよう」

「俺と友達はいやなのか?」


「そうじゃなくて、しんぞーとはもう友達だからな。と思っていてさ。それを言われた瞬間、驚いて」


「じゃ、友達として接してくれるんだな」

「当たり前でしょう。もうとっくの通り、友達なんだから」


「ありがとう! 河愛。本当に嬉しいよ!」

「ええ、私も嬉しいー」


(よし。まずは第一関門は突破だな。この調子でいけば、河愛が入院することもないし、俺も漫画家になって有名人にもなれる……。いいルートだ)


 モヤシ体型の彼は心の中でニヤニヤしながら笑っていた。人生の勝利を確信したからだ。


 その様子をレベッカは。

(さて、ここから試練開始だよ。竹山さん)と、彼らの方に視線を合わせ、考える。




 彼は休み明けの数日間。みぞなと会って会話をしていた。


「今回は数学について話すよー。えーとこの公式の面白さは」

「ははは、面白いな……」

 彼は愛想笑いをし続ける。


(我慢……、我慢だ。真蔵。こいつを救えば俺の罪が軽くなり漫画家になれる。こいつの言っていることはできる限り聞き流そう)


「……どうした。しんぞー。楽しすぎて頭の中で計算していたのか?」

「え? ああ、そうなんだけど。俺さ漫画家になろうとしてて、その構想を練っていたんだ」


「そうなのー! だったら私がいろんなことを教えてあげるよ!」

「いいよ、そんなこと。これは俺の決めた道だからやらなくてもいいよ」


(まぁ本心は素人に漫画を教わりたくないという理由だけど、こいつ漫画の『ま』の字も知らなそうだから)


「かっこいいー! 私、漫画読んだことないから、憧れるわー」


「そういえば、アイデアノートとか、まとめているの? 学者もノートでまとめている人が多いから」みぞなは話す。


「ああ、まとめているぞ」

 竹山はカバンからノートを取り出す。使い続けて何年も経っているのかボロボロだ。

「ええ! すごい! みせてみせてー」


「見せないよ。だって恥ずかしいんだもの」

「そうか……しょうがないよね」


(漫画知らないのに見せてもしょうがないだろ。こんな大作取られたらヤダし)

「今度。機会があったらみせてねー」


「ああ、もちろん」と竹山はいうが、心の中で(一生渡すわけないだろ! こんな金の卵を!)と、考えていた。


 彼らの様子を観察していた板倉たちはニヤニヤしていた。

「竹山と河愛ほんとラブラブだよな。からかおうぜー。板倉」

「あぁ。そうだな」


 板倉とその連れが、竹山たちに近づき、聞こえるように話す。

「おーい。お前たち本当に仲がいいんだなー。付き合えよ」

「ハッハハハ。嫌われ者同士仲良くしとけよ」


「……別の場所に行こうぜ。河愛」

「え? ここでもいいんじゃ……」


「黙ってついてこい! 友達だろ!」

 みぞなは「わかった」といい、その場から離れる。


「なんだよ。つまんねえな、こいつら。まぁ今度は教室の生徒全員で馬鹿にしようぜ」

「そうだな」と板倉は悪魔のように口を大きく開けて声を出す。

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