デザートを食べよう

 華南かなんの旧友と別れてから時間が経っていた。依頼が一段落終えたので、霧山きりやまさんは華南かなんと一緒に別部屋で話していて、その間、廿月はつき達は絵凛えりと一緒にケーキを食べている。

 オレンジ色の彼女はパクパクと食べているようだ。その姿を見ている銀髪の男。


「……ねぇ、これ俺らが食べて良いの?」


 彼は恐る恐る質問する。何か怖かったのだ。


「え? 良いんだよ。お母さんを守ってくれたお礼ね」

「……でも絵凛えりちゃんの」


 廿月はつきは何か言いたそうだけど少女のほうが口動く。


「馴れ馴れしく言わない! 私が良いと良いと言ったらいいの!」


 彼女は口調を荒くしながら声を出す。その光景を見た悠輝ゆうきはゆっくりを口を開く。


「そんなお利口さんにしなくても、えりりんから許可得たら良いんじゃないのか? 親友」

「おい! お前は馴れ馴れしくしすぎ! ちょっとぐらい遠慮しろ!」

「ははは、照れるなよ。オレちゃん達に感謝しているくせして」


 悠輝ゆうきは机にバンバン叩きながら愉快な大声を出した。


「実際のところはそうだけど! なんか腹立つ!」

「まぁ、えりりんは年頃だからな。しょうがない」


 金髪の彼女はやれやれとした仕草や表情をしていた。

 

「めんどうな人だな……」

 絵凛えりは彼女をみて呆れていた。


「そういうオレちゃんの性格もかわいげがあるだろ?」

「ないわ!」


 オレンジ髪の彼女は金髪の女性ゆうきに向かって突っ込む。


 その頃。廿月はつきは気にせず、絵凛えりから許可を得たケーキをゆっくりと食べていた。


「そういえばエレンにも食べさせないとな。幻想奇譚トゥーンアクション


 廿月はつき能力エレフンを発動させる。


「うーん。ぼく、ねむねむだよー」

「起こしてごめんな、エレン。君にケーキを食べさせたくて」

「ケーキ! わーい。たべる」


 エレフンは嬉しそうな表情でケーキをパクパク食べる。

 とても、けなげな姿だ。


「そうだな。オレちゃんもウィンピィ出すか。幻想奇譚トゥーンアクション


 同じく能力を出す悠輝ゆうき。何も無いところからアニメキャラが出現する。


「うぅ……。ボク、オオカミだけど食べても良いのかな?」

「あぁ、いっぱい食べて良いぞ。そのぶんデカくなれ」


 彼女が能力ウィンピィを出していると、絵凛えりは話しかけてきた。


「これが廿月はつきさんの能力? ずいぶん、かわいいこと」

「かわいいのは絵本キャラだからね」


「通りで」

 絵凛えりはほんのり口角を上げる。まんざらでもないみたいだ。


「あぁ、それに俺のヒーローだからな」

「ヒーロー?」


「俺が小さい頃から好きだった絵本でアニメ化もしていた」

 

 廿月はつきは嬉しそうな柔らかい表情をしていた。


「ふーん。いいじゃない。あと生意気なことをいってもいい?」

「何のことか分からないけどいいよ」


 廿月はつき彼女えりの発言を許可する。すると、なかなか厳しいことを言ってきた。


「ほぼ初対面の私が言うのも悪いと考えるけど、廿月はつきさんさ。もうちょい感情豊かになると良いよ」

「え? これでも豊かだけど?」


「いや、私からしてみれば全然。感情が乗ってない。まるでロボットみたい」

「……そうか。今度から気をつけるよ」


「何で感情乗っていないかは分からないけど、廿月はつきさんが笑うと良くなるのかなと。あ、勘違いしないでね。私はあなたの無表情が怖いからそう言ったの」


「無表情……そうかもな」

 こわばった笑みを浮かべる廿月はつき


「こんなんじゃ。憧れのヒーローにも顔向けできないよ」

「でも実際、会っているよ」

 

 銀髪の青年はエレフンの身体をトントンと優しく叩いた。


「それは比喩ひゆみたいなもので……」

「後のこの作品は、俺の弟も好きでな。もうこの世にいないけど」

「……どうして」

「殺された。犯人も自殺して」

 柑橘かんきつ色の少女は廿月はつきの言葉に強いショックを受ける。


「……つらいね。そうだったんだ。初めて会ったときから色々とひどいこと言ってごめん」

「いいよ。気にしてない」


「ありがとうね。絵凛えりちゃん」

「はぁ、もうなんでも良いわよ」

 絵凛かのじょは大きく肩を下ろし、後で言いたいことを忘れたのか、口を開くのすら、あきらめる。

 様子を見ていたエレフン。男の子は絵凛しょうじょに向かって元気よく挨拶した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る