4話 4月10日 学校③



「……マジ妄想力半端ないな」


「もういい、お前と話さん」


 朝倉に3人と会った時のことを少し話したことを後悔した。


「わりぃわりぃ~でも疑うのは仕方ないじゃん、どう見ても親しいふりしているとしか見えないから」


「そういうお前たちも友達だろ」


 俺は『お前がそんなことを言う資格があるのか』と、朝倉とそのそばにいる櫛田を交互に指した。


「それはそうだけど…」


「友達じゃない」


 じっと勉強している櫛田が割り込んで否定した。ほら~


「クッシーひどい」


「……」


「クッシーはへんじがない。ただのしかばねのようだ」


「……」


 朝倉のボケにも勉強を続ける。


「お前も無視されるのに一応友達なんだろ」


「クッシーはもともとこういう性格だけど、相原ちゃんはそうではなかったって言ったよね、あの何だ明るい子だったけ?」


 朝倉は言っておきながらも信じられないように言った。どうやら今の香菜との乖離感が激しいようだ…まあ無理もないか。


「昔は本当そうだったの。 周りに明るいエネルギーを与えて誰とでも親しくなれる子で、今のように暗い子では…ああくそ! どうしてあんなふうになっちゃったのよ!」


 どれだけ考えても香菜の変化が納得できない。どうしてそこまで変わるのができる? きれいなのを除いては全部正反対に変わった。


「いっそぶさいくなって、前のような優しい香菜に戻ってこいってば!!!」


「!? 急に何を言ってるんだ」


「そりゃ友達にどきどきするわけにはいかないだろ」


 わけ分からないまま見つめる朝倉の視線を無視した。


 さっき北野に甘い感情なんてないと言ったがひたすらそうではなかった。香菜はどうか分からなくても俺はたまにどきどきしたことがある。


「でもしょうがないじゃん、あいつ昔から飛びきりの美人だったから」


「あの、分かるように言ってくれない、結局相原ちゃんが好きだったってこと?」


「だから好きなんじゃないんだってば、まあ~鼻くそほどの感情はあったかもしれないが、それくらいは持ってもいいのでは」


「鼻くそって…でも幼い頃だからよく分からなかっただけで、本当は好きだったんじゃないの?」


 朝倉はにやにや笑って、なんとか好きなことに追い詰める考えだが…ふん、そうやって置くわけにはいかない。


「そんなはずはない、あの頃別に好きだった人がいたから」


「何! マジ!」


 朝倉は目を見開いて飛びついた。

 こいつは女と交じり合うのが日常な人なので、このような話題には目が回るやつだ。


「今日は女子と遊びに行かないのか?」


「後で教室に来ることにした。それより話を続けてもしかしてうちの学校の子? 何よ何だよ言ってみなよ~」


「こいばな好きな女子か! 別に面白い話ではない。ただ近所の優しいお姉さんに優しくしてもらって、好きになったそんなありきたりなクリシェで、しかも年の差もかなりあったから学校はどころかこの町にいるかないのかもしれないんだ」


 多分家族を離れて独立しているだろう……でももう一度会ってみたいなぁ~、できれば彼氏はいないといいし。へへっ!


「それにしては顔がにやけているよ、本当好きだったんだね」


「さあな~俺、好きだという感情はよく分からなくてね、確かなのはそれが俺の人生最大の恋愛感情だったということだけ」


「ほうほう、立花にこんな一面があるとは予想外だけど、それに年上の好みなら僕とちょっと合いそうだし」


「お前は年上の好みじゃなくて雑食の好みだろ」


こいつは『好きなものは何だ』という担任の質問に『女』と答えた狂った人だ。


「全部好きなのは否定しないけどその中でも好きなのは年上だ。何て言うかリードしてもらうのが楽というか、今日遊びに行くことにしたのも先輩だし」


 リードをもらうか~、まあ悪くない。


「ところであの先輩という人はどうして来ないんだ、お前捨てられたんじゃないのか?」


「僕は誰かのように無視されたり捨てられたりはしません~…お、ほら~ちょうど来た」


 別に捨てられたのは……


 朝倉が裏口を向いていたので、ついてみた。


「朝倉君ごめんねぇ~遅かったよね」


 先輩と言ったがかわいいスタイルの女子だった。


 教室には入らず、裏口から朝倉に向かって両手を合わせてごめんなさいとジェスチャーをすると、朝倉は『大丈夫です~』と言って、俺に向かってドヤ顔をしながら立ち去った。


「ちっ」


 舌打ちの音が鳴るほど空虚な教室には櫛田と2人きりに残った。


 朝倉は俺に先に話しかけてくれる親和力が女には倍になるようなのか、特にイケメン顔でもないにもかかわらず似合うことに長けて、毎日放課後女子と遊ぶ放浪な生活を送る。


 それに対して……


 後ろの席の櫛田を見た。


 さっきまでうるさく騒いでいたのにも櫛田は集中を失わず勉強を続けている。


 トイレに行く時もご飯を食べる時もいつも参考書を持ち歩く勉強にいかれた奴で、声をかけても『ああ』とか『いや』という誠意のない短答をするので俺を嫌がるのかと思ったが、ただ他人に関心がない子だ。


 一人は女好きで、もう一人はがり勉。この2人は中学生の頃から友達のようだけど、どうやって友達になったのか不思議だ。


 そんな2人を友達と呼べるかどうかはまだ疑問だが、一人だった中学生の時に比べるとずっとましだ。


「じゃ、俺もこれで行くなぁ」

「ああ」


 予想通りの返事を聞いて学校を出た。



 ◇◆◇◆◇◆



 下校中……妙な人の気配を感じた。


「!?」

「何だあれ……」


 後ろを向くと、秋奈と推定される人物が慌てて隣にいる電柱の後ろに隠れ、頭をひょっこり突き出して再び隠れた。


「お前そこで何してるんだ」

「ニャー~~」


 猫の声を出す秋奈。


 まさか俺と目が合ったのにもばれなかったと考え…てるようだ。相変わらずバカみたいな子らしい。


 呼んでも出てくる気がないので行く道を進んだが、意識してからか追いかけてくる足取りが生々しいほど聞こえてきたので、気になった。


「!?」


 俺がさっと振り向くと秋奈は慌てて隠れる空間を見つからず、隣の壁に顔を打ち込んで胸の形が変わるほど密着した。


「だから何をしてるんだ……秋奈」


 ばかげた行動に近づいて聞いた。


「あきなではありません、ナメクジです」


「そう? 隣にクモがいるんだけど」


「うわっ!」


 嘘をつくと秋奈は壁に離れて驚いた顔を見せた。


「…はっ! う、偶然だね、たちばなくん、こ、ここはどうして?」


「いくらお前がバカでもこれは無理だと思わないか? 一体どうして追いかけてきた」


「…あの…それがね……」


 秋奈は人差し指を寄せ合ってもじもじしている。


「はぁ……言いたいことがあったらうちでどう? あそこなんだけど」


 何を言うかは分からないけど、俺も気になることもあってちょうどよい。


「…変なことをするつもりでは……ないよね」


「するか!」


 その変態と違って胸が大きいからといって子供に欲情を持つ人間ではない。

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