2話 4月10日 学校②
「で、何だ?」
俺もそれに合う態度で対応した。
「き、北野やめるの」
「止めないで南、今日こそこの空気読めない子に一言言わないと」
北野は止める手を振り切って精いっぱい睨んだ。
「あんた何で邪魔するんだ!」
「えっと…俺が邪魔をしたんですか? いつ」
「とぼけんな! うちらが話しかけるたびに割り込んで、昨日だって4人で昼を食べていると邪魔したじゃん」
とぼけるように言ったのはわざとだが、邪魔をしたのは故意ではない。ただ俺は俺の利益のために動いただけで、その過程で少し邪魔をしたかもしれないがそんなことは知ったことではない。
俺は変わってしまった香菜が気になってどうしようもないから。
「北野、みんな見てるの……」
口げんかに南さんは恥ずかしそうに止めたけどすでに放課後だったので、心配するほどの視線は集まらなかった。
「はっ、笑わせてくれるな~、話すのを聞いてるとまるで友達同士で仲良く昼食を食べたようだ」
「何だと!」
「何驚いたふりだ勝手に割り込んだくせに。実際香奈と秋奈は一言もせず不便に飯を食べただけだったよね~、分かったら2人に迷惑をかけるな」
「……」
北野を狙った言葉にしょんぼりしたのはなぜか南さんだったので、少し申し訳なさを感じ『ちょっと言い過ぎだったのか』と油断した瞬間、北野が逆攻をした。
「あんたがそんなことを言う資格があると思うの? あんたが割り込んですぐどうなったか忘れたようね」
「くっ…」
確か昨日この2人が割り込む姿を見て『えっ!? 一緒にメシを食べることができるんだって!』と思って楽しく同席した瞬間、香菜は飯を残して席を立った。
とうぜん秋奈は香菜について行き、俺は北野の不快感が映る視線を無視して元の位置に戻った。
「相原さんを誘ってみようとしているようだが、私と南がいる限り絶対にそうはさせないのよ」
「北野、私は特に…」
「なん!? 何のことを言うんだ! 俺はあいつをそんな目で見ているのではない」
本当に違うんだ。朝倉にもよくからかわれるけど、俺は香菜を理性的に見るのではなく、友達として心配になるから話しかけるだけだ。さっきも言ったけど香菜の変わった姿はあまりにも気になるから。
「それに、お前がそんなことを言う資格があると思うのか、この変態が!」
「何、何、変態だって…誰が変態だこの野郎ぉ――!」
羞恥心なのか怒りなのか区別できないほど顔が赤くなって、飛びつきそうなのを南さんが防いでくれた。
「お、俺が違うこと言ったか、嫌がる秋奈の体をいじっている、へん…たいでしょ」
一瞬びびったけど、俺の体に流れる戦闘の血が挑発をやめなかった。
清楚な南さんはただ親しくなりたいだけらしいが、北野はエロっぽくな見た目ほどに変態だからか、秋奈の体をなでるだけでも足りなく胸まで触るので秋奈がひきつける。
「それは女同士のスキンシップで…」
「はっ! 女同士のスキンシップには胸を触るオプションまで入っているのか、そりゃうらやましいな」
「だ、だってそれはひと…人なら…しょうがないじゃぁ――ん! そんな大きいものをいじれるのを我慢できるはずがないのよ――!!」
北野は息を、はあーはあーしながら両手で胸を触る手振りをした……いや、人という単語を変態に変えるな。
秋奈の胸が大きいのは認めるが、こいつの変態さは認められない。
「北野落ち着いてよ、暴走しているの」
「はっ! くふむ……そ、そんなあんたこそ相原さんを陰険に見つめる変態じゃないか」
ん? これはまた何のことかな…陰険だなんて。
「俺が香菜をそんな目で見つめるはずがないんだろ、あいつとは幼なじみだ。ちなみに隣にいるちびも含めてさ」
「はあ? 幼なじみ? 妄想は心の中だけでやってくれないか汚らわしい。あなたなんかが、かわいさそのものの白木ちゃんと幼なじみなわけがないでしょ! 相原さんとどうにかしてみようと設定を作っているようだが、欲情をしたら家でビデオを見て抜けろ!」
「な、なっ!?」
「き、北野!?」
この変態女! 教室で何のことを言うんだ、隣にいる南さんまで驚愕するじゃないか。ったく、想像以上のド変態やろうね、しかも言葉も通じないようだ。
「悪いけど、うちらの間にはそんな甘ったるい感情は存在しないんだ」
そりゃ幼なじみだから。うーん、そうだとも。俺は香菜とお風呂に入っても欲情しない自信がある。それほど友情の濃度が濃いと自負するんだ……ふんふん、ああ~鼻がひりひりするな~、まるで血が出るかのように。
「耳が詰まったのか! 誰が甘いって言った陰険って言ったんだ。 入学式の日からじっと見つめておいて違うふりをするな! そうよねーみんな」
北野は力不足だと思ったのか、残っている生徒たちに同意を求めた。まったく、そうして何が変わるんだって…
「ああ、そうじゃない」
……ん?
「まあ、陰険は言い過ぎだと思うけど、相原さんに惚れて話しかけてるよね」
「そうそう、私もそう思った」
……ん、ん?
次々北野に力を入れる反応が出てきて、俺は首をくるっと回して、このクラスで唯一の味方だと思われる朝倉を見た。すると朝倉は何も言わなかったけど表情が『だから何度も言ったじゃないか』と言っているように見えた。
マジそう思ったのか!
「いや、俺は本当にあの2人と幼なじみで、同じ小学校を送ってきた…」
大きな誤解にもう一度関係を説明しましたが…
「だから何だ! うちらは同中だよ!」
「なっ!」
受け入れられなかった。しかも同中って、まさか3年も…俺はたった1年なのに……
俺が香菜を誘っていたという事実を認識したことに1次的に顔が熱くなり、俺が確実にリードしていると思った過去の縁まで押されるという衝撃に頭を下げた。
瀕死状態に陥った俺に南さんが『北野、そのくらいにしておいて』と止めるまで、北野は無差別な攻撃を続けた。
南さん優しい~
「ちぇっ、南に感謝しろよ。南が止めたからこのくらいにするんだから、分かったら身の程を知って割り込むな! 行こう南」
「えぇ…」
最後の通告をしてから、北南コンビは教室を出た。
◇◆◇◆◇◆
「だから何度も言ったじゃない、誰が見ても誘っているとしか見えないって」
「はぁ…マジそんなんじゃないのに」
ひとしきり騒動の後、1ー3組には俺と朝倉、そしてもう一人の新しい友達である
「……」
まあ、櫛田はいつも通り静かに勉強しているだけで、教室で話すのは朝倉と2人だけだ。
「本当に?」
疑う朝倉にびりっと睨んで答えた。
こいつ、普段俺が香菜を見つめていると『今日も目が抜けるほど見つめてるんだな』とか、話しかけると『いや~昨日あんなに無視されていながら話しかけるなんて、すごい勇気だな』と言ったので、当然からかうのかと思ったのに…まさか本気でそう思ったとは。
「……じゃあ他の子たちも俺が誘うと思ったこと…ではない可能性は?」
「どうして現実を否定しようとするのかな? さっきの反応を見れば逃げ道なんてないのは分かるはずなのに」
「恥ずかしいからだよ!」
入学して1週間しか経っていないのに恥ずかしい経験だけで3回だ。はあ……いよいよ忘れることができたのに。
「じゃあ、友達だと言ったのも事実だったんだ」
「当たり前じゃん! そもそもそんな嘘をつく理由何てないし」
「誘うための言い訳、あるいは勇気を出すための嘘だと」
マジか。
「入学式の日、そんなに熱情的に見つめておいて否定するのもおかしくない?」
「あの日のことを思い出させるな!」
と言ったが、思い出してしまった。
あの日、香菜の変な姿に気づいてじっと見つめて、自己紹介する順番を逃して担任から『相原をかなり熱情的に眺めているじゃない~、惚れたのか?』という言葉で、クラスが笑いの海になって恥ずかしかった。
「じゃあ、どうして無視されるんだ」
「知るか!」
こっちが聞きたい。そんな恥をかいたとしても勇気を出して話しかけてみたが無視され、もっと勇気を出して話しかけたが……もう疲れる。
「そういえば長瀬とも友達って言ってたよね、それも本当?」
「ああ」
そう言って、俺の最後の幼なじみの
目鼻立ちがはっきりして背も180cmを超えて、並大抵のモデルよりもはるかにイケてに見える男だ。
相変わらずなのは外見だけではなかった。
男子からは羨ましさの視線を女子からは絶大な人気を受け、周りにはいつも大勢の人が集まっている。
俺はぜんぜん変わってないなと思って昔のように裕也に近づいて親しく話かけたが……ううっと思わないでおこう、体の毛がまた逆立つ。ちなみにこれが2度目の恥だった。
「はあ……」
幼なじみたちが変わってしまった現実に思わず深いため息をつき、3人と初めて友人となった記憶を思い浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます