1章 どうして俺だけが知らないのよ!
1話 4月10日 学校①
「…たちばなくん、今日もゆうやくんに話しかけてなかったの……」
首が痛くない? と思えるほど俺を見上げて裏切られたように言う少女は、
もう一人の幼なじみで、地味だった昔とは違ってボブヘアを茶色に染め、ヘアピン2本とチョーカーを着用して『ウチ、おしゃれな女子です』とアピールするほど成長していた。
あまりも幼く見える顔なので化粧はいらないようだが、その部分は生まれつきの可愛さがカバーさせた。
それでも相変わらずな鈍い身振りと、制服の上着が手を隠すほど小さかったので『これくらいなら想定内だ』と安心した瞬間不意の一撃を受けた。
「…ねぇ、聞いてるの」
「ああ、聞いてる」
大きな胸に答えた。
身長は140cmもだめなのに胸だけがびっくりするほどでかくなって、その成長は小柄な体とかみ合ってさらに豊かにさせた。
まな板だった秋奈はロリ巨乳のロマンになっていた。
「…胸を見ないで聞くの!」
「いてっ、すねを蹴るな」
ちくしょう! どいつがこのようになるほどあらっぽく育てた。責任しろ!
以前は俺を見て怖がっていた子が、こんな暴力まで使うとは思いもできなかった。
「…すねを撫でる時間があったら言い訳からしたらどう?」
「あ、言い訳したら許してくれっ……いや、話しかけるのが簡単じゃないのはお前も知ってるじゃん~」
互いに望むことが一致し同盟を結んで、各自役割分配をしたが、俺はいまだに約束を守っていない。
「…ウチは、かなちゃんとお昼も一緒に食べさせてくれたのに……ずるいの」
その厳しい視線に、こいつが追っかけてきた日のことを思い出した……
◇◆◇◆◇◆
俺、
5年ぶりにも一目で確信するほど懐かしがっていたので、同じクラスだと知っては大喜びした。
見た目がそのままだったのかって? いや変わった、残念ながら変わってしまったのだ。それこそ正反対に。
もちろん成長した部分もある。
5年も経ったのだ。当然背も高くなってそれにふさわしいすらりとした体つきを持つようになり、秋奈ほどではないが胸も出るほど出てスタイルが良くなった。
若々しい顔は少し減ったが、生まれつきの美人力は大幅に上昇したので素敵な女性らしさを醸し出した。
でもそれを整理されていない長い黒髪が無駄にして、一番大きな問題は……
「おい立花、あの子たちまた相原ちゃんに話しかけるつもりみたいよ」
後ろから新し友達1の
「そうみたいね……」
適当に答えると、短髪のちょっとエロい女子が香菜の横にいる秋奈に近づいた。
「し、ら、き、ちゃん☆」
「…うげぇ――」
「うげぇってひどいじゃん、そんなひどい子にはなでなでお仕置きよっ」
「…な、なでるな~」
憚らない接触に秋奈は嫌がったが、体格の差があまりにも大きかったので振り切れなかった。
「ちょっと北野、嫌がるからもうやめよう」
ついてきた長髪の清楚に見える女子が暴走する
「何いてるの南、これは親しくなるためのスキンシップなの、それに見てるだけではいつまでも親しくなれないのよ」
やはり不可能でむしろ大口を聞かれた。
「そ、それは」
その言葉に
そこには香菜がいて、この状況でも静かに本を読むだけで…と思うかもしれないが、さっきまで秋奈と私語を交わしていた。
しかし2人が近づいてくるのを感じて、机の上にいる本を開いて知らんぷりをしたのだ。そんな拒絶の意思を南さんも知っているのか、声をかけるべきかどうか迷っていた。
「…ウチ、あんたと親しくなるつもりはないからあっち行って」
「ウチって、か、わ、い☆」
「…ぐぬぬ」
「北野、本当にやめろってば」
話しかけるのをあきらめて北野を再び止めた。
「白木さんごめんなさい」
「……」
「あの……相原さんも騒がせてごめんなさい」
「いいから行ってくれない、本を読むのに邪魔だから」
香菜は顔さえ見ずに冷たく答えた。
すると南さんは傷ついた顔で『…はい、ごめんなさい』と言った。
「相変わらず冷たいね、相原ちゃん」
朝倉が言った。そう、冷たい。 昔の香菜と思えないほど冷たくなった。
他地から転校してきた俺に遠慮なく話しかけてくれた優しい思いやりが感じられず、無表情で接するだけだ。
あんなマナーのない態度、かつて香菜にはありえないことだ。
「自称友達の立花はそうだとしても、あの子たちはなぜ話しかけ続けるのだろう…もしかしてあの子たちも自称友達なのかな?」
「知るか! それに自称じゃない」
席を立って微妙な雰囲気の場所に近づいた。
俺ほどではないが、あの2人も香菜と秋奈によく話しかけるので妙な感情を感じる。
「相原さん、良ければ今から4人で…」
「香菜、今から一緒に…」
「アキナ行こう」
「…う、うん」
香奈は北野の言葉を切った俺の言葉を切り、秋奈を連れて教室を出た。
今度も無視された俺はへこんで席に帰ろうとするのを『ねえ! 立花君だよね』と北野が呼び立てた……かなり気分悪いに。
そう、この感情は一緒に無視される同質感と同時に、ライバル同士の敵対感だ。
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