第31話

「久しぶりでござるな」


その声に聞き覚えがあった。俺と一緒に勇者と立ち向かった奴


「5年ぶりか?」


その場に緊張が走った。何故かわからない、だがひりついた空気がその場を支配していたのはたしかだ


「一緒に来てはくれぬか」


カットリはそう言うと手を差し出してきた。俺はと言うと


「理由は?」


そう答えた。カットリの後ろにいる奴らは、怪しさ満天だ。そんなのに関わりたくないのが、人情だろう


「では仕方がない」


その言葉で俺は、意識を失った。そういえば6年前に睡眠ガスを使っていたが、おそらくはそれを使ったのだろう


「冷たっ」


気がつくと俺は、椅子にくくりつけられ、冷水をぶっかけられていた。


「これが、友達マブダチにする態度か?なぁ!カットリ!」


水をかけたのはカットリだった。だだっ広い部屋に肌寒い気温、ブライを呼ぶ笛は首にかかっているが、両手が手錠でしかも背中に回っているので、使えない。拳銃はブライのコックピットにあるためこれまた使えない


抗哲 鋼こうてつ はがねだな」


椅子に固定されて身動きが取れない、俺の目の前には、物理的に高い机にいる老人だった。


「そうだけど、じーさんは何者なにもんだ?」


そう言うとゆっくりと、手を挙げ


「小僧ごときが私にじーさんか、だが今は保留しよう」


じーさんといったことが、腹に立ったのだろう、そこでわかった典型的老害だ


「で?ようは?」


そのままの態度を貫いた。当たり前だこんな奴にペコペコする道理は俺にはない


「我々軍とともに、やつらネメシスと戦ってほしい」


真っ当な、要件には聞こえる。ただこういう奴らの言う事をそのままの意味で受け取るのは、筋違いだろうなら答えは


「ノーだ。」


爺さんは、まぁわかっていたのだろう全く驚いた装いを見せない。


「理由を聞こう、これも義務だ」


義務ねぇ


「あったとしても、あんたに手の内を明かすほど、俺はアホじゃねーよ」


椅子の後ろに縛ってある手を、ガチャガチャしてみているが緩まる気がしない


「軍に属しないなら明日、首は体との別れと告げないといけないな」


あからさまに、紙を持ちこちらに目を向ける


「脅しのつもりか」


処刑、俺は一度死んでいるそう考えると、二度目はないだろう


「脅しではない、真実だ。何故かわかるか?」


知るかボケと思いながら、じーさんに目を向けた。どうやらわかったらしい


「お前のような奴は今すぐにでも殺したいのだが、軍というのは面倒うで、処刑するにも手続きがいる、それが最短明日だ」


明日か、ならどうにかなるか?そう思ったが


「ではそいつを、牢に連れて行け」


その時だった。ほとんどのやつの気が抜けていたんだろう。足に巻き付いていた錠をそのままといた。というか俺に歩かせるためか?まぁそんなことはさておき、足は、自由になったならすることは一つだ


「黄金の蹴りを喰らえ!」


とまぁドロップキックをお見舞いした。普通のケリだと、相手が防弾チョッキ的なのを着ていたら、おそらく衝撃が足りないその考えがあたった。


「ヘルメット被らないと、頭直撃って遅いか」


俺の後ろから、閃光が走る。


「とまれぇ!」


弾丸、銃を撃ってきたのだろう、AOに乗ってなかったとはいえ、反射神経は当時と据え置きだ。


「銃を撃ったところで、お前たち人が殺せるのか?」


俺は、銃で人をあやめた事がある。あれは気分の良いものではなかった。


「人を………ころす……」


そして俺の問いに対して、軍の連中はフリーズしていた。それはそうだろう、今まで化け物退治しか脳のなかった連中だ。人殺しなんて出来やしないだろう


「鋼殿、お主変わったな」


先陣を切ったのは、カットリだった。


「5年もあれば人は変わる。というかお前が言えた義理じゃねーだろ?」


こいつもこいつで、何があったか知らないが、こんなヤバいところにいて生きていけると?


「何をしておる?殺せ」


第二陣は、じーさんが切り込んだ。その言葉にさえまだ。戸惑いを隠せない兵士たち


「ならば良い、やつを追わなかった貴様ら全員打首に処するぞ。嫌なら追え!」


もはや清々しいほどの、老害老いぼれだ。そんな怒鳴り声が聞こえる中、俺はといえば


「出口どこだ。」


迷っていた。当たり前だ。気づいたときにはここにいたんだ。わかるわけない。


「ちきしょう構造がわかんないと、さすがに分からないぞ、パンフレットとかないのかこの基地」


足音がすぐ後ろから聞こえる。蜂の巣になるのはゴメンだが。かといってどう逃げるかもわからない。


「待つにござる鋼殿」


カットリの声とともに、飛んできた手裏剣が、手錠の鎖に命中した。


「なんのつもりだ?」


わざと当てた、それしか考えられない。いつもこいつは手裏剣をかなりの確率で当てていたからだ。


「外したにござる」


わざとらしい言い訳をして、まあいい手が空いたんならこれが使える


「こいブライエクス


笛を吹き基地の天井を砕いて、ブライがエントリーしてきた。さすがに、瓦礫とかのことは考えてほしいと思ったが。


「お前、くれぐれもここで骨うずめんなよ」


その言葉を残し俺は、あの基地から逃げることに成功した

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