第2話 デモニオ家
俺の名は???。28歳だ。大学をスポーツ推薦で入学し、ラクビー一筋でやってきた。しかし、プロになることは出来ず一般企業に務めることになった。熱意溢れる俺は勇んで会社に入社してみるとなんとびっくり、日本社会では信じられないほどのブラック企業だった。
毎日残業は当たり前で会所に住み込みのように働く毎日。家なんて週に2回しか帰ることが出来ない。場合によっては週に1回も帰れないことだってあった。もちろん残業代は出ない。最初はおかしいなと思いつつも学生時代身につけた熱意で乗り切っていた。
しかし、そんな熱意が続くはずがなく2年も経つ頃にはすっかり心は折れていた。そのくせ辞めることに何故か踏み切ることが出来ず見事な社畜と化していた。
そんな会社に四徹していたある日、やっと家に帰れると期待していた俺はその慢心かあるいは疲れからか真夜中の信号を無視する車に気づけず事故に会って死んでしまった。
そして目が覚めると俺の体は
縮んでいた。というか別の体になっていた。
そこは俺がいた日本という国とは異なる文化を持った世界だった。そう、異世界転生だ。
今の俺はギルファー・フォン・デモニオというらしい。らしいというのは何故かしっくり来ないためだ。
そんな新しい世界をご紹介しようと思う。
なんとこの世界には魔力というものが存在する。そう、なんとなく想像がつくと思う。異世界転生と言えば、でお決まりである剣と魔法の世界だ。なんとびっくり勇者や聖女なんて存在もいるらしい。
そんな世界なんだがテンプレと言えばいいのか科学があまり発展していない。本当に中世の頃のようだ。さて、そんな世界なんだが、俺がいるのはデウス帝国という国である。あまり「帝国」と聞いていいイメージを持つ人は少ないのではなかろうか?
そう、その名の通り侵略国家である。しかも内陸の国で周りは敵ばかりの国だ。そのくせこの大陸の中では最も大きい国である。
そんな物騒な国に産まれるなんて…。
だが!今回の俺は違う!!前世では会社のためだとか社会のためだとかそんなもののために滅私奉公してきた。地獄のような連続勤務も会社のためと言い聞かせて耐えてきた!!
でも、死んで始めてわかった。死んだらそこで終わりなんだ。やりたいこともやりたかったことも何も出来なかった。そんな後悔ばかりが転生した頃に思い浮かんできた。だから今回の俺は国のために戦うとかそんなことは絶対にしない。
今回の俺は自分のためだけに生きるんだ!!!!
なーんて思ってた時期が俺にもありました。
さて、ここで俺の生まれた家の話をしようじゃないか。
うちの家、なーんかすごいんすわ。色んな意味で。
うち、貴族らしいんだよ。しかも爵位が名誉騎士爵だって。え?そんなもん聞いたことねぇよって?俺もだよ。
よくよく調べたらさ、うちの親父凄い人らしいんだ。なんでもうちの親父は平民ながら近衛騎士に選ばれてなんか王様を守ったらしいの。そしたらそれに感激した王様がうちの親父に褒美として名誉騎士爵みたいなもんとその頃ぽっくり逝っちゃった辺境伯様の土地をちょっとだけ貰ったらしい。
まぁ、ここまではいいんだわ。うちの親父金とか興味ねぇし褒美に困った王様が適当に爵位の名前付けて土地やったんだろうなぁって感じだ。だが、場所が問題だった。その辺境伯様が逝っちゃった理由、周辺国との戦争なんだよね〜。要は戦死したんだ。
その土地を一部貰ったんだよ。なんとなく分かっただろう?うちの親父は戦争に巻き込まれた。どころか最前線に立たされた。別に周囲の圧とか嫌がらせとかで参加させられたんじゃない。クソジジイはいわゆる戦闘狂だった。嬉々として戦争に参加を決めた。というかこれ、国王の野郎がそこまで見越してこんなことしたんじゃないか?と俺は睨んでる。
で、俺はそこの長男である。一応弟がいる。もう分かるよな?俺も戦争に巻き込まれそうなんです……。
今は幼いから見逃して貰ってるけどそれもいつまで持つか……。今日も魔法と剣の訓練の日々だ。この世界で生き抜くには力は絶対に必要だから魔法と剣の訓練はありがたい。しかも辺境だからかうちの父親が強いからか訓練は非常に厳しいものである。
それだけならまだ許せた。いや、もう許せないラインをギリギリ超えているけども。
先程も言ったがうちは今の王様を助けたことによる名誉騎士爵でうちの親父は戦闘狂。そう、貴族としての雑務処理の力が圧倒的に欠けていた。今は執事のセバースチャン筆頭に何人か出来る人がいるから何とかなっている。だが、間違いなくこのままじゃ破綻する。伊達にブラック企業で中間管理職まで上り詰めてないんだ。
まぁ、部署の異動が激しかったりすぐに人がやめたことが原因なんだけど。
このままじゃ次、もしくは次の次の王様の代にはお家お取り潰しになるのは火を見るより明らかだ。
そうなると俺の夢見たスローライフは近づくどころか路頭に迷う羽目になる。それだけはダメだ。
クソ。こうなりゃやるしかない。幸せなスローライフを、俺のやりたいことを邪魔するやつは全部ぶっ飛ばすしかない。
俺の悪評を広めて次の当主を弟にする。その前にうちの地位を磐石にしつつ、俺の老後貯金を生涯働かなくて済むぐらいまで貯める。
そして今回の人生で俺は前世では出来なかったやりたいことを全てやってやるんだ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます