第76話 世紀末の人

「あ、リオさんここにいたんですか~。ドルク様がそろそろ出発したいって探してましたよ~」


 ドアから、ウィル少年が顔を覗かせた。


 ─────ドルク?ああ、あのおっさんの事か。

 そういえば、ギルドとやらに付き添ってくれる話だった。


「リオさん、どこかに出掛けるのですか?」


「ちょっと、ギルドとやらに野暮用があってね。おっさんが案内してくれるらしいから。サクッと終わらせてくるわ」


「‥‥‥‥おっさん。師匠の事ですよね。あ、リオさん刀持ってませんでした?その衣装、ちゃんと腰から下げるようになってます」


 自分としては、アイテムボックスに入れたままでも良かったが、姫様が許してくれませんでした。 

 

 よく見れば、左側の腰のあたりに、それ用の革紐と金具がついていた。刀を手編みの紐から外し、革紐に取り付けると白い鞘の刀は黒服と相まって、ちょうどいい感じになった。


「これで、いいよね。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」


 これ以上姫様にいろいろチェックされる前に、とんずらしよう、そうしよう。これ以上のコスプレは、何かが色々削られる。


「─────あ、そうだ。姫様、コレ食べておきなよ」


 『桃ちゃん』を取り出して、サラさんに渡しておく。元気の元だから丁度いいだろう。


「甘い匂いがします~」


「こ、コレは‥‥‥‥ひょっ、ひょっとして‥‥‥‥」


「桃ちゃん。なんか色々謂れがあるらしいけど、基本元気になれる果物だよ?あ、『仙桃』って名前だったかな」


「仙‥‥‥‥」


 両手で桃ちゃんを持ったまま、サラさんはぴくりとも動かなくなった。「君達もたべてみな~」と更に上に乗せた。


「リオさん、僕もギルドに付き添います~」


「あ、ほんと?助かるな~」


「その服装は、姫様のコレクションですか~」


「そうなんだけど、‥‥‥‥どっかおかしいかな?」


「いいえ~?僕はカッコいいと思いますよ~」


「え~ホント~」


 ─────やだな~てれるな~。

 

 遠ざかる二人。

 


「おはようございます!」

「本日は自分達が姫様の護衛‥‥‥‥サラさんはどうしたんですか?」


 ユリアに揺さぶられてもビクともしないサラは、仙桃を器用に持ったまま意識を飛ばしていた。



「よう、嬢ちゃん。随分勇ましい格好だな。どっかに乗り込むのか?」


「‥‥‥‥しないよ。姫様のだよ」


 外で馬と共に待っていたドルクは、ザ・冒険者と言わんばかりの恰好だった。

 年齢に似合わないムキムキ筋肉とヘアスタイルが相まって、自分からしたらそっちの方がよっぽどやらかす人種に見える。


 ─────THE ・世紀末の人だ。


「馬で行くって事は、遠いの?」


「─────ほれ見えるか。あそこの街のなかじゃ」


 指差す方向には、昨日は暗くて確認できなかった街並みが小さく見える。


「あんなとこに街あったんだ‥‥‥‥遠くない?」


「お主、あの『深淵の森』を抜けた来たんじゃろ?これぐらい大した距離じゃなかろう」


 おっさんにめっちゃ飽きられながら、指摘された。─────それはそうなんだけど。 


「リオさんは、馬乗れます~?」


「馬は乗れないけど、私には頼りになるシロ君がいるからっ!」


 そのシロ君を見れば、沢山の馬達にスンスンされ、遠い目をしている。

大型犬サイズじゃ、ちと貫禄がなかったか‥‥‥‥。


「─────あ、そうだ。ちょっとここら辺借りてもいい?」


 出入り口付近でもなく、通行の邪魔にならなさそうな地面を指す。


「それは構わんが‥‥‥‥何をするんじゃ?」


「帰りが楽になるように、マーキングしておくの」


 言うと同時に─────ブワッと砂埃が舞う。


 埃が晴れると、そこには『印』が施されていた。

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