未来の日常

 人工の青い空に白い雲、環境設定された朝日が町を照らしている。

 ここは月面にある実験用7号プラントで面積は大体20km²、人口20万人、来る宇宙開拓時代に先んじて、人々が宇宙でも地球と変わらない環境で暮らせるように、街並み、自然、インフラが整備されている。

 一歩プラントを出るそこにはごつごつした月面に、静寂の黒が広がっている。



「ごめんなさい」

学校の廊下でぶつかった男子生徒に誠意を

込めて謝った。

「たく、気をつけろよな」

私に対して、どんくさいなちゃんと前向いて歩けと

言わんばかりに荒っぽく注意した。


 その男子生徒は茶髪に鋭い目つき、ワイシャツの中に赤Tシャツと私のようなメガネで黒髪おさげ

なキョロ娘とは住む世界が違う風貌だ。


「ごめんなさい、ごめんなさい」

私はその見た目と言葉に萎縮してしまい、頭を何度ペコぺこ下げて謝罪した。


「いや、気をつけろとは言ったが、そんな何度も

ごめんなさいって言わなくてし。てか、ブリント散らばってるけど、拾わなくていいわけ」


 彼のその言葉にはっとした私は公民の授業で使ったプリントがばらばらになってしまっていた。

 内容は「プラントと地球の交流について」私は地球に行ったことがなく、モニター越しでしかその姿を見たことがないので、どこか遠い国の話だなと思って授業を聞いている。


 私はあわあわとしながら散らばったプリントを

かき集めた。

その姿を哀れに思ったかのか彼は散らばったプリントを拾い「げぇ、プリントとか、前時代的だな。学校支給された端末に送れよな。ほらよ」

 私に渡してくれた。見た目は取っ付きにくそうと

思ったけど意外と親切な人?


 彼が言ったように、今は皆、授業は支給された端末に授業で言われたことをメモしたり、宿題やテストなどもその端末で行う。


「あ、ありがとうございます。先生が端末の操作が苦手らしくて、授業で使うようなプリントや資料はプリントなんですよ」

 先生は全授業端末化以前から教鞭を取っており、そのなごりが未だに抜けていないらしい。

「そんなんでここでやってけるのか、そのせんこー」

「ふふ、でも私好きですよ、紙のプリント。データだとフォルダがいっぱいになって、どこにしまったかわからなくなりますもん」


 授業で使うもの、学校知らせ、提出書類などをまとめて端末にくるので、1日でけっこうファイルやフォルダが増えてしまうのだ。


「フォルダにちゃんとした名前つけて仕分けしておけよ。授業の時、ファイルがすぐで来ないと

困るだろう、、て、なんで俺初対面にこんな言ってるだ」


 自分の頭をわしゃわしゃしながら、こいつ、まぢかと心配するかのごとく、私に的確なアドバイスをくれた。どうやらこの人はまめにファイルを整理しているらしい。これまた、意外だ。


「確かに。でも忠告ありがとうございます。親切なんですね」


 この人に対して、なぜだか親しみを感じる。彼はそんな柔和な私を見て、「……いいけどな、そんなこと」と私から目線を外してぶっけらぼうにそう言った。

 照れてるのかな、なんだか、おかしい。


「じゃあ、俺教室戻るから」

「あの…その…」

(心臓がばくばくする、き緊張するよ~)

「なんだ」

私が声をかけたので、振り返ってくれた。

「お、お名前聞いていいでしゅうか」

(緊張のあまり噛んでしまった。どうしよ)

「おい、おい、なんでそこで噛んだよ。はぁ~、

でなんで名前知り合いわけ」

「なんとなくお友達になれそうと思ったからです!!」

「なんだそりゃ」

 今、この瞬間を逃すとこの人とは関わらないかもしれません。この学校ではじめて男の友達ができるチャンス!

「まぁ別にいいけど、俺は三崎 大河みさき たいが1年だ」

「私は…私の名前は篠崎詩織しのざき しおり同じく1年です。

よろしくお願いします、三崎君」

「あぁよろしくな篠崎」


私は、この日、男のお友達が出来ました。




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