第22話「賑わい」

「ただいま帰りました」

 そう言いながら、浩也ひろやが楽屋に入ってきた。手には、家電量販店の袋を手にしている。

「買い物くらい、スタッフさんに頼めばよかったのに」

「いや、こればっかりは自分の手でゲットしたくて。ダウンロード版でも良かったんですけど俺は物理で欲しいタイプだし、バージョン違いのどっちを買うか悩むのも醍醐味で……、まあどうせ二つとも買うんですけど」

 珍しく饒舌に語る浩也は、リハーサルの間ずっとそわそわと落ち着かない様子で、チェックが終わった途端に「ちょっと出かけてきます」と会場から飛び出していったのだ。どうやら、大好きなゲームの発売日が今日だったらしい。

 「そういや、駅前に女の子たちが集まって賑やかだったんですよ。どこかでイベントでもあるのかなーと思いながら見たら、俺らのライブ見に来た子たちでした」

「へぇ、こんな早い時間から集まってるんだ」

 影三えいぞうが感心したように言うと、最近は会場の外にグッズの物販ブースを置くようになったから、それ目当てでしょうとマネージャーが補足する。

「というか浩也、お前近くを歩いてて気づかれなかったの?」

「いや全く」

「さすが浩也さん」

 直斗なおとの疑問に即答する浩也に、泥谷ひじやが納得顔で呟いた。

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