第18話「占い」

「もし、そこのお兄さん。あなた面白い相をしているね。少し占っていかないかい?」

 ライブが終わり、打ち上げからの帰り道。かけられた言葉が自分に向けてのものだと気づいた直斗なおとが振り向くと、「あなたの運勢占います」と手書きされた立て看板の横に年配の女性が座っていた。ド派手なショッキングピンクの服を着た姿は、占い師というよりスナックのママ、といった方がしっくりくる。

「いいけど、俺こんだけしか持ってないよ」

 そう言って財布の中を広げて見せる。打ち上げで派手に使った後だから、千円札が数枚しか残っていない。

「お代は結構さ、私から声掛けたんだからね。で、何か知りたいことはあるかい?」

 普段は占いなんて胡散臭いと取り合わない直斗だったが、何となく話に乗ってみる気になった。酔いが回っていたせいもあるだろう。

「そうだな、やっぱり将来についてとか、かな」

「お兄さん音楽やってるんだね。……安心しな、バンドの四人は成功するよ」

「へえ、そいつは心強いな」

 自分は何も言っていないのに、バンドのメンバーが四人だとわかるとは、さすが占い師というヤツなのかと、直斗は少しだけ感心した。

「まあ結局、未来は自分で切り開いていくもんだけどね。雨が繋いでくれた縁を大事に、せいぜい頑張りなさいな」

「占い師がそれ言っちゃうんだ」

「占い師だからこそさ。お兄さん、車には気を付けて帰るんだよ」

「おう、ありがとう」


 歩き去る直斗の後ろ姿を見送りながら、占い師はぽつりと呟いた。

「かわいそうに、まだ若いのにね」

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