第13話「流しそうめん」

 半分に割って節を抜かれた竹の樋を伝って、茹で上げられた素麺が流れていく。それを箸で掬い上げ、つゆにひたして啜る。つるりとした喉越しがたまらない夏の風物詩だ。

「何で俺ら、のん気にそうめん食ってんだろうな」

「いいじゃん、町内会のおっさんが祭にバンドで出演しないかって俺らを誘ってくれたんだし」

 直斗なおとのぼやきに、横に立つ影三えいぞうが上機嫌で素麺を啜りながら答える。

「だからって、翌日の神輿まで付き合って担ぐことなかったんじゃね? ……楽しかったけどさあ」

「影三センパイ、ネギとミョウガと大葉も入れると美味いっすよ」

 町内会のお祭りに参加しているのは爺さんと婆さんばっかりだ。けれど、「最近は孫もあんまり遊びに来てくれなくてねえ」と、寄ってたかって大歓迎された。泥谷ひじやに至ってはすっかり場に馴染んで、頼まれるままに、あちこち手伝いをしてまわっている。

 だから、祭りに参加している中にレコード会社の元重役がいたのは思いもよらなかった。

「君たち面白いね。演奏も良かったし、知り合い紹介させてよ」

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