第12話「門番」
ライブハウスへの出演申し込みをしようと決めてから、そういえば俺たちのバンドには名前がないことに気が付いた。高校に居た頃は軽音部で通じていたから、特に気にしていなかったのだ。
スタジオのロビーで、三人は思いつくままにバンド名候補をノートに書き連ねる。
「おい
「頭ぶつけて死にそうな名前っすねー」
「『ダイブ・トゥ・水風呂』、『サカバンバスピス』……、これは
「いざバンド名って言われても浮かばねえもんだな。
気負いがあるせいもあってか、これだと思えるバンド名が決まらない。仕方ないから次回までの宿題にするかと直斗が提案しようとした時、何かを思いついたのか、泥谷がノートにペンを走らせた。
「かぶきあげ?」
書かれた文字を読み上げて、直斗が首を傾げる。
「いや、『かぶきえいじ』っす。『歌舞伎Age』って、どうっすかね」
「それだっ! これいいじゃん! 俺たちのバンド名、これにしよう!」
何がそんなに気に入ったのか、影三は大はしゃぎだ。
「まあ、他にもっと良いのが思いついたら、変えればいいんだしな」
かつてはライブハウスの入口で、門番のように立ちはだかっていると、そう感じられた店員とも、今や気安く話せるほどの顔なじみになっていた。
「こんばんは歌舞伎エイジさん、今夜もよろしくおねがいしますね」
結局バンド名はそのままだった。
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