第9話「肯定」

 ギター初心者セットのおまけについていた、名前も知らないメーカー製のアンプ、ドラムセットは吹奏楽部からの借りもので、お世辞にも上等な機材とは言えなかった。

 ステージ衣装は色を揃えただけの無地のTシャツ、こんなに大勢の人前で演奏するなんて生まれて初めてで、体育館のステージに立った直斗なおとは頭の中が真っ白になっていた。横に立つ影三えいぞうを見てみれば、ギターを握る手はガチガチで、膝が笑っている。

 それでも、何度も何度も練習した曲で、今の俺らの全力をぶつけた文化祭の体育館ライブは、成功したと直斗は思う。

 皆からの惜しみない拍手で、俺らの演奏を肯定してもらえた気がして嬉しかった。

「俺、何て言っていいか……」

 普段は飄々とした泥谷ひじやも、この時ばかりは感極まって涙を零した。

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